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レヴェント編・真紅の血鬼《クリムゾン・ブラッド》
42.軽い頭、重い心
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アリシアと共に冒険者ギルドへ戻ると、なにやらギルドの中がガヤガヤと騒がしい。
俺達は不思議に思い、人混みを抜けてその中心へ向かった。
「えー……お前ら何やらかした?」
「っ――! け、ケイヤ」
そう驚いたような反応を見せるアルに、ため息を零しながら問い掛ける。
「この感じ、お前らってよりは詩織か」
視線を向けた先に、ブイ! と二本指を突き立てる詩織がいる。その姿を見てひどく頭が痛くなった。
「うぅっ、うぁ゙……」
「ラークスさん、大丈夫ですか?」
項垂れる男の声と、全然心配していなさそうな声でそういう女の声が聞こえる。
あれ? この声どこかで……。
どこかで聞き覚えのある声に首を傾げつつ、中央の人物達に視線を向ける。
中央には木製の担架で運ばれた男といかにも魔法使いの女性が一人、ガタイの良い戦士が一人、そしてギルドマスターでエルフのメイビスとその護衛であるナガルがいた。
あ……あの三人、試験官やってた人か。
数週間前の記憶から該当者を当てる。確かラークス・ディノスさん、ラーナさん、ファデイオ・レべリオンさんだったかな? まさか今回の試験官も彼らが担当していたとは。
俺は頭を掻きながら中心部の人物達の元へ向かった。
「メイビス」
「あ、アマ――ケイヤさん」
本名を言い掛け止める。
「派手にやられたなその人」
「あー、そうですね。命に別状はないんですが、内蔵がグッチャリ潰れてて……治癒魔法を掛けても、しばらくは動くことはできないと思います」
口頭説明+目視による状況分析を終え、呆れたような表情で再度詩織を見る。
一体あの子は何やったんだ。
殺してないのはよかったが、かと言って試験官をここまでボコボコにするのはどうかと思う。
と、そんなことを考えながらラークスさんに視線を戻すと、メイビスがなにやらジト目で視線を逸らして言った。
「まあ……似た症状でより酷い状態で、すぐに動き出した人の前でいうのもなんですけどね」
「言わんでいいわ」
「あたっ!」
俺は右拳で軽く彼女の頭を叩いた。
「コホン、ケイヤ殿。このような場では態度を改めた方がよろしいのでは?」
「ん? ああ、そうだな。悪い悪い」
主を打たれた事にイラついたのか、単に忠告してくれたのか、ラフな会話をする俺に対してナガルがそう言葉を掛けてきた。
「メイビス様もです。時と場所を考えてください」
「私もですか!?」
「はい」
ナガルの注意に黄緑色の瞳を大きく開いて驚くメイビス。
「……おい、アンタ。聞こえるか?」
「う、うぅっ……」
「判断に困る反応だな。まあいい……うちのが悪かったな、俺からも謝罪する。――すまない」
『!?』
頭を下げる俺を見て、周囲の知人と謝罪を受けている本人が驚いた反応を見せる。周囲の者達は無関係の俺が頭を下げたという事実に大層驚いているようだ。
というか、この反応的にラークスさん、ちゃんと聞こえてるのか。
「……き、君は、なにも、悪くない」
横になるラークスさんは苦しそうに表情を歪め、掠れた声ながらも声を発する。
「そもそも、彼女も、何も悪くは、ない。俺は試験官で、彼女は受験者、全力を出すのは、当たり前だ。その結果で、負傷したのは、すべて俺が悪い」
「あー、まあ、それはそうなんだけどさ……」
俺は頭を掻いて言った。
「例え、当事者であるアンタと詩織が気にしていない、って言ったとしても……俺個人としては、詩織がやってしまったことは〝悪い事〟だと、そう思ったんだ。悪いことをしたら謝罪をする、ただそれだけの話だ」
「っ――、……でも、君は、関係ない、じゃない、か」
「そうだな――でも、アイツは俺の大切な友達なんだ、友達が悪いことをしたから頭を下げた。これは俺がしたいと思っただけ、別にしようがしまいがどっちでもいいだろ?」
