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レヴェント編
77.信用してるから
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「さて、冗談はこれくらいにして本題だ」
「こっちは全然冗談になってないんだど……って、本題?」
「ああ、本題だ」
地面に打たれ全身に激痛が走る中、レナのそんな言葉に疑問を浮かべる。
「アリシアが何者なのかは大体理解した、それ以上に聞きたいことは――」
「私はまだ、アリシアが終末の集落出身だとしか言っていないぞ?」
その言葉に首をかしげる。
「ロス・ヴィレッジにはいくつかの組織がある。マッドネス、王災、闇、牢などと呼ばれる様々な組織があり、人間界にも魔界にも進出しているらしい」
「……それとアリシアに何の関係がある?」
「過去――ロス・ヴィレッジには〝淵〟と呼ばれる施設が存在した」
「淵?」
「その施設は一人の人間により設立された半学校、半孤児院のような施設だ。壊乱郷の内外問わず、人間界魔界も問わず、様々な孤児、道なき者を集めていたそうだ――」
レナの話をまとめるとこうだ。
淵と呼ばれる学校? 孤児院? は、身寄りのない子供を集めて教養を学ばせていたらしい。
別にそのこと自体は至って問題ない。それどころか素晴らしい行いだ、人々が見て見ぬする問題に淵を設立した人物は目を向けたのだ。
ただ、淵と呼ばれる施設が有ったのは――壊乱郷だった。
彼女の話を聞く限り、壊乱郷はとても人が住めるような場所ではない。ましては淵は身寄りのない孤児などを集めていた施設だ。到底、そんな者達が生き延びられるとは思えない。
案の定、集められた孤児達の大半は死んでしまったらしい。
無意味だ。どう考えてもそんな場所に施設を作った意味が分からない。孤児の保護をしたければ、壊乱郷外の安全な地で行えばいい。
だが、それでも淵と呼ばれる施設は孤児を集め、施設を回し続けたそうだ。
設立者の目的は、正体は一切不明。
あまりにも情報がないため、〝魔王の手先〟や〝子供を攫って殺す死神〟などと悪い噂が立っているらしい。
現在、淵という施設は完全になくなってしまったらしいが、淵に居た者が各国で事件を引き起こすこともあるため、その施設が実在することは確かだ。
おそらく、設立者の悪い噂もこれに起因していると思われる。
とにかく謎多き施設、〝淵〟。各国では、淵の元所属者に賞金を懸けて捕まえようとしているくらいには、色々と問題行動を起こしているようだ。
「で。彼女は、アリシアが淵の出と?」
「と、聞いた」
少し自身なさげにそう答えた。
そんな様子に軽く頭を掻きながら、念のために聞いておく。
「別にアリシアが嘘を言っているとは思わないが、その話に信憑性はあったのか? って、まあ、あの腕前を見ればただ者じゃないことはわかるけどさ」
何となく、その話が事実なのを理解しつつそう聞いた。
「彼女と出会ったのは壊乱郷だ。私はアリシアと少しの間共に行動し、それなりの信頼の上で彼女の目的のために力を貸している。まあ、私自身、大して彼女の事を知っているわけではないがな……」
「仮にアリシアの話が嘘だったとしたら?」
「その時は私が馬鹿をしたで終わりだ。それ以上にあるまい」
「……そうか……そうだな。その通りだ……」
納得するようにそう呟いた。
「相手の言葉をそのまま信じるのはあまりにも浅はかで、愚鈍だ――でも、お前が信じるなら、俺も信じよう」
レナは目を見開き少し驚いたような反応を見せた。
俺は彼女が信じたアリシアを信じることにした。
それにこの選択が間違いだったとしても、俺はきっと後悔はない。友人の信じた相手だ、仮に間違いだったとしても、後悔なんてするわけない。
……第一、彼女の視野、判断能力は優れている。こちらを修正者と判断した時も、間違いだったとはいえ結果的に良判断だ。そんな彼女が信じた相手なら、信じてもいいだろう。
