1 / 1
始まりの村の聖女
しおりを挟む
めを覚ますと、目の前には見慣れない風景が広がっていた。草木が生い茂る静かな村、周囲には活気ある人々の姿があった。おばあちゃんは、いつもの布団の中ではなく、石畳の上で寝そべっていることに気づく。
「始まりの村…か?」
突然、近くにいた若者が呟いた。
どうやらここは「始まりの村」と呼ばれる場所らしい。おばあちゃんは混乱しながら、ここは一体どこなのか考えていた。 しかも、身体が軽い。恐る恐る手を見てみると、皺1つない若々しい手がそこにあった。
「おや、若返ってるじゃないか!」
だが驚く暇もなく、村人の一人が話しかけてきた。
「娘さん、冒険者かい? パーティーを組むかい?」
「パーティー…? それはなんだい? ここはどこだい?」
おばあちゃんは昔ながらの感覚で若者に問いかけるが、彼は首をかしげるだけだった。村の人々の会話には、英語のような難しい言葉が混じっており、おばあちゃんには理解できなかった。
「ステータスを確認してくれ!」と、誰かが叫ぶ。
「ステータス? それは、身体のことかい?」
見知らぬ単語ばかりで混乱するおばあちゃんの手元に、何やら透明な画面が浮かび上がった。それは自動翻訳されていたが、英語を見慣れていないおばあちゃんには何がなにやら分からない。
「えーと、えっち、ぴー、でいいのかい?HPって、なんだいそれは? 意味がわからないよ…」
そのうち、他の若者たちが次々とパーティーを組んで冒険に出て行くのを見て、自分がどんな力を持っているのかもわからず、使い方も知らないままに取り残された気分になるおばあちゃん。
「これからどうしようかねぇ…」
おばあちゃんは溜息をつきながら、ひとまず村を歩き回ることにした。とにかく、この世界を知る必要がありそうだ。若返ったことに感謝しつつ、まだまだこの奇妙な世界に馴染めるかどうか不安でいっぱいだった。
村を歩き回って見つけた空き家。家事や畑仕事などを手伝うからと頼み込んで空き家を借りた。冒険? しない!しない!
元気な少女が村に訪れて、冒険そっちのけで、村中をあちらこちらとグルグルまわっていた。一軒の空き家を見つけると貸してほしいと言って来た。
家事や畑仕事も手伝うし、薬膳食堂?も営業したいとか?マキと名乗った娘は見た目16歳くらいだし、悪さはできないだろうと快く受け入れた村人たちだった。
---
魔法も使えないマキちやんに、生活魔法くらいはと教えたところ、火魔法や水魔法、ついでに光魔法も教えて直ぐに使えるようになった。これには村の若い衆もビックリ。
パーティー? ステータス? それらはおばあちゃんには全くの謎。手元に表示される「ステータス画面」も英語ばかりでさっぱり意味がわからない。
だから、今まで一度も確認したことがない。彼女はただ、自分が元々得意だった薬膳で人を助けているだけだった。
ただ、魔法に関してはなぜだか大抵の魔法は使えた。日本人としての記憶があるので、演唱もなく頭の中で考えるだけで魔法が発動してしまう。マキちやんは便利だと思うことにした。
---
しかし、この世界の人々は知らなかった。マキちやんは実はこの国が待ち望んでいた「聖女」として転生していたのだ。
しかも、彼女が持つ魔法の中で特に癒しと浄化の、威力は無限だ。
だが本人は全く気づかず、ただ日々を穏やかに過ごしていた。
王都の王宮では、国中のあちこちに使者を送り、転生したはずの聖女を過去の姿絵をもとに探し回っていた。
姿は殆ど変わらないと伝えられていたからだ。
王宮にある聖女の玉が光輝いている。
それは新たに聖女が転生したと言う証なのだ。
「聖女はまだ見つからないのか!? 彼女がいないと、この国は滅びてしまうぞ!」
聖女が持つと言われる強大な癒しと浄化の力は、国の危機を救うために必要不可欠なのだ。しかし、どこを探してもその姿は見つからない。
