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レヴェント編
90.頭痛が痛い痛い
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しばらくアリシアと共に城下町を歩いていると、彼女が目指した目的地に到着した。
ここは……。
到着した場所は見覚えのある場所だった。
「ガディオの鍛冶屋?」
「ん? 来たことがあったのか?」
「ああ、まあな」
彼女の目的地は数日前、オリビアとエヴァに街案内を頼んだ時に見つけた鍛冶屋だった。
「何の様なんだ?」
「行けばわかる」
そう言って彼女は店に入って行った。
「あ、もう完全について行っていい感じ?」
もう完全に否定はなく、逆について来いというニュアンスの言葉を掛けられた。不思議な嬉しさを感じつつ、俺は彼女の後を追って店へ入って行った。
「店主。この前依頼した剣の調整は出来ているか?」
「あ? ああ、この前の嬢ちゃんか。ああ出来てるぞ」
アリシアの声にそう反応するガディオは依頼の剣を取るため、店の奥に消えた。俺は数日ぶりに訪れた鍛冶屋を見回すように見る。
相変わらず、良い品ぞろえ、いい品だ。テンション上がってきた。
店内に並べられた剣や武具を見て気分が上がり、金を持っていないことを悲しく思う。もうそろそろ、金策についても考えなくてはいけないようだ。
「……にしても人が少ないな」
「仕方ないだろう」
「あれだろ? 荒くれが悪評を流してるとか」
以前聞いた話では、この店に来たゴミみたいな客のせいで、人の出入りが少なくなったとかなんとか。まったく迷惑なことにもほどがある。
うんうんと頷き怒りを露わにしていると、彼女から思惑言葉が返ってきた。
「いや、違う」
「違う? ……ガディオなんかやったのか?」
「そういうことじゃない。その荒くれ達が数日前、路地裏で何者か惨殺されたせいで別の悪評が立ったからだ」
「路地裏で惨殺?」
「ああ」
疑問形の言葉に頷くアリシア。
路地裏、殺人事件……そういえば、最近この国で次々と荒くれ達が殺されていると、お茶の間でレナから聞いた。まさか、その被害者の中にガディオの店に悪評を付けた男達が含まれていたとは。
「なるほどな。確かに殺人事件と関係があるかもしれない店には立ち入りたくない、か」
「人にも依るがな」
「アリシアはいいのか?」
「興味ないからな」
「わお、ベリベリドライ」
ふざけた感じでそういうと、彼女は呆れたような眼差しをぶつけてきた。
「それにしても。殺人事件って魔王関係以外でも、この世界は色々と物騒だな」
「なに、魔王はあくまで魔界の一端を支配していた存在だ。この世界にはまだまだ物騒なモノなど山ほどあるさ」
「うげ、なんか気持ち悪くなってきたわ」
嫌な話を聞いて吐き気を催すかのようにそう言った。
「酷いなお前。世界虐待だぞ」
「なんだ、その世界虐待って。聞いたことねぇよ」
「さあな。私も知らない」
「ミーが言ったんだよ?」
唐突なギャグを放り込んでくるアリシアに思わずツッコミをしてしまう。すごいな、こんなキャラだとは思ってなかったぜ。
と、そんなことを思いながら彼女を見る。
路地裏での殺人事件、ね。全く以て物騒だ……。あれ?
