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二人が紡ぐ癒しの物語
しおりを挟む意識を取り戻してから数ヶ月が経ち、アデリーヌはアルトやメイド、使用人たちの手厚い世話で徐々に回復していき、今では庭を散歩できるほど元気になっていた。
ある日、彼女が庭で花を手入れしていると、メイドたちが近づいてきた。 「お嬢様、お茶の時間です」と一人が言った。 アデリーヌは微笑みながら「ありがとう、でも今は大丈夫よ」と答えた。
その時、アデリーヌの頭の中でマリーの声が聞こえた。 「お嬢様、少し休憩した方がいいですよ。体を大切にしなければ」 アデリーヌはマリーの助言に従い、メイドたちに感謝を述べてお茶を受け取った。
また別の日、アルトがアデリーヌの部屋を訪れた。 「アデリーヌ、少し話があるんだ。君が最近、自分自身ではないように見えるんだ」と彼は言った。 アデリーヌは少し驚きながらも、「それは、私の中にマリーがいるからかもしれないわ」と答えた。 アルトは驚き、「それはどういうことだ?」と尋ねた。 アデリーヌは彼に全てを説明した。アルトは深く考えた後、「君が幸せであればそれでいい。君が必要とするものは何でも支えるよ」と言ってくれた。
ある日、アデリーヌは耳元で優しく自分を呼ぶ声を聞いた。それはマリーの声で、彼女にとってはとてもなじみやすい声だった。その声に導かれ、彼女は見慣れない部屋に足を踏み入れた。その部屋は、彼女が頭の中に作り出した世界で、彼女自身の頭の中に存在する場所だった。部屋の中には、彼女の過去の記憶、感情、そして彼女が抱えている痛みが詰まっていた。薄いピンクのソファーとテーブル。テーブルには白く可愛いレースのクロスが掛けられていた。壁には真っ白な本棚が大量に並んでおり、その本棚には本がぎっしりと詰まっていた。アデリーヌが今まで、求めても与えられなかった物が、その部屋にはつまっていたのだ。
アデリーヌは、意識を取り戻して暫くしてから、自分の中に別の存在がいるのではないかと思い悩んでいた。しかし、日が経つにつれてその存在がマリーではないのかと思い始めた。その存在は、アデリーヌの痛みと苦しみを分かち合い、彼女を支えていた。しかし、その存在の人格が現れるときには、アデリーヌは自分がアデリーヌであることを忘れ、その時の記憶もなくなっていた。アデリーヌはその存在と自分の人格が頻繁に入れ替わることで空白の時間が多くなったことに気づき始め、自分はやはりどこかおかしいと思い、そして自分の中のマリーの存在を意識するようになったのだ。
彼女の家族や、まわりの使用人たちはアデリーヌがメイドのマリーと同じ言動をする事に戸惑っていた。メイドたちの呼びかけにも無反応で黙々と仕事をこなしていくアデリーヌを痛ましい目で見ていた。
アルトが声をかけた。 「マリー」と。 アデリーヌが振り向くと笑顔で「あら、兄さん」と返事をした。 アルトは何事もないように尋ねた。「お嬢様はどうしたのかい?」 するとアデリーヌが少し困ったように答えた。 「お嬢様は昨晩はあまり良く眠られなかったそうで、簡単に言えばお昼寝がしたいと。」「マリーおねがい」と言われてマリーが出て来たのだそうだ
とは言われてもアデリーヌが何らかの心の病に侵されているのは誰の目から見ても明らかだった。しかしアデリーヌの両親である公爵と夫人は、アデリーヌが教会から病気とは認められず、悪魔に取り憑かれていると言われることを恐れ、教会の治療を受けずに独自のルートから医師や薬師を集めて治療することに決めた。彼らはアデリーヌが醜態をさらすことを避け、彼女が悪魔に取り憑かれた等と言われ蔑まれることは耐え難いことだった。
そんな頃からだろうか、遠くでアデリーヌを呼ぶ声が時々聞こえるような気がした。その声は日を追うごとに大きくなり、そして誰が呼んでいるのかも理解できるようになった。懐かしいその声をアデリーヌが忘れるはずはない。パビリオンで一人静かに花を眺めているときに、耳元でマリーの呼ぶ声がはっきり聞こえた。