「もしかして、魔物に囚われているのでは?」
「いや、まだこの街に来ていないだけかもしれん。」
誰も、聖女がすでに「始まりの村」で普通に暮らしているなど思いも寄らなかった。
--始まりの村にも王宮の使者は来た。姿絵を持って。しかし、村人たちはそのような少女は見たこともなかった。
姿絵の少女は、長いストレートな黒い髪に、黒い瞳の色白の美少女だった。
マキは(あら? 綺麗なお嬢ちゃん。日本人よね~)と思っていた。
マキも同じ黒髪だが、光の加減では濃茶に見える。瞳の色も、なぜか茶色になっていた。
まさか、自分が探されているとは夢にも思っていなかった。
疲れきった使者は、元気になると噂のマキのスープを飲んで、気力が回復し、喜んで王都に帰って行った。
そんな国の必死な捜索をよそに、マキちやんは今日も元気に村で薬膳料理を作っていた。ある日、怪我を負った冒険者がふらふらと店に入ってきた。
「マキちゃん、ちょっとこの腕が痛くて…」
「おやおや、それならこのスープをお飲み。」
マキちゃんはいつまでもこんな口調なのだ。
マキちゃんが作った特製の薬膳スープを一口飲んだ途端、彼の怪我は瞬く間に治り、体はみるみる元気を取り戻していく。
だが、マキにとっては、これが「普通」だった。自分がどれほど強大な力を持っているのか、まるで気にしていない。
「いつものことだねぇ。」
---
しかし、村の人々は徐々に気づき始めていた。マキの料理には、ただの薬膳以上の力がある。冒険者がどれだけ疲れていようが、怪我をしていようが、店から出るときには皆元気になっているのだ。
「もしかして…マキちゃんは、ただ者じゃないのか?」
それでも、マキは今日も変わらずに、のんびりとした日常を送っている。「平和だね~」とニコニコしながら、自分が聖女だとは知らずに、心を込めた料理を振る舞い、皆に喜んでもらうことが彼女にとっての幸せだった。
---
こうして、始まりの村での彼女の日常は続いていく。マキちやんは、知らぬ間にこの国の運命を背負う存在となり、彼女の優しさと力は、村人たちの心を癒し、国を救う鍵となっていくのだった。
「始まりの村…か?」
突然、近くにいた若者が呟いた。
どうやらここは「始まりの村」と呼ばれる場所らしい。おばあちゃんは混乱しながら、ここは一体どこなのか考えていた。 しかも、身体が軽い。恐る恐る手を見てみると、皺1つない若々しい手がそこにあった。
「おや、若返ってるじゃないか!」
だが驚く暇もなく、村人の一人が話しかけてきた。
「娘さん、冒険者かい? パーティーを組むかい?」
「パーティー…? それはなんだい? ここはどこだい?」
おばあちゃんは昔ながらの感覚で若者に問いかけるが、彼は首をかしげるだけだった。村の人々の会話には、英語のような難しい言葉が混じっており、おばあちゃんには理解できなかった。
「ステータスを確認してくれ!」と、誰かが叫ぶ。
「ステータス? それは、身体のことかい?」
見知らぬ単語ばかりで混乱するおばあちゃんの手元に、何やら透明な画面が浮かび上がった。それは自動翻訳されていたが、英語を見慣れていないおばあちゃんには何がなにやら分からない。
「えーと、えっち、ぴー、でいいのかい?HPって、なんだいそれは? 意味がわからないよ…」
そのうち、他の若者たちが次々とパーティーを組んで冒険に出て行くのを見て、自分がどんな力を持っているのかもわからず、使い方も知らないままに取り残された気分になるおばあちゃん。
「これからどうしようかねぇ…」
おばあちゃんは溜息をつきながら、ひとまず村を歩き回ることにした。とにかく、この世界を知る必要がありそうだ。若返ったことに感謝しつつ、まだまだこの奇妙な世界に馴染めるかどうか不安でいっぱいだった。
村を歩き回って見つけた空き家。家事や畑仕事などを手伝うからと頼み込んで空き家を借りた。冒険? しない!しない!
