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竜殺し編
プロローグ・「星が落ちた日」
しおりを挟む終始のバケモノ――祖の星より天逆の星が砕かれる。
あまりにも無残に、あまりにも凄惨に、あまりにも――容易く壊された。幼き星はその主たる己自身と共に、〝全なる祖〟によって打ち砕かれた。
星は再生と破壊の眠りに落ちる。
辛うじて形を残した〝星〟は星海を漂い、安住の地に落ちるの願望する。
明くる日も明くる日も星は願い続ける。崩壊する体を繋ぎ止め、バラバラになる体を再構築した。少しずつ少しずつ、永久にも感じられる時の中、来る日を夢想し遊泳を続けた。
天逆の星は――
砕けた己を抱き抱え、
叶わぬ■■を求めた――――
ある日、天から星が落ちた。
幸福を願った逆望が――その星を落とす結果を導いた。
その結果に〝悪〟はない。
その末路に〝善〟はない。
根本にあるモノを考えれば、善悪の秤に掛けること自体が間違っている。その願いは決して悪ではない――が、決して善でもない。
落ちた星は空を揺らし、海を割り、地を砕いた。
飛来せし星は青い星の肌で深き眠りから目覚め、停止していた活動を再開させる。
そして最悪が――この地に新生した。
落ちた星――
地球に飛来した星。
この大地に至る過程で多大な損傷を負い一時はその存在が消滅する間際まで陥ったが、壊れた肉体と存在を驚異的な再生能力で修復し、幾度の時を経て滅び逝く肉体を活動可能な範囲まで復元させた。
元々、有していた能力や性能はその大半が失われてしまった――が、それでも尚、地球に在来する生命体の多くを上回る、圧倒的な能力を保有した怪物であることに変わりはない。
――〝星を喰らう厄災〟。
万象を食らい尽くす厄災の獣。
その星が飛来した事により、地上で命を育む生命の大半の死滅が確定する。落ちた星は地を這う生命を喰らって喰らって喰らって喰らって喰らい尽くす。
正真正銘――〝生きた災害〟。
星は在来する生命の全てを喰らい尽くさん勢いで捕食を繰り返すが、それでもその飢えは満たされることはない。荒ぶる星の獣は生命を喰らい続け、その地表を侵して行く。
自己保存の塊。他の存在全ては自己を存続させる餌に過ぎず、如何なる存在だろうと眼前に在するならば、その全てを喰らう。その捕食に意味などない、生まれたその時より、その捕食だけが其に与えられたモノだった。
そんな星害に対して地球の抑制機能、保護機能は機能しない。
地球ほどの存在を有するモノならば、例え落ちた星といえど、対処することなど造作もない。根本の規模が違うのだ、小隕石程度の星が、青い星を真に滅ぼせる筈がない。
しかしそうが故、自身の地表に群がる微生物を喰らう存在になど意思を向けない。
よって、動くのは在来生命体である。
自身の存在を脅かすモノの抹消は生命にとって当然の行いである。故に幾多の生命体が落ちた星に挑んだ、自分達の生存を懸けて――
だが――――生命体は敗北した。
いくら数が多かろうと所詮は星に巣くう一生命体、〝星〟という莫大な存在の前には無意味だ。その全てが無残に捕食されて終わる。
星に敵う存在など、現存する生命体の中ではごく僅かである。
現生する生命体は死を待つか、気まぐれを起こした地球の処理を待つのみ――しかし、地球が動くということは同時に、在来生命の終わりを意味する。
落ちた星による生命の捕食――
母なる星による地表の一掃――
どちらの結末も確定した〝死〟が訪れることになる。
生命の行先は頓挫した。
終局のカウントダウンは始まった――――
しかし――
終わりを迎えることが決まった星の上、星を喰らう厄災を超えた〝最悪〟が動いた。
――――〝星殺し〟
相対した存在全てが認める真の化け物。
〝史上最も最悪な異能殺し〟と呼ばれ、最悪の反則として恐れられている存在。
条理を歪め、不可能を殺し、一なる全を殺害。果ては――究極の一を殺した。
反則の中の反則。
そんなモノが落ちた星の前に現れたのだ。
事は刹那――
星殺しは己を喰らわんとする星を七分割、
――――容易く解体してみせた。
その場には淡く光る不気味な瞳の残影が――星はあまりにも理不尽な結末を受け、その存在をバラバラに殺された。
異様に、異常に、異質に、その場の全てを凌駕した最弱が厄災を殺した。
七度の攻撃――
初撃の一刀で命は完全に絶たれている。故に、それは既にただの肉塊だ、残りの六回はそんなモノをバラバラにしたに過ぎない。
七分割された星は、活動停止した命無き体を無理やり継ぎ接ぎする。しかし、その肉体は徐々に死滅して逝く、反則は修復する事を許さない。祖の星による損傷すら修復した修復力を越え、反則は命を絶ってみせた。死なぬ存在を殺す化け物の一撃はそれほどの異常であった。
星殺し――落ちた星、……サーズ・ワンを含め、三つの星を殺した異能殺しに付けられた異名。
星を喰らう厄災は星殺しによって殺された。
星は終える――
そう、――新たな厄災を……――
――もたらすために――――
星殺しが去った後、七つに分割された星は肉体の再構成を諦めた。七分割された肉片はそれぞれ独自の形を得て――最悪の竜と成る。
異常な生命力。
それは己を殺したモノへの復讐のためか、存在継続への渇望のためか、はたまた己の■■のためか……――理由は定かではない。
再び新生する星――
そんな星が落ちた理由。
根本の願いは単純なモノだった。ただの優しい願い――きっとそれがなければ、優しい優しい戯言に過ぎなかった。
『……、本当に馬鹿な話……――』
内を知ればなんてことのない話だ。願いを持つ者にそれを実現してしまうモノがあっただけ……ただ、それだけの話。
しかし、それは希望を絶望に変え、幸福を不幸に変える。
故――最悪の結果を生み出す。
星が……――竜が再起する時、それはきっと幸福を願う時――何も知らぬことこそ、最悪の結果を生み出す最大の要因である。
〝事〟は残酷に無知なるものによって引き起こされる。
これは――〝竜を討つ物語〟――――
天樹を宿す少年は、己の運命を乗り越えるため歩む。
その行方は逆望が決める。
生も死も、決める匙を持たぬ者――
徒人は祖を殺し、愚者は末を殺す。壊の血統は〝理〟を揺るがす。
彼が少年にもたらす結末は――
星の道を歩む少年は――――願い受け、その道を進む。
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