「――――」
「なら、俺はアイツのためにも頭を下げる」
迷いなくそう告げる。
これは本心だ。こんな軽い頭では――何の意味もないかもしれない。でも、だからこそ、これは俺自身が納得するかどうかの話だ。
謝罪は世間体を守るためのものじゃない。謝罪は誠意を見せるもの、本心でやるからこそ意味がある。
「まあ、極論――〝俺が悪いと思ったから頭を下げた〟、これだけの話だ。アンタも詩織も、気にしなくていい。これは俺が勝手にやったこと、気にする意味なんてない」
「…………ハハ、これは――器が違うな」
数泊の間を開けた後、どこか満足そうな表情を浮かべて言った。
「ごめんなさい」
「!」
「詩織……」
不意に背後から現れた詩織がラークスさんに対して頭を下げた。そんな彼女の様子を見て、声を掛けようとするラークスさん。
しかし、そんな彼の言葉より早く詩織は言った。
「今のは敬也と同じ理由。私も悪いことをしたと思ったから、謝った……それだけ」
「……そうか。ならこっち、からも――すまない。こんな、奴が、試験官だった、ばっかりに、変に、罪悪感を持たせてしまった。理解している、と思うが、君は何も悪くない」
「うん、わかってる。私は何も悪くない」
堂々と一寸の動揺なく詩織は言い放った。
「し、詩織さん? そんなにハッキリ言うことないじゃないですか? ここは嘘でも――いや、私も悪かった。って感じのセリフを言うべきじゃない?」
「敬也が当事者だったら、同じこと言ったと思うけど?」
「…………」
詩織の言葉に否定できない俺は、視線を逸らして押し黙ってしまった。その後、ラークスさんは木製担架に乗せて、治療室ことギルドマスター室へ連れて行かれた。
ラーナさんとファデイオさんは俺達に軽く頭を下げ、ラークスさんの元へ向かった。
「いや~、それにしても金級でもかなりの実力者で知られるラークスさんに圧勝とは……とってもいいですね、シオリちゃん。シュナさん、カミヅカ君に続いて有望株ですよ」
俺のすぐ真横で嬉しそうな声を上げるギルド職員が一人、俺は呆れたような表情でその人物を見る。
「……レニさん。あなたは毎回どこから生えてくるんですか?」
「ヒドイです、カミヅカ君。私、ずっとここにいましたよ?」
声を聞くまでその存在を一切認識できないほどの圧倒的な隠密能力。その分野だけで言えば、俺やアリシア、シュナを超えている。
一体何者だよ、この人……。
疑うような視線を向けつつ、言葉を掛ける。
「ところでレニさん」
「はい?」
「こんな感じになっちゃいましたけど、詩織は合格できたんですか?」
そう問いかけると、彼女は何か思い出したように受付のカウンターに一度戻り、何かを取ってきて戻って来た。
レニさんは笑みを浮かべて詩織の前に立った。
「遅れまして、カザキリ・シオリ様。無事冒険者登録が完了致しました。どうぞ」
「ん、ありがと」
そう言って詩織はレニさんから冒険者カードを受け取った。
「頑張ったな、詩織」
無表情で冒険者カードを見る詩織の頭に手を置いて軽く撫でる。
「うん」
頭を撫でると嬉しそうにそう頷いた。
こうして見ると、とてもコイツがラークスさんをボコボコにしたように見えない。パッと見では年頃の少女――でも彼女は異世界から来た勇者様だ。その力は、俺なんかとは比べものにならないほど強く、大きな使命を背負っている。
ま、俺も一様勇者なんだけどね。
能力を持たない称号だけの勇者とは何とも悲しいが、それが俺なのだと変な所で再認識した。
「ねえ、カミヅカ君」
「?」
詩織の頭を撫でていると不意にエヴァから声を掛けられた。
「いやね、一つ聞きたいんだけど……いい?」
「事による」
「そう。じゃあ、聞くけど、カミヅカ君はどうして――レナ様やメイビス様と親しげなの?」
「――――」
おうっ、すげぇピンポイントで聞かれたくない所ついて来たな。
思わず押し黙ってしまうほどの質問、アルとアリシアの視線が鋭くなったのを感じた。