ふと、あることに気づく。
「……アリシア。一つ聞きたいことがあるんだけどいいか?」
恐る恐るそう尋ねる。
「ん?」
「この店に現れた荒くれ者てどんな奴なんだ?」
「……詳しくは知らないが、確かレッド・ゲイルと呼ばれる盗賊団の下部組織だったと聞いている」
「そ、そうか……」
その話を聞いて一気に顔から血の気が引いた。
「どうした。顔色が悪いぞ」
「いや、なんでもない」
「?」
俺は彼女から目を逸らし、とても申し訳ない気持ちでいっぱいになった。と、丁度、店の奥に消えたガディオが戻ってきた。
「嬢ちゃん。完璧に仕上げたぞ、って、ケイヤじゃねぇか。どうしたんだ?」
店の奥から現れたガディオは俺の姿を確認するなりそう声を上げた。
「ああ、俺はアリシアの付き添い……ってわけでもないか。勝手についてきただけの人だ」
「なんだそりゃ。まさか、ストーカーって奴か?」
「違う、と言いたいとこだが、行動はストーカーそのものだからな。ん~、完全否定はできないな」
「一様、私は隣歩くこと許可しているからストーカーではないだろ」
「そうか。というわけで付き添いできた」
アリシアからそうフォローを受けたので、俺は大手を振って言った。
「ああ、それと……すまん」
そういい俺は軽く頭を下げる。
「ん? 何かあったのか?」
「あー、そうだな。謝りたいことが二つあるな」
改まってそういい、俺はエア・ボックスから刀身の砕けたショートソードを取り出し謝罪する。
「すまん。数日前に買ったばかりだが、粉々にした」
「こりゃまたすげぇ有様だな」
「面目ない」
「いや、購入した以上、この剣はお前さんのもんだ。どんな姿になったって、儂は言わねぇさ。それに、この剣はしっかりと役目を果たしたようだしな」
ほぼ柄だけになったショートソードをそっと触れてそう言った。
「にしてもこれは派手に壊したな。こんな損傷初めて見たぞ。相当固いものにぶつけたか……いや、だが少し刀身が溶けているようだし。溶岩にでもぶつけたか? ここらの地域に火山はない筈が」
手に持った剣の細部を見ながらそう言う、俺は視線を逸らしながら頬を掻きその問いに答える。
「あー。内訳は特に説明しないが……魔剣に叩きつけて壊した」
「……お前さん、なにやっとるんだ?」
理解できないという風に呆れた声でそう問い掛けられた。
「想定外の事があって――想定外の事に使った」
「「…………」」
「君達? その〝なに言ってんだコイツ〟的な目線を向けるんじゃない」
アリシアとガディオから死ぬほど呆れたような目を向けられ、説教するような口調でそう言った。しかし、改善されるどころか、アリシアからは若干蔑むような目で見られた。
俺にその手の趣味はない! というか、俺はMじゃない!
心の中でそう叫ぶも、彼女には全然伝わらなかった……当たり前か。
「で、二つ目ってのは?」
「あー、二つ目は……とりあえず、何も言わずにこの謝罪を受け取ってくれ」
「?」
頭を深々と下げる。
「はい、終了終了。アリシアの用事を済ませてくれ。あと、今の謝罪の内訳は聞かないでくれ」
「お、おう?」
マジで理解できないという感じにそう返事を受けた。
ここは……。
到着した場所は見覚えのある場所だった。
「ガディオの鍛冶屋?」
「ん? 来たことがあったのか?」
「ああ、まあな」
彼女の目的地は数日前、オリビアとエヴァに街案内を頼んだ時に見つけた鍛冶屋だった。
「何の様なんだ?」
「行けばわかる」
そう言って彼女は店に入って行った。
「あ、もう完全について行っていい感じ?」
もう完全に否定はなく、逆について来いというニュアンスの言葉を掛けられた。不思議な嬉しさを感じつつ、俺は彼女の後を追って店へ入って行った。
「店主。この前依頼した剣の調整は出来ているか?」
「あ? ああ、この前の嬢ちゃんか。ああ出来てるぞ」
アリシアの声にそう反応するガディオは依頼の剣を取るため、店の奥に消えた。俺は数日ぶりに訪れた鍛冶屋を見回すように見る。
相変わらず、良い品ぞろえ、いい品だ。テンション上がってきた。
店内に並べられた剣や武具を見て気分が上がり、金を持っていないことを悲しく思う。もうそろそろ、金策についても考えなくてはいけないようだ。
「……にしても人が少ないな」
「仕方ないだろう」
「あれだろ? 荒くれが悪評を流してるとか」
以前聞いた話では、この店に来たゴミみたいな客のせいで、人の出入りが少なくなったとかなんとか。まったく迷惑なことにもほどがある。
うんうんと頷き怒りを露わにしていると、彼女から思惑言葉が返ってきた。
「いや、違う」
「違う? ……ガディオなんかやったのか?」
「そういうことじゃない。その荒くれ達が数日前、路地裏で何者か惨殺されたせいで別の悪評が立ったからだ」
「路地裏で惨殺?」
「ああ」
疑問形の言葉に頷くアリシア。
路地裏、殺人事件……そういえば、最近この国で次々と荒くれ達が殺されていると、お茶の間でレナから聞いた。まさか、その被害者の中にガディオの店に悪評を付けた男達が含まれていたとは。
「なるほどな。確かに殺人事件と関係があるかもしれない店には立ち入りたくない、か」
「人にも依るがな」
「アリシアはいいのか?」
「興味ないからな」
「わお、ベリベリドライ」
ふざけた感じでそういうと、彼女は呆れたような眼差しをぶつけてきた。
「それにしても。殺人事件って魔王関係以外でも、この世界は色々と物騒だな」
「なに、魔王はあくまで魔界の一端を支配していた存在だ。この世界にはまだまだ物騒なモノなど山ほどあるさ」
「うげ、なんか気持ち悪くなってきたわ」
嫌な話を聞いて吐き気を催すかのようにそう言った。
「酷いなお前。世界虐待だぞ」
「なんだ、その世界虐待って。聞いたことねぇよ」
「さあな。私も知らない」
「ミーが言ったんだよ?」
唐突なギャグを放り込んでくるアリシアに思わずツッコミをしてしまう。すごいな、こんなキャラだとは思ってなかったぜ。
と、そんなことを思いながら彼女を見る。
路地裏での殺人事件、ね。全く以て物騒だ……。あれ?
