銀髪の魔女

夢花音

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1章 大いなる力と試練

13話 森羅万象の継承者【終焉と再生の物語】

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まぶしい輝きの図書館の中で、少し遠い目をして、リオが静かに話を始めた。


「ミリディアがねぇ、夢を見たのよ」


リオの言葉に、彩子はハッとした。ミリディアの力を受け継いで夢見、予知夢の能力があることは知っていた。エーテルの明かりが揺れる中、彩子は彼を見つめた。


「ミリディアはね、生前に夢見で、この世界の崩壊を見ていたのよぉ。それを私に伝えて、のちの後継者にぃ、全てを託すように言われたの…」


リオの言葉に、彩子は、ああそうなのか。と納得してしまった。


「彩子、本当にここまでよく頑張ったわねぇ…。あなたの成長を見守ってきて、ずっと信じていたけれど、今この瞬間、すべてを話す時が来たのね。」


「もともと森羅万象の力を手に入れたらちゃんと話すつもりだったのよぉ。」


リオは彩子の肩から飛び立ち、空中でゆっくりと羽ばたきながら、彩子の顔の正面で真面目な顔をして話し始めた。


「ミリディアが望んでいたのは、単なる力じゃなかったの。彼女の目的は、森羅万象の力を使うことだったわ。時を変えようとしていたのよ。いいえ、正確には全ての時間そのものを。過去、未来、そして世界の全ての流れを…。」


彩子はその言葉に驚き、目を見開いた。


「時の流れを変える…?それって、どういうこと?」


リオは静かに頷きながら続けた。


「ミリディアは、多くの試練と苦しみを経て、大魔女としての真理に辿り着いたのよぉ。でも、彼女がその力で見た未来は、この世界を破滅し消し去る兆しだったのぉ。ミリディアはね、嘆き悲しんだのよぉ。そして、考えたのよ。彼女は森羅万象の力があれば、その破滅を回避できると信じていたのよぉ。」


彩子は眉をひそめ、リオの言葉を真剣に受け止めた。


「それが…ミリディアの本当の目的だったのね。私にその役割を引き継いでほしいということ?」


リオは少し寂しげに微笑んだ。


「そうよぉ、彩子。あなたが時の守護者としてここまで力を蓄えてきたのも、すべてはそのためだったのよぉ。でもねぇ、未来をどうするのかわぁ、決めるのわぁ、あなたよぉ。貴方はもうミリディアの力を受け継いだだけではなく、偉大な創造神でもあり、森羅万象の継承者でもあるのよねぇ。」


彩子はしばらく沈黙し、心の中でミリディアの思いを感じ取っていた。彼女が抱いていた使命の重さ、そして未来に対する責任。そのすべてが、彩子の肩にかかっている。目を閉じ、静かに深呼吸をした。彼女は今、自分の力と運命に向き合おうとしている。


ゆっくりと彩子は腰を下ろすと軽く足を組んで考えに没頭した。リオは驚きと畏敬の思いを感じた。彩子は空に漂い、エーテルの近くを回りながら何も無いのに椅子に座っている仕草をしているのだ。それも逆さになったり真横になったりしながら。そして驚く事に髪が逆さに落ちることもない。重力の影響がないのだ。


彩子が突然、空から消えたと思ったら、一瞬でリオの前にいた。足を組み替えると彩子は、淡々と言った。


「私は、自分自身の道を選びたい。ミリディアが見た未来がどれほど厳しいものであっても、私はそれを受け入れるわ。」


「世界の崩壊は避けられないの。これは自然の摂理よ。この世界には周期的な終わりと始まりがあって、今はその終わりの時期に差し掛かっているのよ。」


彩子が訪れる前から、この世界は崩壊に向かっていた。


「これは避けられない終わり方なの。世界そのものが誕生した時から、成長と崩壊を繰り返すのがこの世界の在り方なのよ。そしてこの摂理によると、世界は一定の期間ごとに終焉を迎えるわ。そして、新たな世界が創造されるの。」


「止められないのなら、私は、私の世界を再構築するだけよ。」


彩子の決意に、リオは力強く頷いた。


「それでこそ、彩子よ。あなたならきっと、自分の力で新しい未来を切り開いていけるわ。さあ、これから忙しくなるわよぉ」


新たな未来を切り拓く決意を固めた彩子はリオの言葉に頷いた。まず彩子は見えない椅子に座ったまま、まるで光のようなスピードで図書館の中を移動していた。そして、目的の本を何冊か見つけると、一瞬でそれらを理解し、エーテルの中へ飛び込み溶け込んでいった。


