私の怖いもの 短編集

tenten

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見下ろす男

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 連勤のため疲れが溜まっていた。
 久しぶりの休日は、寝て過ごそうと決めていた。

 仕事帰りに休日用の食事も準備して、家から一歩も出ない。

 だからといって、昼まで寝てしまったら
 夜まで時間を持て余す。

 午後昼寝をすれば、夜になかなか眠れなくて明日の仕事に差し支える。

 だから、朝は普段通り一旦起きて歯磨きと洗顔を済ませてパンを軽く食べ、また歯磨きをして二度寝した。



 カーテンも閉め部屋はほんのり明るい中、日頃の疲れもあって二度寝もグッスリだった。

 ふと目を覚ますと布団の横に誰かが立っている。

 若干寝ぼけつつ「鍵閉めたよな?」と思いながら視線を上へと向ける。

 見たこともない男が何故か優しい表情で私を見下ろしていた。
 不思議と怖くはなかった。

 何をするでもなく、ただ見ているだけ。

 さて、どうしようか。



 この部屋に住んでから少し経った頃、昼間にハードカバーの厚みのある本を読んでいたら結構な勢いでページがめくれたことがあった。

「いや、まだ読んでないって!」

 と思いながら、パラパラめくれる本を眺めながら考えた。

「玄関も部屋のドアもベランダも閉めている。風が吹くわけない。じゃあ何がページをめくってるんだ?」

 その後、どこまで読んだか探すのが面倒だった。

 更に、寝ていると体を触られた感触で目が覚めることが何度かあったことを思い出した。

「ひょっとして、こいつか?」

 そう思ったら怖いよりも怒りの感情が込み上げてきたので、私は声に出さずに全身に力を込めて叫んだ。

「出てけ!!」

 男は消えた。



 それ以来、男も現れなくなり何も起こらず引っ越すまでは平和に暮らした。



 たまたま母にこの話をしたところ、翌週には荷物が送られてきた。

 中身は食料とお札だった。



 ホラーやオカルトは好きだが、自分の体験したことはあまり他人には話したことがない。

 どの体験も、多少驚きはするが恐怖と思ったことがない。

 悩み苦しむほど長引くこともないから。



 そう、これくらいのこと私にとっては恐怖でもなんでもない。

 私の本当に怖いものは・・・・・








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