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275話「どすこいっ!紙相撲!恋のつっぱり編①」
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時は1ヶ月ほど遡りーーー30度を超える暑さが辺り一帯に広がる、危険な8月のとある日。
外に出ることを躊躇うほどの暑さにも関わらず、道路沿いに建つ市民体育館には、気温とはまた違うあつさを持った人々が集まっていた。
実況「さぁ、紙相撲夏場所本戦も、いよいよ三回戦となりました。三回戦はどんな戦いを見せてくれるのでしょうか?」
実況「実況は、引き続きこの私、実 京太。解説は、数々の記録をうちたてた紙相撲界の伝説、菊 梅子さんでお届けいたします。菊さん、改めてよろしくお願いします。」
実況に話を振られた菊は「ほっほっほ」と小さく笑うと、よろしくと頭を下げながら言葉を返す。
実況「三回戦が始まる前に、今大会を軽くですが振り返っていきましょう。」
実況「まずは、第一試合...菊さん、始まりから、大波乱でしたね。」
菊「えぇ。私も、少しですが驚きましたよ。」
実況「夏場所本戦、優勝候補の一人であった「ナン・デ・ヤネン」が、押し切りで敗北。前夏王者が一回戦で姿を消す、波乱の幕開けとなりました。」
菊「動きは悪くなかったんだけどねぇ...相手がよく研究してたよ。デスクタップも見事だった。ナンは、後半少し焦っちゃったからね。そこを見逃さずに、よく押し切ったよ。」
実況「残り時間もあと僅かで、あのままでは判定負けでしたからね。」
菊「それと、優勝候補としてのプレッシャーもあっただろうねぇ。注目されれば、その期待に応えなきゃと、力が余計に入ってしまう...出だしから動きが硬かったしね。最初から本来の動きができていたのなら、結果は違っただろうねぇ。」
実況「菊さんは現役時代、沢山の方に注目されていたと思いますが、やはり菊さんも当時はプレッシャーというものを感じていたんでしょうか?」
菊「いやいや、私はプレッシャーなんて全然感じてなかったよ。そもそも、なんで私にこんな注目しているんだろう?って思ってたからねぇ~。私より強いやつなんざ、周りにいっぱいいるだろうに。今でもよくわかってないよ。ほっほっほ~!」
実況「菊さんが現役時代、苦労したお相手...おっと、試合開始のブザーが鳴り響きました。菊さんのお話は、また後ほどよろしくお願いします。」
菊「あいあい、よろしくねぇ。」
実況「さぁ、紙相撲夏場所本戦も、三回戦となりました。高校力士たちは、私たちにどのようなドラマを見せてくれるのでしょうか? 選手の入場です。」
審判「ひぃ~がしぃ~~がわぁ~~!!」
実況「東側から入場するのは、東咲高校二年、花ノ山 川角。春場所では、まさかの一回戦負け。その後、五山海森が事故に遭い、夏場所は絶望的とのことでしたが...持ち前のど根性で、我々にまた力強い姿を見せつけてくれました! 今日も、力でねじ伏せるのか!?」
審判「剛腕、花ノ山ァァ~~~川角ィィ~~!!」
花ノ山「どすっっこぉぉぉぉい!!」
実況「続いて、西側の選手の入場です。」
審判「にぃぃ~~しぃがわぁぁぁ~~!!」
実況「西側から出てくるのは、今大会のダークホース! 第一回戦に...おや?」
菊「出てこないのぉ。」
実況「どうしたんでしょうか? 本来であれば、審判の掛け声と共に入場となっているのですが...なにかトラブルでしょうか?」
花ノ山「どうしたんでごわすか?」
審判「今、確認をーーー」
「す、すみませぇぇぇん!!」
可愛らしい声と共に、頬にご飯粒をつけたショートカットの子ーーー桜井 満が慌てて土俵へと駆けてくる。
