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第2話 現る
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今日まで三時間授業ということで、午前中には学校が終わった。昨日とは打って変って早めに帰ろうと思っていた僕だったが、そんな決意を邪魔するかのように、終礼後すぐに担任が僕の名前を呼んできた。何事かと行ってみると、僕の他に秋谷と如月もいる。
「ええと、お前ら三人には明日からいろいろやってもらおうと思ってるから、よろしく。ってわけで、今日は帰っていいぞ」
それだけ言い終わると、担任はそそくさと教室を出て行った。どうやらあの一言を言うためだけに呼ばれたらしい。なんて面倒くさい教師なんだろう、とか思いつつ横を見ると、既に秋谷の姿はそこにはなく、如月は鞄を持って待っていた。こいつら、本当に行動早いな。性格的には合わなさそうだけど、案外相性はいいのかもしれない。
僕も準備をして、如月と廊下に出る。相変わらず、うんざりとするような人の多さだ。昨日は即座に突っ込んで行った如月だったが、今日は違い、僕の顔をじっと見つめ始めた。何か企んでいるような顔。嫌な予感。
「優君、準備はいいかい?」
「は?」
首を傾げる暇もなく、彼女は僕の手を取ると、いきなり人ごみに向かって走り出した。
ぼけっとしていた僕は、転びそうになりながらもなんとか体勢を取りなおし、現状を頭の中で理解しようとするけど、そんなことを考えていられないくらいごちゃごちゃしていたので、諦めて如月に従うことにした。なんかもう流されっ放しだな、僕って。
如月に引っ張られながら、奇異の視線を送る生徒たちの間を潜り抜ける。ようやく立ち止まった時には、周りの人間はほとんどいなくなっていた。息を切らしながら、如月がこちらを見る。
「いやあ、楽しかったね。にゃはは!」
「……お前なあ、僕だって、終いにゃ怒るぞ?」
睨みながら言ってみたが、如月には何の効果もないようで、楽しそうに笑顔を浮かべている。何がそんなに楽しかったんだよ。こっちはお前に手を取られているせいで人を避けるのがすごく難しかったんだけど。
そういえば如月と手握ってたんだっけ、といまさら認識する。慌てて僕が離すと、如月は名残惜しそうに自分の手をじっと見ていた。
何なんだよ、一体。
「もう、そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。私的には、このまま下校してもいいんだよ?」
「何言ってんだ馬鹿。ほら、早く帰るぞ」
おどけた口調の如月を置いて、さっさと歩き始める。後ろから如月の無邪気な笑い声。
今日は売店をスルーし、下駄箱で靴に履き替え、早々と外に向かい、桜の木が立ち並ぶ道を歩く。この間、如月も僕も、なぜかずっと黙っていた。
校門を抜け、しばらく歩いたところで、ようやく如月が口を開いた。
「でも優君、今日はよかったね、お願いが叶って」
「お願いって……まさか、昨日のあれか?」
「もちろんそうだよぅ。ほら、朝の神様からの手紙。あれって、絶対に面白いことだよね!」
目を輝かせる如月。僕は一瞬首を捻って、すぐにあの手紙かと思い出す。
「まあ、多少は面白そうな気もするけど。結局ただの悪戯だったってパターンも十分にあり得るぞ」
「いいや、私の目に狂いはないね。『神様』は、きっと何かを仕掛けてきます。侮るなかれ!」
如月があんまり自信満々にそう言うもんだから、とりあえず頷いておく。こいつ、一度言い張ると人の意見なんて聞かないからな。それに、僕も本気でただの悪戯なんて思っているわけじゃない。あれだけ手間をかけてるなら、近いうちに必ず何かしてくるはずだ。その辺は如月に同意する。
「しかし、『制裁』ねえ……まあ、何か危害が及ぶようなことされなければいいんだけど」
朝から、どうもこの部分が頭の中で引っかかっていた。『制裁』って言うぐらいだから、僕たちに直接何かをしにくるのだろか。まさか、本当に襲ってきたりしないよな? 流石にそれはないか。でも、だとしたら他に何がある?
