神様探しの放課後

堀口光

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第3話 試す

3-2

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「聞いてないぞあんなの……」

 昼休み。中庭の端っこにあるベンチで母親お手製の弁当を膝の上に広げた僕は、肩を落として嘆くように呟いた。弁当には色とりどりの野菜や卵焼きなどが詰め込まれていて、中々に美味しそうではあるのだが、今の僕の沈んだ気持ちを元に戻すまでには至らない。

「さっきから元気ないねぇ、実に優君らしくない。どうしたのさ?」

 すぐ隣でコンビニのパンを頬張る如月が僕の顔を覗き込む。ちらと見てみると、中にチョコやらクリームやらが入っているかなり甘そうなパンである。総菜パン派の僕としてはどうも気に入らない部類のやつだ。半分くらいで断念するだろうな、とか考える。

「こんなに弁当美味しそうなのに、これでも満足しないの? もう、贅沢だなぁ。食べちゃうよ?」
「いや、別に弁当に不満があるってわけじゃ……っておいこら勝手につまむな!」

 僕の抗議も虚しく、卵焼きが如月の口に放り込まれる。くそ、それ一番最後に食べようと思って残してたのに。恨めしそうな視線を投げかけるが、彼女は「美味しいね!」と笑顔で感想を述べてから懲りずにもう一個貰いに来たため、僕はその手を叩き落した。

「そうじゃなくて、さっきのテストの話。何なんだよ、新入生テストって。あんなの言ってたっけ?」
「言ってたよー。優君聞いてなかったんでしょ。まったく、言ってくれれば教えてあげたのにぃ」

 聞いてなかったから言えなかったんだけどな。でもなんか面倒くさいので黙っておく。

 今日の一時間目から四時間目まで、『新入生テスト』と称されたテストがぶっ続けであった。朝のホームルームさえろくに聞いていなかった僕は、一時間目が始まり、解答用紙が配られてきたところで初めて今日がテストだということを知って、かなり焦った。別に事前にテストだと知っていたところで勉強するわけじゃないのだけど、やっぱり抜き打ちというのは心臓に悪いと思う。まあ僕が聞いてなかっただけだけどさ。

「いいじゃん別に。人間の器ってのは、点数だけじゃ測れないものだよ。大丈夫、優君がそこそこすごい人間ってことくらい、私は分かってるよ!」
「そこそこって何だよ。というか、解けなかったなんて言ってないぞ。僕だって、一応そこそこの点数は取れてるつもり……って、こういうことか」

 思わず溜息。横で如月が笑い、隙をついて僕の弁当からおかずを奪い去る。気付くともう残り少なくなってたので、死守しながら食べることにした。なんで弁当一つ食べるのにこんなに苦労しなくちゃならないんだよ。

 四時間目が終わり、僕は自分の席でさっさと弁当を食べるつもりで弁当箱を机の上に出した時、如月がうきうきした様子でこちらに寄ってきた。見ると、彼女も片手に弁当箱。なんとなく言い出すことが予測できたので、僕の周囲を見渡し、お前が座る席はないということを示したのだが、彼女はまったく動じずに「いい場所見つけたの!」と言って、僕の手を引っ張って教室から連れ出した。その声が大きかったのか、クラス中の生徒がこちらを振り返る。もちろんそんな視線を気にもしない如月を相手に、僕には諦めるという選択肢しか残されていなかったわけだ。なんだかなあ、僕って。

 中庭にはベンチが四つほど置かれているのだけれど、今は隅っこに座る僕ら以外に誰もいない。一年生が来ないのはわかるとして、上級生がここを使わないのはどうしてだろう。少し考えて、多分上の階に上がるにつれて、中庭まで下りてくるのが面倒になったんだろうな、と自分の中で結論付けた。別に興味もないし。

「ところで、何でこんなとこで食べようと思ったんだ」
「えぇー! 優君、君は本当にその理由がわからないのかい? 今こんなにもびしびしと感じているというのに?」
「……何を」
「見なよ、あの真っ赤な太陽を! 流れ出る太陽エネルギーを! この青空の下でご飯を食べるということは、日本人なら誰もが憧れる行為なんだよ」

 とりあえず絶句。誇らしげな顔で空に向かって指を差す如月を目を細めて見つめながら、こいつの元気の源は一体何なんだろうな、とか思う。家で普段何食ってんだろう。こいつの場合だから、骨付き肉とか喰らってそうだな。いや、案外魚中心ってのも悪くはないか――