「お嬢さま」 思わず立ち上がりマリーを探した。そしてその声に導かれるように眩しさを感じた時、見知らぬ部屋があった。 「ここはどこ?」 「お嬢様」 そこには亡くなったはずのマリーがいつもと変わらない姿で立っていた。 「マリー!どうして?ここはどこ?マリー、マリーに会いたかった」 アデリーヌはマリーに駆け寄ると抱きついた。マリーは優しくアデリーヌを抱きしめた。
「お嬢さま、そこのソファーに座ってください。今、お茶を入れますね」 マリーがそう言うと、今までソファーの前にあったテーブルにお茶のセットが用意されていた。慣れた手つきでお茶を入れたマリーは静かに今までの事を話し始めた。
「じゃあ、ここは私の頭の中なの?」 「そうです。お嬢様の頭の中に部屋ができて、私が生まれた?いえ、生まれ変わったのかもしれません」 「じゃあ、マリーはここから出られないの?」 「いえ、出られることは出られるようですが、姿はお嬢様のままなのです」 「お嬢様の記憶がない時は私が出ていました」 「ただ、どうして私が出ることができるのか、いつ出れるのかも分かりません。それに……恐れ多くも、お嬢様のお身体を拝借するのはとても心苦しく思います」 「今までは、お嬢様はこちらで寝ていました」
マリーの指差すところには可愛いベッドが置いてあった。 「ですから私のこと、そのときの記憶もわからないのです」 アデリーヌは少し不安そうに聞いた。 「どんな様子なのか心配だわ。みんな気がついたかしら?」 マリーは壁にかかっている大きな鏡を指差すと 「お嬢様、ご覧になりますか?ここから今の様子と前の行動を見ることができますが」と言った。 アデリーヌは鏡の前に立つと「見せてちょうだい。全部」と言った。
全てを理解したアデリーヌは、マリーにニッコリと笑いかけ、「これからはちゃんと記憶を共有しましょう?」とマリーの手を取って言った。
アデリーヌは、火事で亡くなったマリーをずっと偲び続けていました。マリーはアデリーヌにとって母親のような存在で、彼女との別れは突然でした。そのため、マリーの人格が自分の中に存在することを知ったとき、アデリーヌは非常に嬉しく感じました。彼女はマリーとの共存を喜び、二度と離れない選択をしました。
マリーの人格と会話を重ね、アデリーヌはマリーの温かい人柄と優しい言葉に触れられるようになりました。亡くなってから初めて、アデリーヌはマリーとの思い出をゆっくりと整理できるようになりました。そして、マリーの人生の意味や教えを理解し、自分自身の生き方をマリーから学んでいったのです。
アデリーヌは村の人々に温かく迎え入れられ、彼女自身の新たな一歩を踏み出すことができました。アルトとメイドたちは彼女の成長と発展を喜び、彼女が自分自身を受け入れ、愛することができたことに心から感謝しました。
しかし、アデリーヌの中には、まだ癒えていない傷が残されていました。過去の出来事の記憶が、時折彼女の心を苦しめました。そんな時、マリーが現れ、アデリーヌの痛みと共に歩みました。マリーは、アデリーヌの分身であり、彼女の苦しみを分かち合う存在でした。アデリーヌは、マリーと対話することで、自分自身の内なる声に耳を傾けることができました。マリーは、アデリーヌが自分自身を愛し、受け入れるよう促しました。アデリーヌは、マリーの存在を通して、自分自身を深く理解するようになりました。
アルトは、アデリーヌとマリーの関係を見守りました。アルトはアデリーヌが抜け殻のようになったとき、アデリーヌに特別な感情が生まれました。しかし、アデリーヌに妹マリーの人格が現れたときに、その感情を胸の奥に隠したのでした。アルトは変わらずアデリーヌが自分自身と向き合う過程を支えました。アルトの優しさと思いやりは、アデリーヌの心の癒しとなりました。
やがて、アデリーヌはマリーとの共存も自然に行えるようになってきました。彼女は過去の傷つきから解放され、新しい人生に向けて前進することができました。
アデリーヌ、マリー、そしてアルトとメイドたちは、互いに支え合いながら、新たな旅路を歩み続けました。彼らの絆は、時間と共に深まり、お互いを尊重し合う関係へと成長していきました
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