鋼鉄少女王 タイタンメイデン

鳳たかし

文字の大きさ
34 / 64
第三話

第三話 光明院ケイはこういった その13

しおりを挟む
 一方、ここは太平洋上に浮かぶ謎の島。
ガミオンと敵対するタイタンメイデンの拠点であるこの島でもすでに日は落ち、
夜の闇が周囲を覆っていた。
切り立った崖に覆われるようにして存在する砂浜の、数台の照明施設が辺りを照らし出す中、
巨大なタイタンメイデンの戦士タオが
足元でイーゼルに向かい作業している人間の少女ウーに声をかける。

「ウーよぅ、とっくに日も暮れたし、そろそろ中に戻らねーとダインが心配すんぜ?」

「え~?もうちょっとだから~」

ごねるウーはタオへの返事も適当だ。

「続きは中でやりゃあいいんじゃねーの?」

元来、めんどくさがりな性格のタオは、一人で絵を描くことに熱中しているウーのお守りにすでに飽きているようだった。
なげやりな態度を隠さないタオに向かってウーは偉そうに御高説を述べる。

「こういうのはね、いんすぴれーしょんがだいじなの!ビビっと来た時にやるべき!」

「そんなもんかねぇ?」

「そんなもんなの!」

その時、切り立った崖の一部が開き、中から一人のタイタンメイデンが現れた。
振り向きその姿を目にしたタオが驚きの声を上げる。

「ニュートゥ!?」

ゲートをくぐり姿を現したタイタンメイデンは誰あろう、技師ニュートゥ。
ガミオンに敗北し昏睡状態にあったはずのニュートゥが今、目の前に現れたことにタオは驚きを隠せない。

「え!ニュートゥ!?」

タオの足元にいたウーがニュートゥの存在に気付き、手にした筆を止めてキャンバスを取り外して小脇に抱え込む。

「お前、頭のほうは大丈夫なのか?」

タオの問いかけにニュートゥは自身の頭部を指で軽くたたきつつ答える。

「ああ。ヨミの手当てが的確だったのでな。少し記憶の欠落があるぐらいだ。
 だが案ずるな、やらなければならない事はきちんと憶えているぞ」

自身の無事をアピールするニュートゥ。
その足元に駆け寄ったウーが、抱えたキャンバスを後ろに隠しつつ見上げると、
それを見たニュートゥはゆっくり膝をつき話しかける。

「ウー、どうした?私に何か用か?」

「えへへ、ニュートゥにプレゼントがありま~す」

ウーは後ろ手に隠したものをばっと掲げ、ニュートゥに差し出す。
それはニュートゥの似顔絵が描かれたキャンバスだった。

「へへへ~、これ!ニュートゥの絵!今、手直ししていたの!力作おぶ力作!」

すると、そのやり取りを覗き見ていた見ていたタオが指摘するように言った。

「おい、ウーよぅ、それ……」

「な~に?」

タオの指摘にウーは掲げた腕を下ろし、キャンバスを確認する。

「ああ!?」

驚き、声を上げるウー。
そこに描かれたニュートゥの顔は、絵の具がにじみ奇妙に歪んでしまっていたのだ。

「絵の具が……」

力作おぶ力作が台無しになってしまいショックで落ち込むウー。

「あ~らら、乾いてないのに抱えたから滲んじまったんだな」

とデリカシーの欠けた言い方でタオが言うと、途端にウーの目に涙がにじみ始める。
ニュートゥはウーを両手でやさしく包み込み慎重に持ち上げた。
一緒に持ち上げられた砂が手のひらからこぼれ、照明のひかりを反射しながらキラキラと風に舞い散る。

ウーを自分の目線に持ち上げるとニュートゥが言った。

「ウーよ、素敵なプレゼントをありがとう」

「でも、こんなになっちゃった……」

べそをかくウー。

「そう落ち込むなウーよ。創作するという行為は素晴らしいものだ。それがたとえ失敗に終わったとしても。
 失敗の経験は無駄ではないぞ。その経験を活かし、次に繋げればよいのだからな」

自身も『技師』という身の上であるからだろう、創作という行為に特別な感情を持つニュートゥのその言葉は本心から出たものだ。

ニュートゥは頭部から細く繊細な精密作業用の触腕を延ばし、ウーの手からキャンバスを受け取る。

「これは君の成長の記録として受け取っておこう」

そしてニュートゥは巨大な人差し指を器用に使いウーの頭をなでた。

ニュートゥは、涙をこらえるウーをゲートへと運ぶと、ゆっくりと床に下ろす。

「さて、ウーよ、私とタオはこれから出かけねばならん。
 だが君から貰ったプレゼントをなくしたりしたらとても残念だ。
 ゆえにこれを君からダインへと預けに行ってもらいたいのだが、頼めるだろうか?
 重大なミッションだぞ?」

「じゅうだいなみっしょん!?」

ウーの曇った表情が一変し好奇心に包まれる。
触腕を伸ばし、ウーにキャンバスを渡すニュートゥ。

「うん、わかった!」

「よろしい。では、お願いしよう」

「らじゃ!」

機嫌を直したウーが頷く。

ニュートゥが軽く口笛を吹くと、周囲の砂の中から銀色の小さな球体が5~6個這い出した。
サッカーボールほどの大きさの球体はウーの下へと集まると瞬く間に結合、変形し、
大人の女性ほどの大きさを持つ人型へと変わる。

人型がニュートゥを見上げ、言語のようにも聞こえる機械音を発するとニュートゥが頷く。
再び機械音を発した人型はウーへと手を伸ばし、今度は明確に人の言語を発した。

「私がご案内します」

「いいよぅ、一人でできるもん!」

ウーが輝くような表情でゲートの奥に走っていくと、人型が困ったようにニュートゥを見上げる。
ニュートゥの目から送られた合図を確認した人型は再び分離し、銀色の球体に戻ると、
そのうちのいくつかがウーを追い、その死角へと静かに転がっていく。
それを確認したニュートゥが扉の外へと引くと巨大なゲートが静かに閉じていき、手を振るウーを覆い隠していった。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...