「おかしくない? カミヅカ君達はこっちに来てからそんなに経ってないのに、なんでカミヅカ君は既に友達みたいな関係してるの? 他の人達に比べてカミヅカ君に接する時のレナ様は、態度が少し軽い気がするんだけど?」
「お前、能天気に見えて結構見てるんだな」
「能天気ってひどくない?」
ま、確かにコイツは元々観察眼自体は悪くないもんな。視線の動きで俺がそれなりにできるって判断した時点で、目が良い事は明白、か。
「そうだな、俺はそれなりに二人とは仲がいい――というのも、俺は魔力無し(ほぼ)だろ?」
「うん」
「レナによるとな、魔力の無い体質ってのが珍しいんだとさ。だから、検査と研究のためにちょくちょく呼び出されて、それなりに会話する機会に恵まれてたんだ。メイビスはその手伝いで来たところで、話をして仲良くなった」
「ああ~、なるほどね」
納得したような表情を見せるエヴァ。こちらの話を聞いていたアリシアとアルも、どこか不満げな表情を浮かべつつも、理解したという表情をしていた。
「ま、仲良くなったといっても軽口を叩ける間柄、ってだけでそれ以上は何もないけどな」
「いや、それでもとってもすごいことだよ!? 国内外で名を轟かせた二人と友達なんて……」
「そう? 俺まだこの国から出たことないから、よくわからん。ま、よく名前は聞くけどな」
「ん~、なんだか、カミヅカ君の反応はありがたみを感じない」
「ありがたみなんて感じてないからな」
冗談っぽく言葉を返すと、若干のドン引きを見せるエヴァ。
まあ、彼女の言う通り、レナとメイビスは歴史の偉人のような人物達。そんなのと友人でありながら、ありがたみを感じないというのは、彼女らからすれば、頭がおかしいのを疑ってしまうほどなんだろう。
うん、あんなのが偉人とか、この世界終わってんな。
二人を思い浮かべながらそう思ったが、よく考えれば偉人であっても人、どんなに輝かしい歴史を築いた者であろうと、その当時がどんな者かはわかりようがない。
案外、偉人なんて変人奇人だらけだったりするのかもな……――
俺はそんなくだらない発見に、苦笑した。
俺達は不思議に思い、人混みを抜けてその中心へ向かった。
「えー……お前ら何やらかした?」
「っ――! け、ケイヤ」
そう驚いたような反応を見せるアルに、ため息を零しながら問い掛ける。
「この感じ、お前らってよりは詩織か」
視線を向けた先に、ブイ! と二本指を突き立てる詩織がいる。その姿を見てひどく頭が痛くなった。
「うぅっ、うぁ゙……」
「ラークスさん、大丈夫ですか?」
項垂れる男の声と、全然心配していなさそうな声でそういう女の声が聞こえる。
あれ? この声どこかで……。
どこかで聞き覚えのある声に首を傾げつつ、中央の人物達に視線を向ける。
中央には木製の担架で運ばれた男といかにも魔法使いの女性が一人、ガタイの良い戦士が一人、そしてギルドマスターでエルフのメイビスとその護衛であるナガルがいた。
あ……あの三人、試験官やってた人か。
数週間前の記憶から該当者を当てる。確かラークス・ディノスさん、ラーナさん、ファデイオ・レべリオンさんだったかな? まさか今回の試験官も彼らが担当していたとは。
俺は頭を掻きながら中心部の人物達の元へ向かった。
「メイビス」
「あ、アマ――ケイヤさん」
本名を言い掛け止める。
「派手にやられたなその人」
「あー、そうですね。命に別状はないんですが、内蔵がグッチャリ潰れてて……治癒魔法を掛けても、しばらくは動くことはできないと思います」
口頭説明+目視による状況分析を終え、呆れたような表情で再度詩織を見る。
一体あの子は何やったんだ。
殺してないのはよかったが、かと言って試験官をここまでボコボコにするのはどうかと思う。
と、そんなことを考えながらラークスさんに視線を戻すと、メイビスがなにやらジト目で視線を逸らして言った。
「まあ……似た症状でより酷い状態で、すぐに動き出した人の前でいうのもなんですけどね」
