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28話「ギャップ萌えってやつですね⑦」
しおりを挟む次の日の放課後、なんでも探偵部部室。昨日と同じく快晴で、暖かで穏やかな空気に包まれている。関と張間は、椅子に同化する勢いで座りだらけている。
関「あ~~今日も平和だねぇ~~。」
張間「平和ですね~~。」
関「あ~~ダメだ。私、もう寝ちゃう...。」
張間「部長~~こんなところで寝ちゃ...スヤスヤ...。」
間宮「ダラダラしすぎだって言ってるだろ、全く...。」
新沼「こんにちは~。」
狗山「こ、こんにちはっす...。」
間宮「あっ、新沼さんに狗やーーー」
間宮は扉を開けて部室内に入ってきた二人を見て、思わず言葉を止める。狗山は真っ赤な首輪をつけており、新沼は首輪から伸びた紐をギュッと握り締めながら、ニコニコと笑顔で間宮を見つめている。
新沼「間宮先輩、どうしました?」
間宮「えっと、その...狗山さん、どうしたの...?」
狗山「今日一日、奴隷...というか、犬のように扱っていい権利をあげたんす...。」
新沼「私はこんなことしたくなかったんですけど、ワンちゃんが勝負に負けたからどうしてもと聞かなくて...。」
狗山「はぁぁ!? な、何言ってんすか!? 俺はそんなこと一言もーーー」
新沼「何か言った♡」
狗山「な、なんにも言ってないっす...。」
新沼「ところで間宮先輩、部長さんと彩香ちゃんはどこにいますか?」
間宮「え? どこにってーーー」
間宮は背後を振り返るが、先程まで椅子でだらけていた二人の姿は、いつの間にか忽然と消えている。
間宮「あ、あれ? どこいった、あいつら?」
新沼「ワンちゃん♡」
狗山「は、はいっす!」
狗山は目を閉じ、鼻をスンスンッと鳴らす。もう一度鳴らし終えると、ゆっくりと目を開ける。
狗山「えっと...本棚の裏と、あそこの壁ーーー」
関「くそっ! 君の嗅覚は警察犬並みか!?」
張間「部長、急いでこっちに!!」
狗山の言葉を遮り、本棚の裏から慌てて飛び出した関は、窓めがけて駆け出していく。布を被り、窓近くの壁と同化していた張間は素早く窓を開け放ち誘導すると、二人はアクション映画ばりの勢いで「さらばだぁぁ!!」と言いながら窓から飛び出ていく。
新沼「ワンちゃん、行きなさい。」
狗山「で、でも...窓からはーーー」
新沼「ここ、一階だから。大丈夫。」
狗山「いや、そういうことじゃーーー」
新沼「ワ・ン・ちゃん♡」
狗山「ひぃ!?」
新沼「い・け♡」
狗山「は、はいっすぅぅぅ!!」
新沼がパッと紐を手放すと同時に、風のように窓から飛び出していく狗山。背後から突き刺さる恐ろしい視線から逃げるように、グングン前を走る二人と距離を縮めていく。
張間「いやぁぁぁ!? こないでぇぇ!!」
関「羽和くん!? 君、足早いですねぇぇ!?」
狗山「俺は、まだ死にたくないっすぅぅぅ!!」
狗山は地面を蹴り上げ、身体を前へと投げ出し、勢いよく伸ばした右手で張間の足首をグッと掴む。張間は「おぶぅぅ!?」と可愛くもない声を吐き出しながら、盛大に転ぶ。
狗山「よっしゃぁぁ!! 捕まえたっすぅぅ!!」
張間「いやぁぁぁ!? 離してぇぇ!! 部長、助けーーー」
関「さらばだ、張間くん! はっはっは~!」
張間「おい待てぇぇぇ!! 絶対に許さないからなぁぁぁ!! 何代も先まで呪ってやるぅぅぅ!!」
新沼「間宮先輩、私はあの二人に用事があるので。失礼します。」
間宮「あ、うん...。」
新沼はぺこりと頭を下げると、窓をヒョイと飛び越えて、ニコニコと楽しげに狗山の元へと駆けていく。
間宮「...今日も平和だな~~。」
間宮は四人を視界に入れつつ、ゆっくりと窓を閉めて鍵をかけた。
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