心の中で妙な不安を感じていると、隣の如月が、にっこりと笑って僕を見てきた。
「大丈夫だよ。きっと、まだそこまではしないはず。そう思うな、私は」
「まだ? ってことは、いつかはしてくるって言うのか?」
如月は僕の問いに答えず、ただ笑顔を強めただけで、前に向き直った。しばらく彼女を眺めていたが、こっちを見ることはない。もう話したいことは終わったとばかりに前だけを見つめている。こいつがこんな風に口を閉ざすことは珍しい。
その様子を見て、僕も大人しく黙ることにする。
もしかしたら如月が犯人なのかもしれない、という思いは、正直まだ心の奥底に残されていた。
今朝は如月の説得力の言葉に思わず納得してしまったが、そもそも犯人ならそう簡単に自分がやったなんて言うはずもないし、なぜやったのかを考えなければ、こいつにだって十分に手紙を入れるチャンスはあった。
その理由にしたって、こいつの性格からすれば、ただ単に遊びたかったとか、そんな単純なものでどうとだって付けられる。実際、あの五人の中で一番ああいうことをやりそうなのは、どう考えても如月だろう。
そして、『神様』。昨日如月とそんな話をしたばかりだ。このタイミングの良さは、偶然ではあり得ない。だったら、必然的に犯人は如月に絞られる。ただ、やはりこれも断定することは出来ず、誰か僕たちの会話を聞いていた者がいたのかもしれないし、あり得ない確率の偶然が起こったのかもしれない。
――まあ、別にどうでもいいことだけど。
結局、まだ何も起きていないんだし、本当にこれから先何かが起きるのかもわからない。如月が犯人であるにしろそうじゃないにしろ、現在『神様』がやったことといえば下駄箱に手紙を入れただけなのだから、咎めるようなことでもない。つまり、今考えるような問題ではないのである。
大事なのは、面白くなるのは、きっとここからなんだろう。
いつの間にか、いつもの分かれ道に着いていた。如月がこちらを振り向く。
「じゃあ優君、明日から一緒に、クラス役員として頑張ろうね!」
「最後の最後に思い出させるなよ、せっかく忘れてたのに……」
けらけらと楽しそうに笑う如月。僕も釣られて苦笑する。
――そう、如月が『神様』かそうじゃないかなんて、今は別にどうでもいい。
元気に手を振って去って行った如月の後ろ姿をしばらくぼんやりと眺めながら、まだそんなどうでもいいことを考えている自分がいた。
「ええと、お前ら三人には明日からいろいろやってもらおうと思ってるから、よろしく。ってわけで、今日は帰っていいぞ」
それだけ言い終わると、担任はそそくさと教室を出て行った。どうやらあの一言を言うためだけに呼ばれたらしい。なんて面倒くさい教師なんだろう、とか思いつつ横を見ると、既に秋谷の姿はそこにはなく、如月は鞄を持って待っていた。こいつら、本当に行動早いな。性格的には合わなさそうだけど、案外相性はいいのかもしれない。
僕も準備をして、如月と廊下に出る。相変わらず、うんざりとするような人の多さだ。昨日は即座に突っ込んで行った如月だったが、今日は違い、僕の顔をじっと見つめ始めた。何か企んでいるような顔。嫌な予感。
「優君、準備はいいかい?」
「は?」
首を傾げる暇もなく、彼女は僕の手を取ると、いきなり人ごみに向かって走り出した。
ぼけっとしていた僕は、転びそうになりながらもなんとか体勢を取りなおし、現状を頭の中で理解しようとするけど、そんなことを考えていられないくらいごちゃごちゃしていたので、諦めて如月に従うことにした。なんかもう流されっ放しだな、僕って。
如月に引っ張られながら、奇異の視線を送る生徒たちの間を潜り抜ける。ようやく立ち止まった時には、周りの人間はほとんどいなくなっていた。息を切らしながら、如月がこちらを見る。
「いやあ、楽しかったね。にゃはは!」
「……お前なあ、僕だって、終いにゃ怒るぞ?」
睨みながら言ってみたが、如月には何の効果もないようで、楽しそうに笑顔を浮かべている。何がそんなに楽しかったんだよ。こっちはお前に手を取られているせいで人を避けるのがすごく難しかったんだけど。
そういえば如月と手握ってたんだっけ、といまさら認識する。慌てて僕が離すと、如月は名残惜しそうに自分の手をじっと見ていた。