桜井「す、すみませんすみません! 本当にすみません!!」
審判「君、なにをしていたんだい? ちゃんと入場時間に待機していないとダメじゃないか。」
桜井「は、はい...すみません...申し訳ございません...。お昼に食べてたおにぎりがすごく美味しくて、夢中になって食べてたら時間忘れてて...!」
花ノ山「おにぎりなら、仕方ないでごわす。」
審判「うむ。おにぎりなら、仕方ない。」
桜井「すみませんすみません、本当にすみません!」
花ノ山「気にしないでいいでごわすよ。おいどんも、おにぎりを食べていたら同じことをしていたと思うでごわす。頬にご飯粒は、付けないでごわすがね!」
桜井「え? ご飯粒?」
優しげに笑う花ノ山と審判に疑問を持ちつつ、ふと頬に手を当てる桜井。中指から伝わる、頬とは違う柔らかな感触ーーー桜井の顔は、真っ赤に染まっていく。
桜井「す、すみませんすみません! 遅れた上に、こんなだらしのない姿を見せるだなんて...! 本当にすみません!申し訳ありません!」
花ノ山「いやいや、可愛らしい姿だと思うでごわすよ。おいどんは気にしてないでごわす。だから、もう謝らないでほしいでごわす。」
桜井「うぅ...! 遅れてきた上に情けない姿を見せてなお優しい言葉を...そ、それに可愛いだなんて...!」
桜井「花ノ山くんって、とっても優しい方ですね! 僕、好きになっちゃいそうです! えへへ...!」
花ノ山(M)可愛らしいお顔、可愛らしい声、眩しい笑顔に、好きになっちゃう...かわかわ僕っこ女子にそんなこと言われたら...好きにならないわけが、ないでごわす...!
花ノ山(M)花ノ山 川角、17歳...恋の花が、一輪...パッと綺麗に、咲いたでごわす...!
審判「花ノ山くぅぅん!? 聞いてますか!?聞こえてますか!? 早く土俵にどすこいをセットしてください! 花ノ山くんってばぁぁぁぁ!?」
実況「...なかなか始まりませんね?」
菊「一体、どうしたんだろうねぇ?」
外に出ることを躊躇うほどの暑さにも関わらず、道路沿いに建つ市民体育館には、気温とはまた違うあつさを持った人々が集まっていた。
実況「さぁ、紙相撲夏場所本戦も、いよいよ三回戦となりました。三回戦はどんな戦いを見せてくれるのでしょうか?」
実況「実況は、引き続きこの私、実 京太。解説は、数々の記録をうちたてた紙相撲界の伝説、菊 梅子さんでお届けいたします。菊さん、改めてよろしくお願いします。」
実況に話を振られた菊は「ほっほっほ」と小さく笑うと、よろしくと頭を下げながら言葉を返す。
実況「三回戦が始まる前に、今大会を軽くですが振り返っていきましょう。」
実況「まずは、第一試合...菊さん、始まりから、大波乱でしたね。」
菊「えぇ。私も、少しですが驚きましたよ。」
実況「夏場所本戦、優勝候補の一人であった「ナン・デ・ヤネン」が、押し切りで敗北。前夏王者が一回戦で姿を消す、波乱の幕開けとなりました。」
菊「動きは悪くなかったんだけどねぇ...相手がよく研究してたよ。デスクタップも見事だった。ナンは、後半少し焦っちゃったからね。そこを見逃さずに、よく押し切ったよ。」
実況「残り時間もあと僅かで、あのままでは判定負けでしたからね。」
菊「それと、優勝候補としてのプレッシャーもあっただろうねぇ。注目されれば、その期待に応えなきゃと、力が余計に入ってしまう...出だしから動きが硬かったしね。最初から本来の動きができていたのなら、結果は違っただろうねぇ。」
実況「菊さんは現役時代、沢山の方に注目されていたと思いますが、やはり菊さんも当時はプレッシャーというものを感じていたんでしょうか?」
