星架の望み(ステラデイズ)

零元天魔

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竜殺し編

プロローグ

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 ある日、天から星が落ちた。
 幸福を願う、逆望さかぼうの願いが星を落としたのだ。
 落ちた星は地を深く抉り、地面を砕くように落下した。

 そして――最悪が地に着いた。

 落ちた星サーズ・ワン――地球に落ちるまでに多大な損傷はあったが、存在規模は未だに地球に存在する幾多の生命を上回るものである。存在していることが異常、そういった存在なのだ。
 飛来した時点で地球上に存命する大半の生命体は死滅が確定した。
 星は生命体を喰らい、その存在を補完する。喰らって喰らって喰らって喰らう、在来生命体全てを喰らい尽くさんばかりの飢え、止まることはない。
 自己補完の塊、他の存在全ては自己を存続させるモノに過ぎず、如何なる存在だろうと自分より低級であれば全て喰らう。
 地球の抑制機能、保護機能は機能しない。
 地球という星の存在規模を宿す存在であれば、対処は不可能ではないのにも関わらず、地球は動かない。しかし、そもそもとして、星というモノは自立可動する存在ではない。故に今の段階で動くことはない。
 そして、それより先に動くのは生命体である。
 自身の命を脅かす存在を抹消。幾多の生命体が星に挑んだ、しかし、全てが無残に捕食されて終わった。星に敵う生命体など、現存する生命ではごく僅か、星の飛来に反応できた存在すら少ないのだ、束になろうと敵うはずがない。
 現生の生命体は自身の死か、地球が動くのを待つしかないという状況となった。

 しかし、そんな中――〝星砕き〟が動いた。

 〝星砕き〟、〝異能殺し〟、最悪の反則と呼ばれる存在、相対した存在全てが認める真の化け物。
 条理を歪め、不可能を壊し、究極の一を殺したことがある存在。反則の中の反則。
 それは、星の前に立ったのだ。
 一瞬のできごとだ、星は容易く七分割、解体された。その場には淡く光る不気味な瞳だけ、反則はただ無情に星を殺した。
 異様に、異常に、その場は全てを凌駕した最弱が制した。
 ただの一刀で存在の活動は停止した、残りの六撃は死体撃ちにもほどがある。
 七分割された星は、動かぬ体を無理やり継ぎ接ぎするも、次第に壊れて逝く。反則は修復させることを許さない、絶対に死なぬ存在を殺す化け物の一撃はそれほどの異常であった。

 星は終える――そう、新たな厄災をもたらすために――

 星砕きが去った後、七つに分割された星は、各々が最悪の竜へと成り、再び世界を喰らわんと己を燃やした。
 それは復讐の焔か、継続への渇望か……理由は定かではない。

 自身の欠片を求めて彷徨う星――

 そんな星が落ちた理由、逆望の願いはきっともっと単純なモノだった。ただの優しい願い、きっとがなければ、優しい優しい戯言に過ぎなかった。

 『本当に馬鹿な話――』

 内をすればなんてことのない話。ただ願いを持つ者にそれを実現してしまう逆望の力があった、それだけの話なのだ。
 しかし、その願いは希望を絶望に変える、最悪の結果を生むことになるのだろう。
 星が、竜が再起する時、それはきっと逆望の願いがされる時――何も知らぬことこそ、最悪の結果を生む最大の要因である。
 〝事〟は残酷、残虐に、何も理解できずに起こる――




 ―――これは竜を討つ物語―――


 天樹を宿す少年はただ、己の運命に従うのみ――果てはきっと、逆望の願いが決めるのだろう。
 生も死も、決める賽を持たぬ者。少年はただ前に進み事しか出来ない――
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