未だこちらを驚いた表情を向けているレナを見て、そう思った。
「こっちは全然冗談になってないんだど……って、本題?」
「ああ、本題だ」
地面に打たれ全身に激痛が走る中、レナのそんな言葉に疑問を浮かべる。
「アリシアが何者なのかは大体理解した、それ以上に聞きたいことは――」
「私はまだ、アリシアが終末の集落出身だとしか言っていないぞ?」
その言葉に首をかしげる。
「ロス・ヴィレッジにはいくつかの組織がある。マッドネス、王災、闇、牢などと呼ばれる様々な組織があり、人間界にも魔界にも進出しているらしい」
「……それとアリシアに何の関係がある?」
「過去――ロス・ヴィレッジには〝淵〟と呼ばれる施設が存在した」
「淵?」
「その施設は一人の人間により設立された半学校、半孤児院のような施設だ。壊乱郷の内外問わず、人間界魔界も問わず、様々な孤児、道なき者を集めていたそうだ――」
レナの話をまとめるとこうだ。
淵と呼ばれる学校? 孤児院? は、身寄りのない子供を集めて教養を学ばせていたらしい。
別にそのこと自体は至って問題ない。それどころか素晴らしい行いだ、人々が見て見ぬする問題に淵を設立した人物は目を向けたのだ。
ただ、淵と呼ばれる施設が有ったのは――壊乱郷だった。
彼女の話を聞く限り、壊乱郷はとても人が住めるような場所ではない。ましては淵は身寄りのない孤児などを集めていた施設だ。到底、そんな者達が生き延びられるとは思えない。
案の定、集められた孤児達の大半は死んでしまったらしい。
無意味だ。どう考えてもそんな場所に施設を作った意味が分からない。孤児の保護をしたければ、壊乱郷外の安全な地で行えばいい。
だが、それでも淵と呼ばれる施設は孤児を集め、施設を回し続けたそうだ。
設立者の目的は、正体は一切不明。
あまりにも情報がないため、〝魔王の手先〟や〝子供を攫って殺す死神〟などと悪い噂が立っているらしい。
現在、淵という施設は完全になくなってしまったらしいが、淵に居た者が各国で事件を引き起こすこともあるため、その施設が実在することは確かだ。
おそらく、設立者の悪い噂もこれに起因していると思われる。
とにかく謎多き施設、〝淵〟。各国では、淵の元所属者に賞金を懸けて捕まえようとしているくらいには、色々と問題行動を起こしているようだ。
「で。彼女は、アリシアが淵の出と?」
「と、聞いた」
少し自身なさげにそう答えた。
そんな様子に軽く頭を掻きながら、念のために聞いておく。
「別にアリシアが嘘を言っているとは思わないが、その話に信憑性はあったのか? って、まあ、あの腕前を見ればただ者じゃないことはわかるけどさ」
何となく、その話が事実なのを理解しつつそう聞いた。
「彼女と出会ったのは壊乱郷だ。私はアリシアと少しの間共に行動し、それなりの信頼の上で彼女の目的のために力を貸している。まあ、私自身、大して彼女の事を知っているわけではないがな……」
「仮にアリシアの話が嘘だったとしたら?」
「その時は私が馬鹿をしたで終わりだ。それ以上にあるまい」
「……そうか……そうだな。その通りだ……」
納得するようにそう呟いた。
「相手の言葉をそのまま信じるのはあまりにも浅はかで、愚鈍だ――でも、お前が信じるなら、俺も信じよう」
レナは目を見開き少し驚いたような反応を見せた。
俺は彼女が信じたアリシアを信じることにした。
それにこの選択が間違いだったとしても、俺はきっと後悔はない。友人の信じた相手だ、仮に間違いだったとしても、後悔なんてするわけない。
……第一、彼女の視野、判断能力は優れている。こちらを修正者と判断した時も、間違いだったとはいえ結果的に良判断だ。そんな彼女が信じた相手なら、信じてもいいだろう。
未だこちらを驚いた表情を向けているレナを見て、そう思った。
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