何なんだよ、一体。
「もう、そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。私的には、このまま下校してもいいんだよ?」
「何言ってんだ馬鹿。ほら、早く帰るぞ」
おどけた口調の如月を置いて、さっさと歩き始める。後ろから如月の無邪気な笑い声。
今日は売店をスルーし、下駄箱で靴に履き替え、早々と外に向かい、桜の木が立ち並ぶ道を歩く。この間、如月も僕も、なぜかずっと黙っていた。
校門を抜け、しばらく歩いたところで、ようやく如月が口を開いた。
「でも優君、今日はよかったね、お願いが叶って」
「お願いって……まさか、昨日のあれか?」
「もちろんそうだよぅ。ほら、朝の神様からの手紙。あれって、絶対に面白いことだよね!」
目を輝かせる如月。僕は一瞬首を捻って、すぐにあの手紙かと思い出す。
「まあ、多少は面白そうな気もするけど。結局ただの悪戯だったってパターンも十分にあり得るぞ」
「いいや、私の目に狂いはないね。『神様』は、きっと何かを仕掛けてきます。侮るなかれ!」
如月があんまり自信満々にそう言うもんだから、とりあえず頷いておく。こいつ、一度言い張ると人の意見なんて聞かないからな。それに、僕も本気でただの悪戯なんて思っているわけじゃない。あれだけ手間をかけてるなら、近いうちに必ず何かしてくるはずだ。その辺は如月に同意する。
「しかし、『制裁』ねえ……まあ、何か危害が及ぶようなことされなければいいんだけど」
朝から、どうもこの部分が頭の中で引っかかっていた。『制裁』って言うぐらいだから、僕たちに直接何かをしにくるのだろか。まさか、本当に襲ってきたりしないよな? 流石にそれはないか。でも、だとしたら他に何がある?
心の中で妙な不安を感じていると、隣の如月が、にっこりと笑って僕を見てきた。
「大丈夫だよ。きっと、まだそこまではしないはず。そう思うな、私は」
「まだ? ってことは、いつかはしてくるって言うのか?」
如月は僕の問いに答えず、ただ笑顔を強めただけで、前に向き直った。しばらく彼女を眺めていたが、こっちを見ることはない。もう話したいことは終わったとばかりに前だけを見つめている。こいつがこんな風に口を閉ざすことは珍しい。
その様子を見て、僕も大人しく黙ることにする。
もしかしたら如月が犯人なのかもしれない、という思いは、正直まだ心の奥底に残されていた。
今朝は如月の説得力の言葉に思わず納得してしまったが、そもそも犯人ならそう簡単に自分がやったなんて言うはずもないし、なぜやったのかを考えなければ、こいつにだって十分に手紙を入れるチャンスはあった。
その理由にしたって、こいつの性格からすれば、ただ単に遊びたかったとか、そんな単純なものでどうとだって付けられる。実際、あの五人の中で一番ああいうことをやりそうなのは、どう考えても如月だろう。
そして、『神様』。昨日如月とそんな話をしたばかりだ。このタイミングの良さは、偶然ではあり得ない。だったら、必然的に犯人は如月に絞られる。ただ、やはりこれも断定することは出来ず、誰か僕たちの会話を聞いていた者がいたのかもしれないし、あり得ない確率の偶然が起こったのかもしれない。
――まあ、別にどうでもいいことだけど。
結局、まだ何も起きていないんだし、本当にこれから先何かが起きるのかもわからない。如月が犯人であるにしろそうじゃないにしろ、現在『神様』がやったことといえば下駄箱に手紙を入れただけなのだから、咎めるようなことでもない。つまり、今考えるような問題ではないのである。
大事なのは、面白くなるのは、きっとここからなんだろう。
いつの間にか、いつもの分かれ道に着いていた。如月がこちらを振り向く。
「じゃあ優君、明日から一緒に、クラス役員として頑張ろうね!」
「最後の最後に思い出させるなよ、せっかく忘れてたのに……」
けらけらと楽しそうに笑う如月。僕も釣られて苦笑する。
――そう、如月が『神様』かそうじゃないかなんて、今は別にどうでもいい。
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