菊「いやいや、私はプレッシャーなんて全然感じてなかったよ。そもそも、なんで私にこんな注目しているんだろう?って思ってたからねぇ~。私より強いやつなんざ、周りにいっぱいいるだろうに。今でもよくわかってないよ。ほっほっほ~!」
実況「菊さんが現役時代、苦労したお相手...おっと、試合開始のブザーが鳴り響きました。菊さんのお話は、また後ほどよろしくお願いします。」
菊「あいあい、よろしくねぇ。」
実況「さぁ、紙相撲夏場所本戦も、三回戦となりました。高校力士たちは、私たちにどのようなドラマを見せてくれるのでしょうか? 選手の入場です。」
審判「ひぃ~がしぃ~~がわぁ~~!!」
実況「東側から入場するのは、東咲高校二年、花ノ山 川角。春場所では、まさかの一回戦負け。その後、五山海森が事故に遭い、夏場所は絶望的とのことでしたが...持ち前のど根性で、我々にまた力強い姿を見せつけてくれました! 今日も、力でねじ伏せるのか!?」
審判「剛腕、花ノ山ァァ~~~川角ィィ~~!!」
花ノ山「どすっっこぉぉぉぉい!!」
実況「続いて、西側の選手の入場です。」
審判「にぃぃ~~しぃがわぁぁぁ~~!!」
実況「西側から出てくるのは、今大会のダークホース! 第一回戦に...おや?」
菊「出てこないのぉ。」
実況「どうしたんでしょうか? 本来であれば、審判の掛け声と共に入場となっているのですが...なにかトラブルでしょうか?」
花ノ山「どうしたんでごわすか?」
審判「今、確認をーーー」
「す、すみませぇぇぇん!!」
可愛らしい声と共に、頬にご飯粒をつけたショートカットの子ーーー桜井 満が慌てて土俵へと駆けてくる。
桜井「す、すみませんすみません! 本当にすみません!!」
審判「君、なにをしていたんだい? ちゃんと入場時間に待機していないとダメじゃないか。」
桜井「は、はい...すみません...申し訳ございません...。お昼に食べてたおにぎりがすごく美味しくて、夢中になって食べてたら時間忘れてて...!」
花ノ山「おにぎりなら、仕方ないでごわす。」
審判「うむ。おにぎりなら、仕方ない。」
桜井「すみませんすみません、本当にすみません!」
花ノ山「気にしないでいいでごわすよ。おいどんも、おにぎりを食べていたら同じことをしていたと思うでごわす。頬にご飯粒は、付けないでごわすがね!」
桜井「え? ご飯粒?」
優しげに笑う花ノ山と審判に疑問を持ちつつ、ふと頬に手を当てる桜井。中指から伝わる、頬とは違う柔らかな感触ーーー桜井の顔は、真っ赤に染まっていく。
桜井「す、すみませんすみません! 遅れた上に、こんなだらしのない姿を見せるだなんて...! 本当にすみません!申し訳ありません!」
花ノ山「いやいや、可愛らしい姿だと思うでごわすよ。おいどんは気にしてないでごわす。だから、もう謝らないでほしいでごわす。」
桜井「うぅ...! 遅れてきた上に情けない姿を見せてなお優しい言葉を...そ、それに可愛いだなんて...!」
桜井「花ノ山くんって、とっても優しい方ですね! 僕、好きになっちゃいそうです! えへへ...!」
花ノ山(M)可愛らしいお顔、可愛らしい声、眩しい笑顔に、好きになっちゃう...かわかわ僕っこ女子にそんなこと言われたら...好きにならないわけが、ないでごわす...!
花ノ山(M)花ノ山 川角、17歳...恋の花が、一輪...パッと綺麗に、咲いたでごわす...!
審判「花ノ山くぅぅん!? 聞いてますか!?聞こえてますか!? 早く土俵にどすこいをセットしてください! 花ノ山くんってばぁぁぁぁ!?」
実況「...なかなか始まりませんね?」
菊「一体、どうしたんだろうねぇ?」
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