なんでも探偵部!

きとまるまる

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204話「孤独の天才③」

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閤「あーあ、ジョーカーかよ...。お前の勝ちだ、好きにしていいぞ~。」

関「......。」

閤「どうした? ほれ、勝ったんだから好きにしていいぞ~。」

関「...あんた、勝つ気ないだろ?」

閤「は?」

関「そっちの伏せてるやつも、ジョーカーだろ?」

閤「なんで、そう思うの?」

関「またイカサマされたらめんどくせぇと思ったからよ...ジョーカー渡す前に、爪で傷つけといたんだよ。よく見ろ。」

閤「どれどれ...うわ、本当だ。お前、最低だな。」

関「お前には言われたくねぇよ。つまり、どっちを引いても俺の勝ち。つまんねぇ勝負すんのな、あんた。」

閤「嫌々部活やられても、私が嫌だからな。」

関「んだよ、それ? まぁ何にしろ、この勝負は俺の勝ちだ。つーことで、好き放題させてもらうぜ。」

閤「いいぜ、ヤるか? 私、初めてだから、あんまがっつくなよ?」

関「ヤるわけねぇだろ。ヤッたら、お前それをネタに脅すだろうが。」

閤「あははは~バレてたか。」

関「自分で言ってたじゃねぇか。忘れたのか? ったく...。」

閤「まぁ、そういうの無しにしても、どうせあんたはヤんないでしょ? 優しい優しい甘ちゃんだし。やっぱり、噂は噂だなぁ~。」

関「誰が、優しい優しい甘ちゃんだ、こら。」

閤「ん~? だって、お前さ...タバコの件、言ってないんだろ?」

関「はい?」

閤「あいつら、屋上でタバコ吸ってただろ?」

関「...お前、知ってたのか?」

閤「私、いろんなとこフラフラしてるからねぇ~。他にも、いろんな秘密知ってるよ。んで、なんであんたはタバコのこと言わなかったの? 言えば、あんたの罪、少し軽くなったんじゃないの?」

関「あとでギャーギャーなんか言われんのがめんどくさかっただけだよ。自分のためだ。優しくなんかねぇよ。」

閤「とか何とか言ってさ。これだから、甘ちゃんは~。」

関「てめぇ...次、甘ちゃんって言ったらぶん殴るからな?」

閤「そう言って、殴らないから甘ちゃんなんだよ~。いい子いい子、お姉さんがなでなでしてあげまちょうかぁ~?」

関「......。」

閤「おいおい、そんな怖い顔すんなって。冗談だよ、冗談。まぁ、甘ちゃんはホントだけどな。あははは~私も、あんたみたいに優しい甘ちゃんになりたいわ~! そうすりゃ、あいつらも今頃怒られずにすんでたろうになぁ~!」

関「......お前、もしかしてだけど...タバコの件、言ったのか?」

閤「え~~...ここは、なんでも探偵部! 校庭の草むしりから人探しなどなど、困っている人たちに手を差し伸べる、すーんばらしい部活動だ!!」

関「...はい?」

閤「あんたが変な噂で苦しんでんのに、あいつらだけ軽ーくで終わるのってさ...ムカつかない?」

関「...俺は、別に苦しんでなんかいねぇよ。昨日今日始まったことじゃねぇし。」


 閤は、関の額に思い切りデコピンを放つ。


関「あだっ!? てめぇ、なにすんーーー」

閤「んなこと、慣れるもんじゃねぇだろ。」

関「......。」

閤「お前さ、本当は誰かと一緒にいたいんだろ? 誰かと一緒に、ワーワーギャーギャー騒ぎたいんだろ? それなのに自分に嘘吐いてさ...苦しいだろ? 辛いだろ?」

関「......。」

閤「隠しても無駄だぞ。「寂しいよー! ひとりぼっち嫌だよー!」って、心の中で泣きわめいてんのは見えてるからさ。」

関「泣いてねぇよ!!」

閤「やれやれ...いい加減素直になれよ、一年坊主。嘘ばっか吐いてたら、そのうち押し潰されんぞ? ほらほら、今なら私しかいないから、素直に言葉吐き出しても、恥ずかしくないぞ~!」

