なんでも探偵部!

きとまるまる

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49話「〇〇死す!②」

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 三人は急ぐ様子もなく部室を出て、間宮の声がした方向へと歩き出す。


関「ところで花ノ山くん、聞きたいことがあるのだが。」

花ノ山「なんでごわすか?」

関「君、五山海森を盗まれすぎではないかい? どういう管理をしているんだい?」

花ノ山「学校にいる間は、部室にある金庫の中に入れているでごわす。5桁の数字を入れないと、開かないはずなのでごわすが...。」

関「どうして、その守りを突破されるんだい?」

張間「もしかして...パスワードを「ちゃんこ鍋」って、わかりやすいやつにしてるんじゃないですか?」

関「張間くん、5桁の数字でちゃんこ鍋を表してみてくれ。」

花ノ山「な、なんでわかったでごわすか!?」

張間「ほら、やっぱり!」

関「花ノ山くん、5桁の数字でちゃんこ鍋を表してみてくれ。」

張間「そのパスワード知ってる方って、花ノ山さん以外はいないんですよね?」

花ノ山「いや、津々浦ちゃんが知っているでごわす。」

関「その津々浦くんは、今どこにいるんだい?」

花ノ山「津々浦ちゃんはーーー」


 数十分前、紙相撲部部室。部員である津々浦が、五山海森が入った金庫の前でコソコソしている。
カチッという音と共に、頑丈そうな厚い扉が開く。津々浦は、中に入れられていた五山海森を手にし、不敵な笑みをこぼす。


津々浦「ふふふ...これで、私は...!」

花ノ山「こんにちはでごわす~。」

津々浦「ぬぎゃぁぁぁ!?」

花ノ山「津々浦ちゃん、今日も早いでごわすなぁ~。」

津々浦「お、お、おっす!」

花ノ山「ん? どうしたでごわす? 金庫の前で、なにしているでごわすか?」

津々浦「こ、これは...そ、掃除をしてました! おっす!」

花ノ山「そうでごわすか。ありがたいでごわす。」

津々浦「う、うわぁぁ!? お腹が痛いぃ~~! おトイレに行ってきますぅぅ!」

花ノ山「いってらっしゃいでごわす~!」



花ノ山「こんな感じで、トイレ行ったっきり見てないでごわす。」

張間「部長...。」

関「こんなわかりやすい事件があっていいのだろうか? 眠りのおっちゃんも、すぐに解けてしまう事件だよ。」

張間「花ノ山さん、五山海森がなくなったのって...?」

花ノ山「そうでごわす。津々浦ちゃんがトイレに行った後ーーー」



花ノ山「さて、五山海森~! 今日も激しく稽古するでごわ...ごわす!? き、金庫が空いてるでごわす!? あぁぁぁ!? ご、五山海森がぁぁぁぁぁぁ!?」



花ノ山「くそう! 一体誰が、五山海森を盗んだでごわすか!?」

張間「部長。」

関「なんだい?」

張間「花ノ山さんってーーー」

関「純粋、と言ってあげなさい。」

張間「花ノ山さんって、とても純粋な方なんですね!」

関「そうだ、いいぞ張間くん! よくできました! よーしよし!」

張間「これくらい、余裕のよっちゃんイカですよ! ワフワフ!」

花ノ山「いやぁ、お二人はとても仲が良いでごわすなぁ~。」


 待てができた犬を褒めちぎる飼い主のように、張間の頭をこれでもかと撫でる関ーーーその姿を微笑ましく見つめる、花ノ山ーーー関と張間の心に、モヤっとした何かが生まれる。


張間「......。」

関「......。」

花ノ山「どうしたでごわす?」

張間「何かが足りません、部長。」

関「あぁ...もっとこう、ガツンと...! 足りない...! 急いで傑くんを探そう!!」

張間「はい! 部長、お願いします!」

関「傑くんの好きな人は~~二年ーーー」

間宮「関ぃぃぃぃ......!!」

花ノ山「ごわす!? あっちから、声が聞こえたでごわす!」

張間「あの方角は、理科準備室に間違いない!」

関「ねぇ、聞きました? 関って呼び捨てにしてたよ、あの子。先輩って呼んでくれてたのに...! うぅ...!」

張間「よーしよし、泣かないでください部長~。ほーら、おっぱいあげまちゅねぇ~。」

関「ばぶぅ~~!」

花ノ山「いやぁ、微笑ましい光景でごわす~。」

張間「......。」

関「......。」

花ノ山「どうしたでごわす?」

張間「間宮せんぱぁぁぁぁぁい!!」

関「早くツッコミを! ツッコミをぉぉぉぉ!!」


 ツッコミが存在しない息苦しい空間から逃げるように、二人は勢いよく理科準備室へと駆けていく。
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