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291話「相手にしたことは、いつか自分に返ってくるからね②」
しおりを挟む暁「さぁ~てさて、俺様にやられたいやつは、どこのどいつだぁ~い? 隠れてないで、出ておいでぇ~!」
手にしたプニプニバットをブンブンと振り回しながら、楽しげに校内を散策する暁。
暁(さて、誰がくるやら...? 俺の予想としては、張間ちゃん、関先輩は校内でウロウロしているはずだ...! あの二人は、動ける二人...あいつらも俺と同じく、逃げるより狩るタイプ...外よりも狭い、逃げ場の少なく狩れる確率の高い構内にいるはずだ...!)
暁(関先輩を狩ることができれば、こちらのチームに大きな利益が生まれる。負ける確率は、グンと下がると言ってもいい...それほどに、関先輩は脅威だ...! なるべく早い段階でーーー)
廊下の中央付近で、足を止める。目の先の角から人の気配を感じ取った暁は、プニプニバットを構え戦闘体制に入る。
暁「...さてさて、俺様の相手は...だーれだ?」
百瀬「あら、秋斗くんでしたか。」
暁「凪先輩! こんにち...いやいやいや、何をしている、暁 秋斗! 今、凪先輩は相手チーム...俺たちの...俺の、敵だ...!」
百瀬「うふふ、その通りです秋斗くん。ですから、今は仲良くしてる時ではありません。正々堂々、狩り合いましょう。」
暁「凪先輩が狩り合いましょうって言うと、なんか強者感凄いですね。普段は優しいけど、戦いになると性格変わっちゃう女剣士って感じで...いいですねいいですね...!俺、燃えてきましたよ...!」
百瀬「全力で遊ぶなら、設定は大事ですね。秋斗くんは、普段はお調子者だけど、戦いの時もお調子者のお調子者さんですね?」
暁「そうですそうです、俺は...常日頃からずっとお調子者やないかーーーい!!」
百瀬「うふふ...! やっぱり秋斗くんは、面白いですね!」
暁「凪先輩を笑わせることができて、俺は感激でございます...!」
暁「さてさて、お遊びはここまでとしまして...いきますよ、凪先輩?」
百瀬「はい。正々堂々と...!」
暁「いざ、勝負っ...!!」
互いにプニプニバットを構え、逃げ隠れすることなく真っ直ぐ距離を詰めるーーー
百瀬「きゃっ...!?」
あと数歩でお互いのバットが届く距離というところで、百瀬は自身の足に足を引っ掛け、倒れ込む。
暁「凪先輩!? 大丈夫ーーー」
百瀬「やめて!」
暁「え...!?」
百瀬「優しい言葉をかけないで...情けをかけないで...! 秋斗くん、自分で言ってたじゃない...今、私は秋斗くんの敵...敵なの...!」
暁「な、凪先輩...!」
百瀬「勝負とは、時に残酷なもの...。もう一度なんて言わない...私は、この結果を...悔しいけど、受け止める...。」
暁「......。」
百瀬「安心して、秋斗くん。私、今やられたとしても、文句なんて言わないから...あなたのこと、卑怯者だなんて言わないから...。」
暁「......すみません、凪先輩。」
百瀬「むしろ、私が謝らなきゃだよ。こんなつまらない形で勝負を終わらせてしまって、ごめんなさい...。」
敗北を受け入れ、目を閉じる百瀬。
しかし、待てども待てども、紙風船が割れる音は耳に届かない。
百瀬「...秋斗くん?」
不思議に思い、目を開けるーーー映し出されるのは、ぷにぷにバットではなく自身の手を差し伸べている暁の姿。
暁「すみません凪先輩、俺はこんな形で勝負を終わらせたくないです。やるからには、正々堂々と真正面からぶつかり合いたいんです。」
百瀬「で、でも...。」
暁「俺がこうしたいと望んでいるんです。俺がやりたいからやってるんです。あなたが可哀想だからとか、かっこいい自分を見せたいとか、そんなんじゃない...俺が、正々堂々戦いたいから、やってるんです。」
百瀬「...いいの?」
暁「もちろん。ただ、次同じことが起こったら、その時は問答無用で割っちゃうかもしれないんで、気をつけてくださいね。」
