なんでも探偵部!

きとまるまる

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305話「気づく人、気づかない人①」

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 とある10月のお昼過ぎ。暖かい日が差し込む穏やかな屋上では、生徒たち数名が楽しそうに談笑しながらお昼を食べていた。

 張間、狗山、新沼の仲良し三人組も、周りの生徒たちと同じように楽しげに談笑している。


狗山(いや~よかったよかった!一時は大喧嘩してどうなることやらと思ってたっすけど、すっかり仲直りできて本当によかったっす! やっぱりこの二人は、仲良いのが一番っすよ!)

張間「んじゃまぁ、そろそろ食後のお菓子タイムといきますか!」

狗山「いよっ!待ってました!」

張間「本日のお菓子タイムは~こちらっ!じゃじゃ~ん!ポテトンチップス焼肉味~!」

新沼「......。」

張間「ん?おやおや~?どうしたんでしょうか、咲ちゃん~?何か言いたげなお顔ですね~?」

新沼「別に~。何にもありませんけど~?」

張間「あっ、そっかそっか!これ、咲ちゃんの大好物だったね!そうだったそうだった!跳ね上がるほどに嬉しい気持ちを、一生懸命抑えてるんだね!なるほどなるほど!」

狗山「新沼、これ好きだったんすか?初耳っす。」

新沼「ワンちゃん、あとでお仕置きね。」

狗山「なんで!?」

張間「別にいいじゃないですか、咲ちゃんよぉ~。別にポテトンチップス焼肉味が好きだからって、どうってことないんだからさ~。まぁ、もしかしたら傑先輩にはおデブって思われちゃってるかもしれないけどねっ!はっはっはっは!」

新沼「彩香ちゃん、傑先輩って呼ぶのそろそろやめた方がいいと思うよ。また「気持ち悪い」って言われちゃうかもしれないよ?「気持ち悪い」って。「張間さんが傑先輩って呼ぶの「気持ち悪いね」」って。」

張間「ご心配どうもありがとうございま~す。でも、傑先輩も慣れてきてもうなにも言わなくなったので、この先も私は傑先輩って呼び続けま~す!」

新沼「はぁ...傑先輩可哀想...。何度も何度も言ってるのにしつこく呼んでくるから、もう言っても無駄って思って言わなくなっちゃったんだ...。本当に可哀想...。漫画返す時に、そのことについてもお話ししてみよ。」

張間「咲ちゃん咲ちゃん、漫画なら私が返してあげるよ。ほら、部活行く前に探偵部よるのめんどくさいでしょ?」

新沼「全然めんどくさくないよ。お気遣いどうもありがとう♡」

張間「いやいやいや、遠慮しないで♡」

新沼「遠慮なんてしてません♡」

張間「いやいや、してるって♡」

新沼「してません♡」

張間「いいからさっさと漫画寄越せ。」

新沼「自分で返すって言ってんでしょ、猿。」

張間「おいおいおい、誰が猿だおいごら...!」

新沼「あんた以外にどこにいるの、お猿さん?」

張間「そうかいそうかい、咲ちゃんは食後の運動がしたいと...?オーケー、わかった...!やってやんよ...!」

新沼「ごめんなさい。私、お猿語はわかんないの。だから、日本語で話してくれない?」

狗山「ストップストップストップゥゥゥ!!落ち着くっす、お前ら!さっきまでの和やかムードを一瞬で掻き消すなっす!!」

張間「けっ!」
新沼「ふんっ!」

狗山(喧嘩するほど仲がいいとは言うけれども...これはどうなんすかね...?あまりよろしくない気がするっす...。)