ふと、あることに気づく。
「……アリシア。一つ聞きたいことがあるんだけどいいか?」
恐る恐るそう尋ねる。
「ん?」
「この店に現れた荒くれ者てどんな奴なんだ?」
「……詳しくは知らないが、確かレッド・ゲイルと呼ばれる盗賊団の下部組織だったと聞いている」
「そ、そうか……」
その話を聞いて一気に顔から血の気が引いた。
「どうした。顔色が悪いぞ」
「いや、なんでもない」
「?」
俺は彼女から目を逸らし、とても申し訳ない気持ちでいっぱいになった。と、丁度、店の奥に消えたガディオが戻ってきた。
「嬢ちゃん。完璧に仕上げたぞ、って、ケイヤじゃねぇか。どうしたんだ?」
店の奥から現れたガディオは俺の姿を確認するなりそう声を上げた。
「ああ、俺はアリシアの付き添い……ってわけでもないか。勝手についてきただけの人だ」
「なんだそりゃ。まさか、ストーカーって奴か?」
「違う、と言いたいとこだが、行動はストーカーそのものだからな。ん~、完全否定はできないな」
「一様、私は隣歩くこと許可しているからストーカーではないだろ」
「そうか。というわけで付き添いできた」
アリシアからそうフォローを受けたので、俺は大手を振って言った。
「ああ、それと……すまん」
そういい俺は軽く頭を下げる。
「ん? 何かあったのか?」
「あー、そうだな。謝りたいことが二つあるな」
改まってそういい、俺はエア・ボックスから刀身の砕けたショートソードを取り出し謝罪する。
「すまん。数日前に買ったばかりだが、粉々にした」
「こりゃまたすげぇ有様だな」
「面目ない」
「いや、購入した以上、この剣はお前さんのもんだ。どんな姿になったって、儂は言わねぇさ。それに、この剣はしっかりと役目を果たしたようだしな」
ほぼ柄だけになったショートソードをそっと触れてそう言った。
「にしてもこれは派手に壊したな。こんな損傷初めて見たぞ。相当固いものにぶつけたか……いや、だが少し刀身が溶けているようだし。溶岩にでもぶつけたか? ここらの地域に火山はない筈が」
手に持った剣の細部を見ながらそう言う、俺は視線を逸らしながら頬を掻きその問いに答える。
「あー。内訳は特に説明しないが……魔剣に叩きつけて壊した」
「……お前さん、なにやっとるんだ?」
理解できないという風に呆れた声でそう問い掛けられた。
「想定外の事があって――想定外の事に使った」
「「…………」」
「君達? その〝なに言ってんだコイツ〟的な目線を向けるんじゃない」
アリシアとガディオから死ぬほど呆れたような目を向けられ、説教するような口調でそう言った。しかし、改善されるどころか、アリシアからは若干蔑むような目で見られた。
俺にその手の趣味はない! というか、俺はMじゃない!
心の中でそう叫ぶも、彼女には全然伝わらなかった……当たり前か。
「で、二つ目ってのは?」
「あー、二つ目は……とりあえず、何も言わずにこの謝罪を受け取ってくれ」
「?」
頭を深々と下げる。
「はい、終了終了。アリシアの用事を済ませてくれ。あと、今の謝罪の内訳は聞かないでくれ」
「お、おう?」
マジで理解できないという感じにそう返事を受けた。
応援ありがとうございます!
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