銀髪の魔女

夢花音

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1章 大いなる力と試練

21話 後編 時空の交差∶静香とリオの絆

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静香の頭の中に、彩子の声が響く。

『説明は間違っていない。』
彩子は森羅万象であり、この世界のあらゆる知識や情報、言語に至るまで全てが彩子の一部なのだ。
彼女はそれらを自在に変化させ、時間や時代さえも彼女と溶け込んで一つになっている。
だから、どこにいても、彼女は常に存在しているのだ。

静香はその言葉を反芻し、少しずつ理解を深めていく。
「つまり、彩子さんはどこにでもいるってこと?」

「そうね~そういう事よ」リオが頷き、
「わかってくれて良かったわぁ」と言った。

すると、突然空間に黒い渦が現れ、中から小さな犬が飛び出して来た。
静香は「可愛い」とひとしきり撫で回すと、犬は身震いをして大きな大蛇に変わった。
驚いて悲鳴を上げる静香。
蛇が2、3回頭を振ると、10歳ぐらいの黒髪の女の子になった。

静香は驚きのあまり、言葉を失った。
目の前に現れた女の子は、蛇から変わったとは思えないほど愛らしい顔立ちをしている。
彼女は黒い髪をふわりと揺らしながら、静香の目をじっと見つめていた。

「静香。私は彩子だったものの一部だ」と女の子は無表情な顔で言った。
静香は思わず立ち上がり、その不思議な存在に一歩近づいた。
「彩子さんだったもの……?」

「そう、人の形をしたのは、もっと親しみやすくなるためだ。
彩子と名乗るのも便宜上だな」と女の子は説明した。
「本来、この世界には私だけがくるつもりだった。」

「え?あなただけ?」

「そうだ。この世界にくるには彩子に力を開放してもらうしか無かった。だがその代償に彩子は人間の感情を捨てなければならなかった。自分では無くなる姿をリオに見せるのは嫌だったのだろう。」
「しかし、リオがどうしてもこの世界に来たいと言ったのだ。それも人間になって。」

静香はリオに顔を向けた。
こころなしかリオが赤くなっているような気がした。
しかし、彩子に言われても、まだ心の中には疑問が残っていた。

「でも、リオが人間になった理由は理解できないわ。
どうしてその選択をしたの?」

女の子は少し考え込み、リオの方を見た。
「それは、リオがおまえともっと深くつながりたい。
おまえの世界の融合を研究したい。そして、静香が好きだから、側にいたいからだな。」

リオはさらに真っ赤になって、「彩子、わたしが言うから、余計な事言わないでよぉ」

「聞かれたからこたえたのだが?」

「とにかく、わたしが話しをするわぁ。
それから、ずっと気になっていたけど、もう少し女の子らしい言葉で話せないのぉ?」

「言語は間違ってはいないと思うが。」
「そう言うことじゃないんだけど、まぁ、いいわよぉ~、わたしが話しをするからちょっと黙っていてよね」

リオはそう言うと改めて静香を正面から見つめた。
「静香。わたしはね、あなたと一緒にいたいのよ。あなたのことをもっと知りたい。
理解したい。静香が好きなの、たぶん?」と真剣に言った。

静香はその言葉に「多分って何よ?」少しだけ笑顔を見せた。
「でも、あなたはルビーナだったんでしょう?
私はルビーナだった時から好きだったし、あなたもそう思ってくれていると感じていたけど?」

静香は問いかけた。
「ルビーナとしての過去を忘れたわけではないし、確かにその時も静香が好きだったわよ。
でもねぇ~、なんて言っていいかしら?気持ちがね、違うのよぉ~。

リオとして、精霊になった時にもね、静香のことを思い出したりすると、その時も好きだわぁ、
って思ったのよぉ。それで人間になって静香のことを思い出した時にね、
やっぱり好きだわって思ったんだけどぉ、今までの好きとは違うのよ!