「探しましたよ」

 半ば現実逃避気味になっていた僕の耳に届く、そんな綺麗な発音の声。顔を上げると、秋谷が実に呆れたような表情で、僕と如月を交互に見つめていた。僕に対しての視線は、如月の行動に対する説明の要求だと信じたい。というより、いつの間にいたんだ。

「どこにいるのかと思えば、こんなところでイチャついていたんですね。学校で不埒な行動は慎んで下さい」
「イチャついてなんかいないし、不埒な行動なんてしていないから! 誤解を招くような言い方は止めてくれ」

 ただ並んで弁当食べてただけなんだけど。しかし、秋谷は訝しげな目を止めようとしない。どうあっても勘違いする気満々なようだ。僕は反論を諦め、如月の言葉を待つことにした。こいつならなんだかんだで丸めこんでくれるはずだ。

「にゃはは、樹里ちゃんも優君とイチャつきたいの?」

 待て、それ否定になってないから。寧ろ肯定だから。如月に任せた僕が馬鹿だった。

 僕は秋谷がすぐにでも怒りだすのではないかと思いおそるおそるそちらを確認する。だが、予想に反して、彼女は面食らったように顔を真っ赤にしていた。

「な、何を言っているんですかあなたは! この私が、こんな平凡で何の取り柄もなさそうで実に普通で面白味のないように見える男子生徒と、い、イチャつきたいなど、あるわけがないでしょうが! あなたはもう少し考えて言動しなさい!」

 慌てた素振りで捲し立てる秋谷。なんかすっごい馬鹿にされたような気がするんだけど。いやまあ、事実なんだけどさ。確かに平凡で何の取り柄もなくて普通で面白味もないけど。でも、他人から直接言われると結構響くなあ、これ。  

 すっかり意気消沈してしまった僕を尻目に、秋谷は如月に向かってしばらく檄を飛ばしていたようだが、どれだけ説教しようとも終始笑顔の如月に根負けしたのか、最後には溜息を吐いて肩を落とした。如月の芯の強さがある意味羨ましい。いや、ただ何も考えていないだけか?

「……先生が呼んでいます。職員室まで来てください」

 秋谷がぽつりと呟く。どうやらこれを伝えるために僕たちを探していたらしい。何の用事かを訊く前に、クラス役員関連の仕事だなと一瞬で予想が付いた。わざわざ秋谷が呼びに来るってことは、もうほぼ確定だろう。また面倒事か。

 かなり逃げ出したかったけど、学級委員長の鋭い目つきが「いいから早く来い」と命令していたので、大人しく従うことにしておく。僕っていろんな場面で結構弱い立場だよなあとか思いつつ、まだ少し残っている弁当を片づけて立ち上がる。既に如月は秋谷の横に立っていた。

 先頭を秋谷が歩き、僕たちはその後ろを着いていった。中庭を出て階段を上がる。職員室は二階で、二年生の教室が立ち並ぶ方とは逆の場所の、奥まったスペースにあった。向かいに会議室やカウンセラー室などがある。どれも、出来れば三年間関わりたくなかった部屋だ。

「来てくれたかお前たち。悪いな、昼休みだってのに」

 会議室の入り口前に立っていた担任が、大きな声で僕らを呼んだ。辺りを歩く人たちが彼を一瞥する。やっぱり見た目通り暑苦しい人だな。

 担任はそのまま会議室の中に僕らを呼び入れた。中心に並べられた口の字型の机と椅子以外、何もない。殺風景という表現が相応しいくらいのシンプルな部屋である。流石は会議室だな、とよくわからない感想を持った。

「とりあえずお前らには、アレを名簿順に並べてほしい」

 そう言って、担任が机の上に積まれた三個の紙束を指差す。嫌な予感しかしなかったが、仕方なく覗きこむと、それは今日解いたテストの解答用紙だった。国語、数学、英語の三教科。多分、全部一年三組のものだろう。隣の秋谷も、僕と同じように苦い顔をしている。如月の笑顔は変わらない。なぜだ。

「すまんな。どうも一人じゃ面倒……じゃなくて、時間がなくてな。俺は他の仕事をしなければいけない。まあ三人で分ければそんなに多くないだろうから、しっかりと雑用……じゃなくて、仕事してくれ」

 どうにもこの人は本音を隠せない人間のようだ。職員室にいるから終わったら言ってくれと残して部屋から出て行く担任の背中に精一杯睨みを利かせて、僕はとりあえず溜息を吐いた。要約すると、一人じゃ面倒だから雑用してくれってか? いい加減だなおい。

