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第1話
しおりを挟む――ギッ、ギシギシ…
茜陽が射す、放課後の旧校舎。その最上階の一番片隅、今はもう物置代わりにしか使われていないその埃っぽい一室で、誰が置いたともしれない古びたソファーが、安っぽい音を立てて軋む。
そして、その上にはせっせと情事に勤しむ、制服姿の若者が二人。
「はあ、はあっ……ねえ、舞羽さんも気持ちいい……?」
額を流れる汗を乱暴に拭いながら、熱い吐息の合間にそう漏らす男。だが、
「………」
室内には、ぱちゅぱちゅという水音が響くだけで、特に女からはなんの反応もない。それどころか、ちらっと顔を横に向けて、壁にかかった時計の針を気にしている。
「つれない、なあ……っ。声くらい、聞かせてくれてもいいじゃん」
しかし、男は独り善がりに律動を止めず、せりあがる快感に恍惚とした表情を浮かべる。やがて、
「くっ…! ま、舞羽さん…!お、俺、もう……っ!」
男の方はだいぶ限界が近いのか、顔を真っ赤にして腰をさらに小刻みに打ちつける。
次第に加速していく男の動きに合わせて、重力に負けている女の柔らかな乳房がぽよん、ぽよんと激しく波打つが、女はというと
「………」
それでも依然として、顔色一つ変えずにされるがままだった。そして――。
「~~イ、イくっっ!!」
男は果てると、そのまま彼女の上にドサッと覆いかぶさる。
その瞬間、耳元にかかる「はあ、はあ……」という上気した息遣いと、膣内に広がる温かな微熱。
しかし、女はそれすらも無抵抗で受け止め、男が落ち着くのを何とも言えない表情で、ただじっと待つと、しばらくして、男がむっくりと起き上がり、自らのものをそーっと引き抜く。
――ヌポっ
「……っ」
最後の引っかかりの部分が出し抜かれた瞬間になって、ようやく僅かにピクッと腰を浮かせる女。すると、中からどろっとした白濁液がツーっと零れ、ソファーにぽたぽたと垂れる。
「すっげ……エロ……」
男はグイッと女の足を大きく広げさせると、その様を満足げに眺める。それは、女が全て出し終わるまで続いた。
◆ ◆ ◆
「いや~、マジで助かったよ」
コトが終わると、男子生徒は膝まで下したズボンをたくし上げ、カチャカチャとベルトを直しながら、能天気な声でそう語りかける。
「………」
だが、女はそれにうんともすんとも言わず、その辺に脱ぎ捨てられた自分の下着や制服を淡々と拾い上げ、男に背を向けたまま、まだベタベタしてる身体の上から仕方なくそれらを身につける。しかし、尚も、その男の下らないおしゃべりは続く。
「ちゃんとジンクス通り、誰にも見られてないっぽいし、これで俺も安心して、明日、好きなあの子に告れるわ~」
「…あっそ」
「あっそ、って (笑) 感想それだけ? もっと他に言うことあるっしょ」
「別に、ない」
「うわ、冷て~。あの噂って、マジだったんだな (笑) ――旧校舎の恋のキューピッドは啼かないって。ね? 天塚 舞羽センパイ?」
「………」
そう。この学校には男子の間だけでまことしやかに囁かれている、とある都市伝説が存在する。
それは、恋のキューピッドである天塚 舞羽とヤると、自分を意中の相手と惹き合わせて、結び付けてくれるというもの。
初めはそんな迷信めいた噂話、誰もまともに信じてなどいなかったが、一人、そして、また一人と「やべぇ。あの話、ガチだったww」「天塚に中出ししたら、秒で彼女ができた」と実体験が赤裸々に語られるごとに、それは瞬く間に男子生徒の間で広まり、都市伝説となった。
――だが、そんな夢物語のような話にも、一つだけ条件が存在する。それは、その行為の真っ最中を誰かに覗かれると、途端に効力を失ってしまうというのだ。
そのため、こうして人気のない、もう今は誰にも使われていない放課後の旧校舎で、こういったことが日常茶飯事のように行なわれるようになっていった。
「でもさ~。舞羽さんとセックスするだけで、告白が百発百中で成功するなんて、マジでスゲーよな。もしかして、アレじゃん? 究極のアゲマン的なやつ (笑) 」
「………」
「しかも、舞羽さんってウチの学校で一番の美人だし、超いいカラダしてるしさ~。そんな人で、ついでに童貞まで卒業させてもらえるなんて、俺ってば超ラッキーだよな (笑) 」
「…言いたいことはそれだけ? 用が済んだなら、さっさと出て行って」
「うっわ、ひでぇ~。ヤることだけヤって、さっさと帰るのも悪いし、ピロートークでもしてやろうかなっていう俺なりの気遣いじゃん? (笑) 」
「頼んでない」
「言うと思った (笑) まっ!でも、俺としても、こんなところで誰かに見られたら全部水の泡になっちゃうし、早々に退散するわ。んじゃ、お疲れ様~」
男はそう言って、床に置いてあった自分のカバンだけ拾い上げると、扉をぴしゃりと閉める。
「ちっ。ピロートークとか言う前に、後片付けしていけっての……」
そんな舞羽の行き場のない呟きだけが、ホコリっぽさとイカ臭さの残る室内に虚しく反響したのだった。
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