なんでも探偵部!

きとまるまる

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2話「ようこそ、なんでも探偵部へ②」

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 東咲とうしょう高校の、とある一室。扉にかけられている小さな木の札には「なんでも探偵部」と黒い字でデカデカと書かれている。
部屋の中は、小さな冷蔵庫があったり、本棚があったりソファーがあったり、さらにはエアコンが付いていたりと、小さなホテルの一室と表現ができてしまう程に家具が溢れている。

部室の中央には長机とパイプ椅子が設置されており、今から面接でも始まるかのような雰囲気に包まれている。
この部活動の長、部活紹介の時にちょび髭を付けていた先輩ーーー関 幸かかわり ゆきは、指を組んだ手の上にアゴを乗せ、静かにジッと部室の入り口を見つめている。隣に座っている間宮は、関の行動には全く興味がないのか、黙々と漫画を読み進めている。


関「......おかしい、おかしいな...?」

間宮「何がおかしいんですか? あぁ、頭がおかしいんですね? それはわかってますよ。」

関「ん? 君の頭がかね? それは私だけじゃない、全校生徒が知っていることだろう。」

間宮「今ここに拳銃があったら、迷わずにあんたの頭ぶち抜いてましたよ。よかったですね。」

関「よかったよかった。命が助かって本当に...って、そんな話をしたいんじゃないんだよ! どうして一人も新入部員が来ないのかって話だよ!」

間宮「先輩に聞きますけど、あの部活紹介を見て、この部活に入りたいと思いますか? 僕たち二人に近づきたいと思いますか?」

関「私なら迷わずここに来るね。」

間宮「すみません、聞く相手を間違えました。」

関「とにかくだ! ここに来ないのであれば、直接勧誘するしかない...! ふっふっふ...逃げられると思うなよ、一年諸君...! この学校は、...!」

関「私たちから逃げられると思うなよぉぉぉ!!」

間宮「って、僕を含めないでくれませんか? ...って、あれ!? もういないし!? ったく、その行動力を別のことに使えないのかな...? あのアホは...。」

 「こんにちはー!!」

間宮「ん?」


 扉が開くとほぼ同時に、部室内に可愛らしい声が響き渡る。
一目見ただけで元気なことが伝わってくる、ショートボブでくりくりお目目の愛らしく可愛らしい女の子が、キラキラした瞳で間宮を見つめている。


間宮「こんにちは。どうしたの?」

 「えっとですね、聞きたいことがあって来ました!」

間宮「聞きたいこと? あっ、もしかして一年生?」

 「はい! 私、一年B組の張間 彩香はりま あやかと言います! よろしくお願いします!!」

間宮「張間さんね。僕は、二年生の間宮 傑まみや すぐる。よろしくね。」

張間「はい! よろしくお願いします!」

間宮「それで、聞きたいことってなに? 僕が答えられることであれば、何でも答えるよ。」

張間「ありがとうございます! あの、部活紹介の時にマジックしてたのって、ここであってますか?」

間宮「......え?」

張間「部活紹介の時に、マジックしてた「なんでも探偵部」って、ここでーーー」

間宮「今すぐ帰りなさい!!」

張間「えぇぇぇ!?!?」

間宮「ここは君のような純粋な瞳をした少女が来ていいところではないんだよ!! 君はとても運がよかった! 悪魔がいないうちに、早くおかえり!!」

張間「え!? で、でもーーー」

間宮「君は高校三年間という素晴らしい人生を悪魔に捧げてもいいのかい!? 答えはノーだ!! この部室に入ってしまえば、無事に帰ることはできなくなってしまう!! いや、二度とお家に帰れなくなるかもしれない! 悪魔がいないうちに、早くーーー」

関「悪魔って誰のことですか?」

間宮「お前のことに決まって...って、あぎゃぁぁぁ!?!? お、おおおおおまっ、いつから後ろに!?」

関「私を呼ぶ声がしたので、音速で帰って来ましたよ。あの、青いハリネズミのようにね。」

間宮「誰も呼んでねぇよ!!」


 関は、スッとポケットから双眼鏡を取り出す。


関「おや、おかしいですね~? 私のことを悪魔悪魔って呼ぶ、生意気な後輩がいるはずなんですけど...どこですかねぇ~?」

間宮「この距離で双眼鏡を使わないでもらえます? レンズカチ割りますよ?」

関「カチ割るだなんて...可愛い女の子が目の前にいるんだよ? 紳士な立ち居振る舞いができないのかね? こんな風に...。」


 関は、おほんっと一つ咳払いをし、張間に視線を向ける。まつ毛がこれでもかと太く強調され、瞳や背景がキラキラと輝きだす。


関「こんにちは、お嬢さん。ようこそ、我が部室へ。私は部長の、関 幸かかわり ゆきと申します。こちらへどうぞ。」

間宮「どっから出してんだ、そのキモい声は?」

関「そして、こっちのうるさいのが、ピーピーうるさいのすけだ。仲良くしてあげてくれ。」

張間「はい! よろしくお願いします、ピーピー煩いの助さん!」

間宮「え? 嘘でしょ? この子、冗談通じない子?」

関「さて、それでは...一つ質問をさせてくれ。ここに来たということは、入部したいということでしょうが...君は、どうして我が部活動を選んだんだい?」

張間「はい! 私はですね、部活紹介の時に部長殿がしていたマジックに感動いたしまして! ぜひとも、私もマジックをーーー」

関「待て待て待て。マジック?」

張間「え? はい、マジックです。」

関「magic?」

張間「magic!!」

関「......うち、マジックする部活じゃありませんよ。」

張間「......え? えぇぇぇ!?!?」

関「こっちが、えぇぇぇ!?!?って言いたいよ! なんでうちをマジックする部活動と勘違いしちゃったんだい!?」

間宮「あの部活紹介を見たらマジックする部活動だと思うに決まってんだろ! この子の反応が正しいよ!!」

張間「マジックしないんですか!? じゃあ、ここはなにをする部活なんですか!?」

関「よくぞ聞いてくれた!! ここは、なんでも探偵部!! 校庭の草むしりから人探しなどなど、困っている人たちに手を差し伸べる、すんばらしい部活動だ!!」

間宮「簡単に言うと、ボランティア部です。」

関「ボランティアではない! なんでも探偵部だ!! そこ、しっかりしてくれたまえ!!」

張間「......。」

関「ん? どうしたんだい?」

張間「こ、困ってる人たちに手を差し伸べる...探偵さんですか!?」


 急に目を輝かせて二人を見つめてくる張間に、関と間宮は不思議そうな顔で互いを見合わせた。
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