百瀬「ありがとう、秋斗くん...!」
暁「お礼を言うのはこちらです。俺のわがままを聞いてくれて、ありがとうございます。」
暁「さぁ、やりましょう! 正々堂々、真っ向から勝負をーーー」
百瀬「えいっ。」
百瀬に背を向けた瞬間に、頭に軽い衝撃が走る。と同時に「パァン!」と何かが割れる音が耳に届く。
暁「...え?」
百瀬「ごめんなさい、秋斗くん。勝負とは、時に残酷なものなの。」
暁「え?え? な、凪先輩...?」
百瀬「秋斗くん、女の子って平気でこんなズルいことする生き物だから、気をつけなきゃダメだよ?」
暁「そ、そんなぁ...!」
百瀬「うふふ...ごめんなさい。私が秋斗くんと真っ向から戦っても勝ち目がないから...ね?」
暁「も、もしかして...あれ全部、お芝居...!?」
百瀬「途中でバレたらどうしようってヒヤヒヤしてたけど、バレないでよかったです。秋斗くん、すごく優しいから、絶対引っかかってくれるって思ってたよ!」
暁「あ、あはははは~...! 嬉しいような、悲しいような...いやでも、凪先輩のためになれたのならば、俺はーーー」
「いいわけないでしょ、このバカ!」
暁「え?」
暁の前方ーーーニコニコ笑顔で罪を告白し終えた百瀬の頭上の紙風船が、まるで騙した罰と言わんばかりに破裂する。
笹原「すみませんね、凪先輩~! あなたは絶対に秋斗を狙ってそういうことすると思ってたので、こっそり後ろからつけさせていただきました!」
百瀬「あら冬華ちゃん、いつの間に。」
笹原「どうせあんたは凪先輩に狩られると思ってたけど、思った通りすぎて、もう笑うわ。何してんの?」
暁「す、すみません...。」
笹原「まぁ、いいわ。わかってたからこそ、あんたをエサに凪先輩を簡単に倒せたしね。お疲れ様~!」
暁「おい、エサとはなんだ、エサとは!!」
笹原「言葉のまんまでしょ。あんなわかりやすいのに騙されて...言い訳ある?」
暁「な、ないです...すみません...。」
笹原「ほんと、これだから秋斗は...!」
百瀬「あら、私のやること全てお見通しでしたか。」
笹原「すみませんね、凪先輩! 今回は、私のが一枚上手だったってことで! そう簡単には、いきませんよ~!」
百瀬「さすがです、冬華ちゃん! 敵ながら、あっぱれを送りますね!」
笹原「ふふふ...!もっと褒めてもいいんですよ、凪先輩!」
百瀬「でもね冬華ちゃん、綺麗に作戦が決まって喜ぶ気持ちはわかるけど...「勝って兜の緒を締めよ」だよ。」
笹原「...へ?」
頭上から聞こえた破裂音で、笹原の笑顔がかき消える。恐る恐る頭上へと手を伸ばすとーーー先ほどまで丸々と太っていた紙が、身を爆ぜている。
笹原「え!? 嘘ォォォ!?」
関「早い段階でこの二人を倒せたのは、我々のチームにとってはとても大きなことですよ。」
百瀬「さすが幸くん、お見事です!」
関「凪ちゃんのおかげですよ。すみませんね、損な役回りをさせてしまって。」
百瀬「私が言い出したことだし、この作戦が一番リスク少なく二人を倒せる方法だから。チームのためなら、私はいくらでも犠牲になりますよ。」
笹原「え...? も、もしかして、凪先輩...!」
百瀬「うふふ...ごめんなさい、冬華ちゃん。今回は、私が一枚上手でしたね。」
笹原「そ、そんなぁぁ...!!」
暁「あーあ、お前もまんまとエサに食いついちまったってわけか...。」
笹原「う、うるさーーーい! 誰のせいだと思ってんだ! この、バカ秋斗がぁぁぁ!!」
暁「全部お前のせいだ...痛っ!?やめろやめろ!プニプニバットで叩くんじゃない! やめろってば!!」
笹原「うるさい! バカバカバカバカァァァァァ!!」
関「いや~この二人はいつ見ても仲良しさんですね~!」
百瀬「ね。いつ見ても微笑ましいです。」
関「ではでは、私は兜の緒をキチッと締め直して...戦場に戻りま~す!」
百瀬「は~い。いってらっしゃ~い!」
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