張間「あっ、そういえば...羽和ちゃんは、最近どうなの!?」

狗山「はい?なにがっすか?」

張間「んもぉ~とぼけちゃって~!」

新沼「本当は、わかってるくせに~。」

狗山「...え?なんのことっすか?マジでわかんないんすけど...。」

張間「部長のことだよ!部長!」

狗山「部長?あぁ、幸先輩のことっすか?で、幸先輩がどうしたんすか?」

新沼「最近、部長さんとうまくいってるの?」

狗山「...はい?」

張間「うまくいってるに決まってるじゃないですか、咲ちゃんよぉ~! だって、一緒にお弁当食べる仲なんですよ~?」

新沼「うふふ、そうだったそうだった♡」

狗山「おいぃぃぃぃ!!ちょっ、お前ら!?なんでそのこと知ってんすか!?俺、言ってないっすよね!?」

張間「さぁ~なんででしょうね~?」

新沼「ね~? お弁当の他にも、一緒にファミレス行ったり、一緒にバドミントンしたりと、すごくすごく楽しそうにしてるしね~?」

張間「え!?そうなの!?それは初耳!!」

狗山「なんでお前がそのことまで知ってんすか!?バドミントンに至っては、お前用あるから先帰ったんすよね!?知る機会ないっすよね!?なんで知ってんすか!?」

新沼「お友達だもん♡友達のことは、なんでも知ってるよ♡」

狗山「こえーよ!怖すぎるっすよ!マジでもうこえーよ!!」

張間「羽和ちゃんってば~!私たちの知らぬところで、順調に愛を育みおってからに~!」

狗山「あ、あああ愛ぃぃぃぃ!?何言ってんすか、お前は!?べ、べべべ別に俺と幸先輩は、そんな関係じゃないっすよ!!」

新沼「そんなこと言って~!部長さんのこと、好きなくせに~!」

狗山「何言ってんすか!?別に俺は、幸先輩のこと好きじゃねーし!勘違いすんなっす!」

張間「え?好きじゃないの...?」

新沼「あんた、好きでもない男とお弁当食べたりファミレス行ったりと...よくそんなことできるわね。」

狗山「え?あ、いや、その...す、好きっすよ!?好きだけども、恋愛とかそっちじゃないっすよ!?あれっすよ!あの、と、友達!そう、友達としては好きっす!うんうん!!」

張間「おーおー見てくださいよ、咲ちゃん!あの慌てっぷり!」

新沼「ワンちゃん、もっと顔よく見せて~。動画で撮ってるから~。」

狗山「撮るなぁぁぁぁ!!許可なく勝手に撮るなっすぅぅぅ!!」

張間「羽和ちゃんってば、意外と積極的なんだから!」

新沼「ね~!これだと、お付き合いするのも時間の問題ね~!」

狗山「んなことするわけないっすよ!俺、幸先輩のこと好きじゃねぇから!」

張間「本当に~?」

狗山「本当っす!」

新沼「本当に~?」

狗山「だから、本当っす!」

張間「気になってもないの~?」

狗山「ないっす!」

新沼「気にはなってるでしょ~?」

狗山「な、ないっす!」

張間・新沼「本当に~?」

狗山「......ま、まぁ、その...なんというか...ほ、ほんのちょっとっすよ!?ほんのちょっとなら、その...ちょっぴりとは、気にはなってなくはないかなぁ~...とは、思ったり思わなかったり...。」



 放課後、なんでも探偵部の部室。部室内では、間宮が椅子に腰掛け漫画を読み、関は机を拭いたりと部室内を掃除している。

特にこれといった会話もなく、静かな空間となっている部室内ーーー静けさを消し飛ばすように、狗山が勢いよく部室内へと投げ込まれる。


間宮「あっ、狗山さん。こんにちわ。」

関「派手な登場ですね~。元気なのはいいことですが、怪我してからでは遅いですし、今後は落ち着いて入ってきてくださいね。なんでも探偵部は、逃げたりしませんから。」

狗山「す、すんませんっす...。」

新沼「こんにちわ、部長さん!」

張間「こんちわ~!」

関「こんにちわ。新沼くん、今日はなにかーーー」

新沼「本日は、傑先輩を少しお借りしますね♡」

間宮「え?僕?」

張間「ってことで、私たちは傑先輩に用がありますので、あとはお二人で楽しんでくださ~い!」

新沼「では~♡」

間宮「え?用があるなら部室でも...ねぇ!?ちょっ、引っ張らないでぇぇ!!」

関「羽和くん、展開が急すぎて私全然理解が追いついてないんですけども...どういうことですか、これ?」

狗山「俺も、さっぱりわかんないっす...。」
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