ドキドキするし苦しいのよ?
嬉しくて楽しいのによ?でもこの好き!は大切にしなきゃいけない気がしたのね。」
「その好きをすごくすごく大事にしたいって思ったのよ」
黙って聞いていた彩子が言った。
「それはリオが人間としての感情や感覚、特に生命を繋ぐ役割を持ったからだな。」

リオと静香が揃って真っ赤になった。
「とにかく静香と一緒にいたいのよ。わたしも静香とこれからどうしたいとか、どうなりたいとか、
はっきり分かっているわけでもないけれど、この好きと言う気持ちは大事に育てたい。静香と一緒に暮らしたい。」

「人間としてもまだ出来立てのわたしは、静香と一緒にいることで、もっと成長できると思っているし静香の守りたい。」リオは目を輝かせて言った。

「この世界はいきなり人間が湧いて普通に生活できる様な世界ではないからな。
だが、そのために私がいるのだ。」

そう言うと彩子が指を軽く回した。
空中に大きな渦巻きができ、あっという間に空を覆い尽くした。そして消えた……。
人々は何も気づかなかった。その一瞬で、リオはこの世界の人間となった。
静香にもリオの記憶はしっかり焼き付けられていた。もちろんリオ本人にも。
真実もまた二人の記憶には残っていた。

彩子は二人に「ふむ、一番無難な設定にしたが、変えたいならば今しかないぞ?これから先の変更は無理だからな」と伝えた。
静香は「えーと、リオって名前は変わらないんだ。幼馴染かぁ。両親はもう亡くなってるの?
え?私のことが好きで押しかけて一緒に暮らし始めたの?」と少し恥ずかしそうに記憶をすり合わせていた。

リオも「凄いね~~でも、間違ってはいないよねぇ~」と妙な感心をしながら「ねぇねぇ、彩子ぉ。
それで無難な設定って、何よぉ?」と聞いた。
彩子は「この世界で割合が多い設定だな。詳しく説明するならばそもそも………」と続けようとしたが、
リオは急いで止めた。「やっぱり、説明はいらないわ。」

リオは静香に向かって「わたしはこれでいいわよ?」と言った。
静香も「私もいいわ」と答えた。
これで二人は幼馴染の恋人?になった。
彩子はリオと静香に厳しい目を向けると、こう言った。

「私はこの世界の知識と技術を吸収し、私の世界に戻る。
しかし先ほどリオが言ったが、私は形ないもの。この世の全てが❛私❜である。
何処にでも❛私❜はいる。❛私❜は私の世界の人々に知識を与え、技術を教える。
しかし、覚え、使うのは人々である。そこに齟齬が生じる可能性もある。」

「そこで、リオには暫く、定期的に向こうの世界に戻り、
齟齬が生じた時の修正をして貰いたい。時空を超える道を作ろう。
それならばこちらの世界の時は変わらずにいられる。
例えば1年いても、この世界に戻る時にはほんの数秒という事だな。」

リオは静香を見つめた。
静香は頷くと、「私も協力するわ」と答えた。
リオは彩子に、「わかったわぁ~。わたしもそのつもりだったし、まかせてぇ~」と力強く言った。
その時、無表情だった彩子の瞳が一瞬、大きく見開かれたと思ったら涙がこぼれた。
え?と二人は顔を見合わせた。

彩子が言った。「❛彩子❜の記憶と感情が目覚めたな。しかし❛彩子❜ではこの世界には留まってはいられない。」
そう言うと静かに目を閉じた。ほんの一瞬だった。

❛彩子❜は『リオ…良かったね。元気でね。ありがとう。大好きだよ』と言って消えた。
静香に抱きつきながら大声で泣いているリオに、彩子は「心配するな。
❛彩子❜はあちらの世界では定期的に目覚める。完全に消えたわけではない。
リオとも会える日もあるだろう」と伝えた。

そして「では、帰ろう」と言って消えた。
頭に声が響く。「今、時空を繋げた。リオが強く思えばあちらの世界に戻れる。」
そう言い残し、彩子はいなくなった。

リオは静香と一緒に暮らすことになった。
人間として新たなスタートを切ったリオは、静香と近くの公園を散歩した。
この世界の自然未来について話し合うことにした。

「静香、これからどうする?」とリオが尋ねると、静香はニッコリと笑った。
「まずは、仕事を覚えなくてわね。知識はあるけどね。」

「静香は、魔法エンジニアとして働いているんだよね。
わたしも、同じ職場だよね?科学と魔法の技術を融合させた装置やシステムを設計・開発する専門家だよぉ。
新しいエネルギー源や魔法的な素材を利用した機器を作成するんだよね?
かなり特殊な職業だったんだよねぇ~かなり秘匿された事が多いんだよねぇ」
リオの言葉に、静香は頷く。
「私も全力で協力するわ。二人で協力しながら働こう!」


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