「言わんでいいわ」
「あたっ!」
俺は右拳で軽く彼女の頭を叩いた。
「コホン、ケイヤ殿。このような場では態度を改めた方がよろしいのでは?」
「ん? ああ、そうだな。悪い悪い」
主を打たれた事にイラついたのか、単に忠告してくれたのか、ラフな会話をする俺に対してナガルがそう言葉を掛けてきた。
「メイビス様もです。時と場所を考えてください」
「私もですか!?」
「はい」
ナガルの注意に黄緑色の瞳を大きく開いて驚くメイビス。
「……おい、アンタ。聞こえるか?」
「う、うぅっ……」
「判断に困る反応だな。まあいい……うちのが悪かったな、俺からも謝罪する。――すまない」
『!?』
頭を下げる俺を見て、周囲の知人と謝罪を受けている本人が驚いた反応を見せる。周囲の者達は無関係の俺が頭を下げたという事実に大層驚いているようだ。
というか、この反応的にラークスさん、ちゃんと聞こえてるのか。
「……き、君は、なにも、悪くない」
横になるラークスさんは苦しそうに表情を歪め、掠れた声ながらも声を発する。
「そもそも、彼女も、何も悪くは、ない。俺は試験官で、彼女は受験者、全力を出すのは、当たり前だ。その結果で、負傷したのは、すべて俺が悪い」
「あー、まあ、それはそうなんだけどさ……」
俺は頭を掻いて言った。
「例え、当事者であるアンタと詩織が気にしていない、って言ったとしても……俺個人としては、詩織がやってしまったことは〝悪い事〟だと、そう思ったんだ。悪いことをしたら謝罪をする、ただそれだけの話だ」
「っ――、……でも、君は、関係ない、じゃない、か」
「そうだな――でも、アイツは俺の大切な友達なんだ、友達が悪いことをしたから頭を下げた。これは俺がしたいと思っただけ、別にしようがしまいがどっちでもいいだろ?」
「――――」
「なら、俺はアイツのためにも頭を下げる」
迷いなくそう告げる。
これは本心だ。こんな軽い頭では――何の意味もないかもしれない。でも、だからこそ、これは俺自身が納得するかどうかの話だ。
謝罪は世間体を守るためのものじゃない。謝罪は誠意を見せるもの、本心でやるからこそ意味がある。
「まあ、極論――〝俺が悪いと思ったから頭を下げた〟、これだけの話だ。アンタも詩織も、気にしなくていい。これは俺が勝手にやったこと、気にする意味なんてない」
「…………ハハ、これは――器が違うな」
数泊の間を開けた後、どこか満足そうな表情を浮かべて言った。
「ごめんなさい」
「!」
「詩織……」
不意に背後から現れた詩織がラークスさんに対して頭を下げた。そんな彼女の様子を見て、声を掛けようとするラークスさん。
しかし、そんな彼の言葉より早く詩織は言った。
「今のは敬也と同じ理由。私も悪いことをしたと思ったから、謝った……それだけ」
「……そうか。ならこっち、からも――すまない。こんな、奴が、試験官だった、ばっかりに、変に、罪悪感を持たせてしまった。理解している、と思うが、君は何も悪くない」
「うん、わかってる。私は何も悪くない」
堂々と一寸の動揺なく詩織は言い放った。
「し、詩織さん? そんなにハッキリ言うことないじゃないですか? ここは嘘でも――いや、私も悪かった。って感じのセリフを言うべきじゃない?」
「敬也が当事者だったら、同じこと言ったと思うけど?」
「…………」
詩織の言葉に否定できない俺は、視線を逸らして押し黙ってしまった。その後、ラークスさんは木製担架に乗せて、治療室ことギルドマスター室へ連れて行かれた。
ラーナさんとファデイオさんは俺達に軽く頭を下げ、ラークスさんの元へ向かった。
「いや~、それにしても金級でもかなりの実力者で知られるラークスさんに圧勝とは……とってもいいですね、シオリちゃん。シュナさん、カミヅカ君に続いて有望株ですよ」
俺のすぐ真横で嬉しそうな声を上げるギルド職員が一人、俺は呆れたような表情でその人物を見る。
「……レニさん。あなたは毎回どこから生えてくるんですか?」