 会議室にしばしの沈黙が漂う中、最初に行動したのは学級委員長である。彼女は近くの席に座り、紙束の一つを取って作業を始めた。よく働くなあとか思っていたら、如月が僕の裾を引っ張って早くしようと促すので、諦めて僕も如月の横に座る。

 一見長くかかりそうに思えた作業は、いざ始めてみると五分少々で終わってしまった。基本的には最初からほとんど名簿順に並べられており、僕は数枚を入れ替えただけだからである。というかよく考えると、テストが終わった後、その列の一番後ろの人が名簿順に重ねて担任に渡したのだから、ちゃんと並べられていない方がおかしい。きっと、担任が渡された後適当に混ぜてしまったのだろう。どこまでも適当な教師だ。

 すぐに秋谷と如月も終わったので、僕らは会議室を出て、向かいの職員室を覗く。隅っこの方に、デスクでカップを啜る担任の姿が見えた。湧き出る憤りを堪えて、秋谷を先頭にそこまで歩く。

「おー、もう終わったのか。流石は俺のクラスの役員、有能だな。ありがとさん。また放課後に呼ぶかもしれないから、その時はもう一仕事よろしく」

 僕らの顔を見るなり、彼はコーヒーを片手に呑気にそう話した。机の上は、いろんなプリントや本でごちゃごちゃしていて、まったく整理されていない。性格がよく表れている机だ。こんな人のクラスで一年もやっていかなければいけないのかと考えて、今更ながら憂鬱な気分に陥った。

 三人で職員室を出る。時計を見ると、昼休み終了まで残り十分ほどあった。

「さて優君、これからどうする? 一緒にスポーツでもして遊ぶ?」
「何でだよ。まず飯だろ、飯。まだ少し残ってんだから」

 そっかあ、と笑う如月。大体お前もまだパン持ってるだろうが。

「では、私は戻りますね。ご協力、ありがとうございました」

 僕たちの正面に立って、秋谷は頭を下げた。僕が手伝ったのは担任のはずなのに、なんでこいつがお礼を言うんだろう。本当によくわからない奴だ。首を捻っていると、彼女は顔を上げて、さっと後ろを振り向く。

「あ、待って!」

 その背中に、思い出したように如月が声をかけた。秋谷が再度こちらに向き直る。なぜか如月はそこで数秒黙って秋谷をじっと見つめた後、持っていたパンを前に差し出しながら言った。

「一緒に、お昼ごはん食べよ!」

 瞬間、秋谷の表情が一変した。冷ややかな眼差しを送っていた目は大きく見開き、ぽかんと口を開けて、唖然としている。自分が何を言われたのかを理解できていないといった顔だ。少ししてから、はっと我に返ったように如月に向かって指を差しながら口をぱくぱくと動かし始めたが、まったく言葉になっていない。何でここまで動揺してるんだろう。そんなに如月の誘いが予想外だったのだろうか。

 あたふたしていた秋谷は、僕と視線が合うと急に動きを止めて、顔をさーっと赤らめた。下を向いて、恥ずかしそうに一回咳をする。

「……ですが、その、須野さんに悪いですし」

 何でここで僕の名前が出てくるんだ? もしかして、まだこいつは僕と如月の関係を勘違いしているのか。意外と思い込みが激しい奴なのかもしれない。

「優君も、別にいいよね?」
「え? あ、ああ、別に断る理由はないけど」

 如月が顔を覗き込んで訊いてくるので、流されるように僕は頷いた。本当は昼飯など一人でさっさと済ませてしまいたい、というのが本音だったのだけれど、ここで断ってしまったら秋谷にますます誤解されてしまう気がしたからだ。それに、どうせ如月が追いかけてくるだろうから、一人で食べることなんて不可能だろう。

 秋谷は下を向いたまま、黙りこんでしまった。迷っているらしい。そりゃ、あんだけ面倒な性格を見せつけられた相手に一緒に昼飯食おうなんて言われても困るよな、なんて考えた時、彼女は顔を上げ、意を決したように首を振った。

「残念ですが、もうお昼は済ませてしまいましたので。では、失礼しますね」

 そう言って背を向けると、今度は速足で去って行った。すぐにその姿が視界から消える。相変わらずの行動の早さだ。

 隣の如月は、頬を膨らませて残念そうにパンを見つめていた。

「もー、せっかく一緒に食べようと思ったのにぃ」
「まあまあ、気にすんなって。同じクラスなんだから、いつでも誘えるだろ? また今度にしよう」

 僕の顔をちらと見ると、そうだね、と呟いて、僕の手を引っ張って歩き出した。僕は弁当を落とさないように気をつけながら着いていく。

 如月の表情はよく見えなかった。
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