関「......関 幸だ。」

閤「ん?」

関「お前、俺の名前知ってんだろうがよ。一年坊主って呼ぶんじゃねぇ。」

閤「細かいことでいちいち怒んなよ。うるせぇ後輩だなぁ。」

関「......なぁ。」

閤「ん? なんだよ?」

関「...本当に、俺でいいのか?」

閤「......おい、幸。」

関「な、なんだよ?」

閤「ちゃらんぽらんな奴の相棒はな、超がつくほど優しい奴じゃなきゃ務まんねぇんだよ。」

関「...なんだ、そりゃ。」

閤「......あっ。」

関「ん? なんだよ?」

閤「お前さ、ジョーカーわかってたんだろ? なら、なんでジョーカー引かなかったんだ?」

関「......。」

閤「早く答えろよ。なんで引かなかったんだ? なんでジョーカー引かずに、ダイヤのA引こうとしたんだ? ダイヤのA引いたら、部活に強制入部だぞ? 私、ちゃんと言ったよな?」

関「......。」

閤「ねぇ、なんで? どうして? 先輩わかんないなぁ~? どうして幸くんは、ジョーカーがどっちかわかってたのに、ダイヤのAを引こうとしたのかなぁ~? ねぇねぇ、どうして~? なんでぇ~? 教えてよぉ~。」

関「て、てめぇが二人いないと廃部って言うから、仕方なくだよ! 感謝しやがれ!!」

閤「素直になれよ~! 本当は、入りたくなったんだろ~? 可愛い可愛い先輩と一緒に、青春したくなったんだろ~? 可愛い後輩だなぁ~このこの!!」

関「ちげぇよ! 良いように解釈すんな!!」

閤「あっ、ヤる勇気がなかっただけか~! ごめんごめん、気づけなくて...童貞くんには、ハードル高かったよね? こんな可愛い先輩となんて、緊張しまくってヤるどころじゃないもんね? そういうところも、可愛いぞ~! あははは~!」

関「てめぇ、今すぐ服脱げや!! めちゃくちゃにしてやんよ!!」

閤「仕方ねぇな...お姉さんが、童貞くんのために色々と教えてあげますわよ。さぁ、気持ちよくしてあげますわ。お脱ぎなさい。」

関「お前、さっき初めてって言ってただろうが!! 調子乗んな!!」

閤「あーうるせぇなぁ...冗談じゃんかよ、マジになんなって。ほら、屋上行くぞ。」

関「は? なんで?」

閤「今、冷蔵庫に私の飲みかけしかねぇからよ。新しいの買ってやる。歓迎会も兼ねて、乾杯すんぞ!」


関(M)変な噂が流れたせいで、誰も俺に近づこうとしてこなかった。どいつもこいつも、噂というフィルターをかけて、俺を見てきた。

関(M)でも、この人は違う。この人は、フィルターなんてかけないで...噂なんかに見向きもしないで、真っ直ぐ俺を見てくれた。俺を...関 幸という男を。それが、すごくすごく嬉しかった。


 二人は部室を出て、屋上へと階段を上がり向かっている。


閤「なぁ。」

関「なんだよ?」

閤「お前さ、関わるに幸福の幸で、関 幸なんだよな?」

関「だから?」

閤「いい名前してるよなぁ~。お前に関わると、幸福が訪れるってことだろ? ...ん? ちょと待てよ...? あんたが入部してくれるおかげで、廃部にならなくてすんだ...これは、幸福だよな? おぉ、本当に幸福きてんな! すごいぞ、幸~!」

関「頭撫でんな! 気持ちわりぃ!!」

閤「照れんなっての! ちなみに、私は門構えに合うで閤、中華の華で華。「かかわり」と「くぐりど」、「ゆき」と「はな」...文字数も同じで漢字も似てる! 私たちは、会うべくして巡り合ったと言ってもいいんじゃない!?」

関「あんた、もしかしてだけどよ...俺を部活に誘ったのって...。」

閤「なんか、テンション上がんない? 相棒って感じしない?」

関「しねぇよ。」

閤「つまんねぇ男だな、お前。まぁいいや。」

閤「幸。」

関「んだよ?」

閤「これから、よろしくな! 一緒に、忘れられねぇ青春を送ろうぜ!」


関(M)階段を駆け上がり、こちらを見下ろしながら笑顔でそう言ってきた。眩しくて、見てられなかった。

関(M)でも、そんな人だからこそ...なんか、一緒にいたいなぁって思っちまったんだろうな。だから、あの人が伸ばした手を、握ったんだろうな。

関(M)先輩が、屋上の扉を開ける。タバコ臭かった屋上は、お日様のいい匂いでいっぱいになっていた。
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