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異世界驚嘆中
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大バ○さま……もとい、年老いた獣人女性の瞳がひたと俺に向けられる。
その目は白く濁っていて焦点は結ばれず、目が見えていないだろう事は一目瞭然だった。
「彼女の足は既に動きません。座ったままでお目通りいたしますこと、お許しください」
何故か王太后さまが俺に謝ってくる。
「あ、いや、そんな――――」
許すとかそんな立場じゃないですと言おうとした俺の前で、王太后さまが跪く。
そのまま人と獣人、2人の老婦人が深々と頭を下げた。
「あなた様のおこしをお待ちしておりました――――救世主さま」
「はっ?!」
まさかの誤解が、こんなところまで!
ティツァ、お前否定してくれたんじゃなかったのかっ!!
俺はワタワタと両手を振りまわす。
「ち、違います! 俺は救世主なんてもんじゃありません」
なのに二人の老婦人は頭を上げようともしない。
「本当に違いますから! 俺はただの一般人なんです」
泣きたくなってくる。
よく見てくれよ!
俺のどこに救世主なんて威厳があるっていうんだ?
「か、顔を上げてくださいっ!」
俺の懇願にようやく二人は顔を上げた。
「俺は救世主ではありません」
繰り返す主張にも、王太后さまは静かに首を左右に振る。
「ユウさま。あなたは我らの救世主です」
どうして、そんな誤解をしているんだぁ~!
「俺はただの人間です。なんの力も持っていないんです。世界を救うなんてムリです!」
「世界を救えるのは力の有る者だけとは限りません。英雄や勇者と呼ばれる者も元をただせばごく普通の男や女達でした」
それはそうかもしれないけれど、でも、ともかく、俺はそんな奴じゃない。
俺は情けなくも、フルフルと首を横に振りながら後退った。
「――――運命からは逃げられぬ」
突然大バ○さまじゃなくて、獣人のおばあちゃん(いいよな、もうこの呼び方で)が、声を発する。
見かけに相応しいガラガラ声だ。
逃げられぬって、そんな呪いみたいな宣言止めてくれ!
ビクッと震えた俺を、見えぬ瞳が射抜く。
「救世主さま。あなたは好むと好まざるとにかかわらず、この世界を救う。それが『神』のご意志じゃ」
この世界の『神』は、無形無象の実体のないものじゃなかったのか?
そんなものに意志があるなんて反則だろう。
「ムリ、ムリ、絶対ムリです」
「彼女の予言が外れたことはありません」
全力で拒否っているのに、王太后さまが止めを刺そうとしてくる。
なおも否定しようとした俺は、ある事に気づいて「え?」と固まった。
「……言葉が通じている?」
俺は異世界トリップチートで人間の言葉も獣人の言葉もわかる。
だが人間と獣人は互いに言葉が通じず、簡単な単語程度しかわからぬはずだった。
何より人間は獣人が言語を操ると思っていない。
それがこの世界の常識のはずだ。
でも、今の王太后さまの言葉は、どこからどう聞いても獣人のおばあちゃんの言葉を理解しているように聞こえた。
「言葉がわかるんですか?」
俺の問いに、王太后さまもおばあちゃんも両方が頷く。
「我らは、人と獣人それぞれの種族の巫女です。我らには『神の賜いし御力』がありますから」
それでかと納得すると同時に、俺の中にモヤモヤとした感情が生まれた。
という事は――――
「王太后さまは、獣人が人間と変わらぬ知恵と知識、文化を持つ存在だとわかっていたって事ですよね?」
言葉が通じ会話が成り立っているって事は、そういう事だ。
「……なのに、何故獣人を人間の奴隷のままにしておいたんですか!?」
その目は白く濁っていて焦点は結ばれず、目が見えていないだろう事は一目瞭然だった。
「彼女の足は既に動きません。座ったままでお目通りいたしますこと、お許しください」
何故か王太后さまが俺に謝ってくる。
「あ、いや、そんな――――」
許すとかそんな立場じゃないですと言おうとした俺の前で、王太后さまが跪く。
そのまま人と獣人、2人の老婦人が深々と頭を下げた。
「あなた様のおこしをお待ちしておりました――――救世主さま」
「はっ?!」
まさかの誤解が、こんなところまで!
ティツァ、お前否定してくれたんじゃなかったのかっ!!
俺はワタワタと両手を振りまわす。
「ち、違います! 俺は救世主なんてもんじゃありません」
なのに二人の老婦人は頭を上げようともしない。
「本当に違いますから! 俺はただの一般人なんです」
泣きたくなってくる。
よく見てくれよ!
俺のどこに救世主なんて威厳があるっていうんだ?
「か、顔を上げてくださいっ!」
俺の懇願にようやく二人は顔を上げた。
「俺は救世主ではありません」
繰り返す主張にも、王太后さまは静かに首を左右に振る。
「ユウさま。あなたは我らの救世主です」
どうして、そんな誤解をしているんだぁ~!
「俺はただの人間です。なんの力も持っていないんです。世界を救うなんてムリです!」
「世界を救えるのは力の有る者だけとは限りません。英雄や勇者と呼ばれる者も元をただせばごく普通の男や女達でした」
それはそうかもしれないけれど、でも、ともかく、俺はそんな奴じゃない。
俺は情けなくも、フルフルと首を横に振りながら後退った。
「――――運命からは逃げられぬ」
突然大バ○さまじゃなくて、獣人のおばあちゃん(いいよな、もうこの呼び方で)が、声を発する。
見かけに相応しいガラガラ声だ。
逃げられぬって、そんな呪いみたいな宣言止めてくれ!
ビクッと震えた俺を、見えぬ瞳が射抜く。
「救世主さま。あなたは好むと好まざるとにかかわらず、この世界を救う。それが『神』のご意志じゃ」
この世界の『神』は、無形無象の実体のないものじゃなかったのか?
そんなものに意志があるなんて反則だろう。
「ムリ、ムリ、絶対ムリです」
「彼女の予言が外れたことはありません」
全力で拒否っているのに、王太后さまが止めを刺そうとしてくる。
なおも否定しようとした俺は、ある事に気づいて「え?」と固まった。
「……言葉が通じている?」
俺は異世界トリップチートで人間の言葉も獣人の言葉もわかる。
だが人間と獣人は互いに言葉が通じず、簡単な単語程度しかわからぬはずだった。
何より人間は獣人が言語を操ると思っていない。
それがこの世界の常識のはずだ。
でも、今の王太后さまの言葉は、どこからどう聞いても獣人のおばあちゃんの言葉を理解しているように聞こえた。
「言葉がわかるんですか?」
俺の問いに、王太后さまもおばあちゃんも両方が頷く。
「我らは、人と獣人それぞれの種族の巫女です。我らには『神の賜いし御力』がありますから」
それでかと納得すると同時に、俺の中にモヤモヤとした感情が生まれた。
という事は――――
「王太后さまは、獣人が人間と変わらぬ知恵と知識、文化を持つ存在だとわかっていたって事ですよね?」
言葉が通じ会話が成り立っているって事は、そういう事だ。
「……なのに、何故獣人を人間の奴隷のままにしておいたんですか!?」
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