元気な少女が村に訪れて、冒険そっちのけで、村中をあちらこちらとグルグルまわっていた。一軒の空き家を見つけると貸してほしいと言って来た。
家事や畑仕事も手伝うし、薬膳食堂?も営業したいとか?マキと名乗った娘は見た目16歳くらいだし、悪さはできないだろうと快く受け入れた村人たちだった。
---
魔法も使えないマキちやんに、生活魔法くらいはと教えたところ、火魔法や水魔法、ついでに光魔法も教えて直ぐに使えるようになった。これには村の若い衆もビックリ。
パーティー? ステータス? それらはおばあちゃんには全くの謎。手元に表示される「ステータス画面」も英語ばかりでさっぱり意味がわからない。
だから、今まで一度も確認したことがない。彼女はただ、自分が元々得意だった薬膳で人を助けているだけだった。
ただ、魔法に関してはなぜだか大抵の魔法は使えた。日本人としての記憶があるので、演唱もなく頭の中で考えるだけで魔法が発動してしまう。マキちやんは便利だと思うことにした。
---
しかし、この世界の人々は知らなかった。マキちやんは実はこの国が待ち望んでいた「聖女」として転生していたのだ。
しかも、彼女が持つ魔法の中で特に癒しと浄化の、威力は無限だ。
だが本人は全く気づかず、ただ日々を穏やかに過ごしていた。
王都の王宮では、国中のあちこちに使者を送り、転生したはずの聖女を過去の姿絵をもとに探し回っていた。
姿は殆ど変わらないと伝えられていたからだ。
王宮にある聖女の玉が光輝いている。
それは新たに聖女が転生したと言う証なのだ。
「聖女はまだ見つからないのか!? 彼女がいないと、この国は滅びてしまうぞ!」
聖女が持つと言われる強大な癒しと浄化の力は、国の危機を救うために必要不可欠なのだ。しかし、どこを探してもその姿は見つからない。
「もしかして、魔物に囚われているのでは?」
「いや、まだこの街に来ていないだけかもしれん。」
誰も、聖女がすでに「始まりの村」で普通に暮らしているなど思いも寄らなかった。
--始まりの村にも王宮の使者は来た。姿絵を持って。しかし、村人たちはそのような少女は見たこともなかった。
姿絵の少女は、長いストレートな黒い髪に、黒い瞳の色白の美少女だった。
マキは(あら? 綺麗なお嬢ちゃん。日本人よね~)と思っていた。
マキも同じ黒髪だが、光の加減では濃茶に見える。瞳の色も、なぜか茶色になっていた。
まさか、自分が探されているとは夢にも思っていなかった。
疲れきった使者は、元気になると噂のマキのスープを飲んで、気力が回復し、喜んで王都に帰って行った。
そんな国の必死な捜索をよそに、マキちやんは今日も元気に村で薬膳料理を作っていた。ある日、怪我を負った冒険者がふらふらと店に入ってきた。
「マキちゃん、ちょっとこの腕が痛くて…」
「おやおや、それならこのスープをお飲み。」
マキちゃんはいつまでもこんな口調なのだ。
マキちゃんが作った特製の薬膳スープを一口飲んだ途端、彼の怪我は瞬く間に治り、体はみるみる元気を取り戻していく。
だが、マキにとっては、これが「普通」だった。自分がどれほど強大な力を持っているのか、まるで気にしていない。
「いつものことだねぇ。」
---
しかし、村の人々は徐々に気づき始めていた。マキの料理には、ただの薬膳以上の力がある。冒険者がどれだけ疲れていようが、怪我をしていようが、店から出るときには皆元気になっているのだ。
「もしかして…マキちゃんは、ただ者じゃないのか?」
それでも、マキは今日も変わらずに、のんびりとした日常を送っている。「平和だね~」とニコニコしながら、自分が聖女だとは知らずに、心を込めた料理を振る舞い、皆に喜んでもらうことが彼女にとっての幸せだった。
---
こうして、始まりの村での彼女の日常は続いていく。マキちやんは、知らぬ間にこの国の運命を背負う存在となり、彼女の優しさと力は、村人たちの心を癒し、国を救う鍵となっていくのだった。
11
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
真実の愛ならこれくらいできますわよね?
かぜかおる
ファンタジー
フレデリクなら最後は正しい判断をすると信じていたの
でもそれは裏切られてしまったわ・・・
夜会でフレデリク第一王子は男爵令嬢サラとの真実の愛を見つけたとそう言ってわたくしとの婚約解消を宣言したの。
ねえ、真実の愛で結ばれたお二人、覚悟があるというのなら、これくらいできますわよね?
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
包帯妻の素顔は。
サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
新しい作品をありがとうございます。
今度はなんとも平和で、こんなスローライフ良いな~と憧れてしまいます。
マキちゃんさん、私にもお肌の調子の良くなる薬膳スープください♪
いつもいつも、読んでくださってありがとうございます。感想も毎回本当に心から感謝します。今回は、少し箸休的なスローライフを書いてみました。ちょっと健康食に興味がありまして、薬膳料理なんて書いてみました。わたしもマキちゃんの薬膳料理食べたいですwww
これからも宜しくお願い致します。気が向いたらまた、短編をちょこちょこ、投稿していきます。そちらも宜しくお願い致します。