「ヒドイです、カミヅカ君。私、ずっとここにいましたよ?」
声を聞くまでその存在を一切認識できないほどの圧倒的な隠密能力。その分野だけで言えば、俺やアリシア、シュナを超えている。
一体何者だよ、この人……。
疑うような視線を向けつつ、言葉を掛ける。
「ところでレニさん」
「はい?」
「こんな感じになっちゃいましたけど、詩織は合格できたんですか?」
そう問いかけると、彼女は何か思い出したように受付のカウンターに一度戻り、何かを取ってきて戻って来た。
レニさんは笑みを浮かべて詩織の前に立った。
「遅れまして、カザキリ・シオリ様。無事冒険者登録が完了致しました。どうぞ」
「ん、ありがと」
そう言って詩織はレニさんから冒険者カードを受け取った。
「頑張ったな、詩織」
無表情で冒険者カードを見る詩織の頭に手を置いて軽く撫でる。
「うん」
頭を撫でると嬉しそうにそう頷いた。
こうして見ると、とてもコイツがラークスさんをボコボコにしたように見えない。パッと見では年頃の少女――でも彼女は異世界から来た勇者様だ。その力は、俺なんかとは比べものにならないほど強く、大きな使命を背負っている。
ま、俺も一様勇者なんだけどね。
能力を持たない称号だけの勇者とは何とも悲しいが、それが俺なのだと変な所で再認識した。
「ねえ、カミヅカ君」
「?」
詩織の頭を撫でていると不意にエヴァから声を掛けられた。
「いやね、一つ聞きたいんだけど……いい?」
「事による」
「そう。じゃあ、聞くけど、カミヅカ君はどうして――レナ様やメイビス様と親しげなの?」
「――――」
おうっ、すげぇピンポイントで聞かれたくない所ついて来たな。
思わず押し黙ってしまうほどの質問、アルとアリシアの視線が鋭くなったのを感じた。
「おかしくない? カミヅカ君達はこっちに来てからそんなに経ってないのに、なんでカミヅカ君は既に友達みたいな関係してるの? 他の人達に比べてカミヅカ君に接する時のレナ様は、態度が少し軽い気がするんだけど?」
「お前、能天気に見えて結構見てるんだな」
「能天気ってひどくない?」
ま、確かにコイツは元々観察眼自体は悪くないもんな。視線の動きで俺がそれなりにできるって判断した時点で、目が良い事は明白、か。
「そうだな、俺はそれなりに二人とは仲がいい――というのも、俺は魔力無し(ほぼ)だろ?」
「うん」
「レナによるとな、魔力の無い体質ってのが珍しいんだとさ。だから、検査と研究のためにちょくちょく呼び出されて、それなりに会話する機会に恵まれてたんだ。メイビスはその手伝いで来たところで、話をして仲良くなった」
「ああ~、なるほどね」
納得したような表情を見せるエヴァ。こちらの話を聞いていたアリシアとアルも、どこか不満げな表情を浮かべつつも、理解したという表情をしていた。
「ま、仲良くなったといっても軽口を叩ける間柄、ってだけでそれ以上は何もないけどな」
「いや、それでもとってもすごいことだよ!? 国内外で名を轟かせた二人と友達なんて……」
「そう? 俺まだこの国から出たことないから、よくわからん。ま、よく名前は聞くけどな」
「ん~、なんだか、カミヅカ君の反応はありがたみを感じない」
「ありがたみなんて感じてないからな」
冗談っぽく言葉を返すと、若干のドン引きを見せるエヴァ。
まあ、彼女の言う通り、レナとメイビスは歴史の偉人のような人物達。そんなのと友人でありながら、ありがたみを感じないというのは、彼女らからすれば、頭がおかしいのを疑ってしまうほどなんだろう。
うん、あんなのが偉人とか、この世界終わってんな。
二人を思い浮かべながらそう思ったが、よく考えれば偉人であっても人、どんなに輝かしい歴史を築いた者であろうと、その当時がどんな者かはわかりようがない。
案外、偉人なんて変人奇人だらけだったりするのかもな……――
俺はそんなくだらない発見に、苦笑した。
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