リオは何も言わず黙っていたが、彩子がエーテルに飛び込む直前に、自らの光の魔力を鎖にして、彩子の手首にしっかり巻きつけた。


「保険よぉ。ちゃんと帰ってくるのよぉ。」


リオは消えいく彩子につぶやいた。


彩子はリオの付けた鎖を軽くひと撫でして『ありがとう』とリオの気持ちに感謝し微笑み、そのままエーテルに溶け込んだ。彩子は今どこにでもいる。いつの時代、いつの時間、そしてどこの世界にも。リオが心配そうな顔でエーテルを見つめている。


『大丈夫よ』とだけ伝えるとリオは驚いたように周りを見渡した。


彩子は見ていた。この世界を、この世界の全ての終焉の時を。そして、無数の可能性が広がる未来を。エーテルの中で彩子の意識は拡大し、時空を超えて世界の全てを感じ取っていた。過去から未来まで、あらゆる時間軸が彼女の前に広がっていた。


この世界の崩壊は避けられない。しかし、その後に生まれる新しい世界の姿を、彩子は自らの手で形作ることができる。それが、ミリディアが望んだ森羅万象の真の力だった。彩子は意識を集中させ、新しい世界の青写真を描き始めた。調和と均衡のとれた世界。自然と人間が共存し、魔法と科学が融合する世界。そして何より、希望に満ちた未来。エーテルの中で彩子の意識が光り輝き、新たな世界の形が少しずつ具現化していく。時間の概念が消え去った空間で、彼女は黙々と創造の作業を続けた。


リオは図書館で待ち続けていた。時折、エーテルが激しく揺らぐのを感じ、彩子の奮闘を察していた。


「頑張ってぇ、彩子…」


リオは小さく呟いた。そして突然、まばゆい光が図書館を包み込んだ。リオは目を細めながらも、その中心に現れた人影を見つめた。光が収まると、そこには彩子が立っていた。疲れた様子ではあったが、その目には強い決意と達成感が宿っていた。



「戻ってきたのね」


リオは安堵の表情を浮かべた。彩子はゆっくり頷いた。


「ええ、帰ってきたわ。」手首に巻きついた光の鎖を見て「リオのおかげで安心していられたわ。ホントは少し不安もあったのよ」


彩子は微笑んで言った。リオが嬉しそうに笑うと、光の鎖が解けて消えた。


「…新しい世界の種を植えてきたの」


彼女の言葉に、リオは驚きの表情を見せた。彩子は続けた。


「この世界は確かに終わりを迎える。でも、その後に芽生える新しい世界は、希望に満ちたものになるはず。私たちの努力が、そこに生きていくの」


リオは感動に震えながら言った。


「彩子は本当に素晴らしいわ。創造神の能力なのね、彩子」


彩子は微笑んで答えた。


「創造神は森羅万象の意識だと言っていたけど一部と言えるかしらね。姿形は自由に変えられるから、見た目はそれほど重要じゃないの。大切なのは、その本質よ。でも、ここを管理して見守る創造神は必要だわ。」


首を軽く傾げて、彩子は少し考えるとエーテルに手を伸ばし1つの塊にして粘土のように捏ねた。エーテルの塊が強い輝きを放つとそこには、ここに来た時に会った創造神が遜色なくそこに現れた。リオがなんとも言えないような顔をして彩子を見つめた。彩子はスッと視線をずらして、ポツリと言った。


「発想力が乏しくって……」


気を取り直して彩子は、創り出した創造神に言った。


「これから貴方は創造神としてこの森羅万象を見守って貰います。貴方は私でもあるのですが、それはわかっていますか?」


「ふむ。よくわかっておるよ。と言うか貴方様の感覚全てが、この儂を形取っている。この姿はいかようにもなろうが、この姿形で良いのかな?」


「えぇ。構わないわ。他の女神たちや精霊たちには、慣れ親しんだ姿の方が混乱しないでしょう。……説明は難しいしね。」


「うむ、そうじゃのう。人間が森羅万象を手に入れたのはかなり昔、数千年前が最後であったな」


「そうね……感情がある人間には森羅万象はとても危険で使いづらいわ。けれど使いこなせばこの世界だけではなく宇宙そのものの法則さえも自由に出来るわ。貴方にはここを守ってほしいのよ。」


「うむ、わかった。」


創造神はうなづき消えていった。


「これからが本当の始まりよ、リオ。新しい世界の誕生を、一緒に見守りましょう」


二人は静かに頷き合い、七色に輝くエーテルが天に昇っていくのを見上げた。そこには、今まで見たこともないほど輝いていたエーテルの帯が新たな希望の象徴のように広がっていた。


この世界の幕切れは、同時に新たな世界の幕開けでもあった。彩子とリオは、その壮大な移り変わりを見守る二人として、静かに夜明けを待ち続けていた。

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