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108話「ほんのちょっとの変化は見逃すって⑤」
しおりを挟む関の声に、屋上にいた全員が入り口へと視線を向ける。申し訳なさそうな表情で立っている張間の隣にはーーースカートを着衣し、スイカを二つ入れているかと思うくらい、パンパンに胸元が膨らんだシャツを着、サラサラの金のロングヘアーを揺らした、ノーメイクの関が、キリッとした表情で佐伯を見つめている。
全員「「いや、化粧はどうした!?」」
関「すみません...隣にいる子が「お化粧なら、私にお任せあれ!!」というので任せてみたら...とんでもない化け物が生み出されてしまったので、急いで化粧落として、慌てて駆けてきました。」
張間「本当に、申し訳ありませんでした! 化粧の修行してきます!!」
間宮「何やってんだよ、張間さん!!」
仲本「あれは、どう見てもスカートを履いてる関先輩...いや、目を細めて見れば、可愛く見えなくも...う、うーん...き、気持ち次第かな! うん!!」
間宮「無理しなくていいよ! はっきりと言ってあげて! 全然可愛くないって!」
関「傑くん! 仲本くんの言う通り、気持ちの問題です! 私が可愛いと思えば...心も、身体も、顔も、綺麗になります!!」
間宮「どんだけ思っても、気持ちじゃ変えられないよ! どっからどう見ても、100%先輩だよ! 可愛さのカケラも見当たらないよ!! 絶対にバレるから、近づかないーーー」
関「私の名前は、関 幸子よ! さぁ、襲うなら可愛い私を、襲いなさぁぁぁい!!」
間宮「やめろぉぉぉ!! 結果は目に見えてるから、やめろぉぉぉ!!」
関が、ポヨンポヨンと大きな胸を揺らしながら、佐伯へと駆けていく。二人の距離が、手が届くほどに縮まる。と、佐伯は目にも留まらぬ速さで、右拳を関の顔面に振り抜く。
関は偽乳を大きく揺らしながら、床をゴロゴロと勢いよく転がっていく。
仲本「関先輩ぃぃぃぃ!!」
間宮「だから言っただろうがぁぁぁぁ!!」
テニス部員A「作戦変更よっ! かなねぇの気が済むまで、好きにさせましょ!」
テニス部員B「本田、出番よ!!」
本田「諦めるの早すぎでしょ!! というか、本田と書いて裏切り者と読むな! 友を簡単に売り出したことを、後悔させてやるわぁぁぁぁ!!」
テニス部員A「え? いやぁぁぁ!? こっちに来ないでぇぇぇ!」
テニス部員B「離せぇぇぇ! 生贄は生贄らしく、大人しくしてなさいよぉぉぉ!」
本田「誰が生贄だ、ゴラァァァ!」
仲本「ちょっ、先輩たち!? 仲間割れしてる場合じゃーーー」
佐伯「うふふ...♡ いただきまーす...♡」
本田「え...?」
醜い争いを続けている女三人の元へ、佐伯はゆっくりと歩みを進めていく。
本田・テニス部員A・B「嫌ぁぁぁぁ!?!?」
張間「させるかぁぁぁ!!」
張間は床を強く蹴り上げ加速し、佐伯の背後へと迫ると、腰に手を回し、力一杯必死に佐伯を引き止める。
張間「んぎぎぎぎ...! せ、先輩方...今のうちにぃぃ...!」
間宮「何やってんの、張間さん!!」
仲本「そんなことしたら、あなたが...!」
佐伯「は~り~ま~ちゃぁぁん♡」
張間「え? ぎゃぁぁぁぁ!?」
佐伯は、くるりと身体を張間へと向けると、そのままゆっくりと張間を押し倒していく。
間宮「張間さん!!」
佐伯「うふふ...♡ もう、逃がさないんだから...♡」
張間「あばばばば!? お、お、落ち着いてくださいぃぃ!!」
仲本「ど、どうしよう...!? 傑、どうしよう!?」
間宮「...僕が、かなねぇと張間さんを引き離す!」
仲本「傑...! あんたの力じゃ、無理じゃない...?」
間宮「言われなくても、わかってるよ!! でも、ほかに方法はーーー」
張間「ぎゃぁぁぁぁ!?」
テニス部員A「あぁ!? 本田のせいで、あの子の純潔が!!」
テニス部員B「本田のせいで!!」
本田「なんで、私のせいになってるの!? おかしくない!? ねぇ、おかしくない!?」
仲本「鎮静液! 鎮静液は!? 私が、かなねぇに飲ませる!」
間宮「僕らが持ってる分は、ちょっと前に失敗したやつだけだよ! あとは、先輩が持ってる分だけ!」
仲本「そんな...!」
佐伯「うふふ...♡ 鎮静液を持っている関は、排除した...! もう、私を止められる者はいないわ...! さぁ...先生と楽しいこと、しましょうね~♡」
張間「んぎゃぁぁぁぁ!? 誰か、助けてぇぇぇぇ!!」
張間「...なんて、言うと思ったか?」
佐伯「え...?」
張間は、シャツのボタンを一つ、二つと素早く開け、中に手を突っ込む。
佐伯「なっ...!? そ、それは...!」
仲本「哺乳瓶!?」
間宮「なんで張間さんが!?」
関「ふっ...ふふふ...! 我々を、甘く見てはいけませんよ...! 毎度毎度、同じ作戦だと思われちゃ困ります...! 子どもは、常に変化し続ける生き物なんですよ...!」
佐伯「ま、まさか...!? これも全て、私を油断させるためのーーー」
張間「今更、気付いたところで遅いんだよぉぉぉ! 喰らえぇぇぇ!」
佐伯「い、いや...! やめ...ばぶぅっ!?」
張間は、勢いよく哺乳瓶ちくびを佐伯の口に突っ込む。佐伯は、何にも逆らうことなく、懐かしい感覚を味わいながら止まることなく哺乳瓶ちくびを吸い続ける。
全ての液体を飲み干した佐伯は、口から少量の液体を垂らしながら、力なくふらふらと張間に覆い被さる。
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