蒼穹の魔剣士 ~異世界で生まれ変わったら、最強の魔剣士になった理由~

神無月

文字の大きさ
33 / 49
第一章

〈第29話 表〉 メビウス 対 メビウスの使徒

しおりを挟む
 
 構えた姿勢に入れば、彼女の剣が僕に向かうのは早かった。

「───あはっ!」

「………」

 金属音が鳴り響いたと思った後には彼女は眼前に迫っていた。

 魔力によって強化された身体と噴出する魔力で推進するエネルギーは凄まじく、まともに剣で受けるのは一般的な魔剣士なら得策ではない……多分、知らんけど。

「へぇ、やるね」

 とりあえず一旦受けてからすぐに流すが、直後次の一手に繋げてくる。

「フフッまだあるよ!」

 そしてそれをいなすと、懲りずにまた迫ってくる──

「──また止めちゃうんだ!」

 だから思わず受け止めるが、彼女はそれに驚く様子もなくただ喜んでいるように見える。

 しかしそんなことより最初の猛烈な接近の風圧で、フードに隠されていた彼女の顔が至近距離で顕になったことに僕は驚いた。

 そして視覚に魔力を流し光量を調整する。その顔を覚えるためだ、決して可愛いからとかではない。

 灰色に近い深緑の髪は後ろで2つに結われ、肩ほどまでの長さだと推察でき、翠に近い紫の目は常に僕の身体に向けられている。

 それに彼女の魔力波長は見たことがない。

 魔力の使い方が『ダート流』のそれとは全然違う。

 鋭く、速く、魔力で魔力を練り上げるのが『シン・マケン』。

 ダート流とシン・マケン、どちらかと言えば彼女の魔力の使い方は後者に近いものを感じるが、やはり全く違う。

「…………」

 顔が近かったから弾く。

「……?!」

 そして彼女も驚く。これでお相子。

「魔力………面白い使い方するね、ウチたちと同じ使い方。やっぱりリーダーは凄いや。さすがだよ、こんなのにまで真似されてるんだから」

 剣先で僕を指す彼女。

『こんなの』とか『これ』とか周りの女子はまともなのがいないな。

 やっぱりセレシアとミツキだけだ、素直でいい子なのは。

「でも全然つまんない。なんで反撃しないの?ウチがやった奴はみんな抵抗したのに」

 少女は続ける。

「もしかしてビビってんの?今更怖気付くことないよね?ウチたちをこんなにしたんだからさ、せいぜい足掻いてウチを楽しませて…よ!」

 最初と同じように急速に接近してくる。

 そして堂々と真上から振り下ろされた剣、僕はそれを横に受け流すが、彼女はすぐさま横薙ぎを繰り出す。

 当然これも受けよう──

「──!」

 とする前に彼女の剣は変則的に線から点へと変え、横腹を貫かんと突き刺してくる。

 受け止めてもいいが、さすがにやりすぎだと考え直し、後ろに飛んで避ける。

「チッ……!」

 離れると聞こえてくる盛大な彼女の舌打ち。

 残念だけどここで僕の力量を知られてしまうのは早すぎる。

 せめて彼女の奥の手まで取っておくべきだ。

「ねぇ、今の……受け止めようとしたでしょ?ムカつくなぁ、まるで『私にはそれくらいできる』みたいな感じ。ならもっかいやってあげるよ、ちゃんと受け止めてね」

「………」

 力量を知られてしまうのが早すぎる。

「黙ってないで、なんか言ったらどう?さっきからウチしか喋ってないじゃん。女の子を盛り上げないなんてマナー違反だよ?せめて自分の等級クラスが何番か言ったらどう?」

 彼女の口調は平然としているが、所々に怒気が滲み出ている。

 こちらが応答しないことに苛立ちを覚えているのだろう。あるいは自信家だった?もしくは応援が来ないことに不満を?いやいやあるいは……なんてことを考えても分かるはずもない。

 そろそろこちらも彼女のコミニュケーションしたいと言う意思に報いるとしよう。

「………」

 ならこちらからも向かおう

「?…………ッ!?」

 僕はそう言うと彼女と同じように、けれどそれよりも早く接近する。

「………」

 いいね、やるね

「ッ」

 僕の一撃を彼女も受け止めるが、反射的に反応できたというレベルでギリギリだろう。

 先ほどの彼女と同じように次に繋げてもいいが、ここは左足で蹴り飛ばす──

「──ぐァ!」

 殺すことは目的じゃないし彼女も対話を望んでいる。

 これはあくまで捕縛が目的……なのだが思いのほか飛んで転がってしまった。

「……」

 すまない。力加減を間違えたかもしれない

「くっくく……蹴りとか卑怯でしょ……それでも魔剣士?」

 ペッ、と彼女は唾を吐くと立ち上がると剣を構える。

「お礼を言うよ、あんたのおかげで身体を武器に使うことを思い出せた……じゃあ、次。どっちがさきにやる?」

「………」

 どっちでもいいかな……

「そう、ならこっちが行くよ………再戦だ!」

 接近してくる彼女、繰り出される攻撃、散逸する魔力、木霊する剣戟。

 それらが静謐な広場で幾度も繰り返される。

 一瞬でも油断してそこから巻き返すことは容易。

 だがそれは無礼だ。彼女が全力を持って僕を見つけようと言うのなら、僕もそれに応えるまで。

 僕は防戦一方だが、苛烈に攻め立てる彼女はいつだって僕の隙をつこうとして来る。

 切り下げの袈裟なら、いなし。

 切り上げの逆袈裟なら、弾く。

 横なぎなら、いったん受け止めて流す。

 間断なく繰り出される斬撃の中、僕は今か今かとその時を待ち望む。

「ッ!!」

「………」

 そして。

 彼女の呼吸が、纏う魔力が、間合いが、そのすべてが変わる。



 宣言通り次は受け止めよう───


 迫りくる攻撃は変わらないが、確かに変わっている。

 だから応えるために神経を集中する。

 すると先ほどまで聞こえていた剣戟の音は聞こえなくなる。

 代わりに耳から入る情報は、

 剣の風切り音、

 石畳を踏みしめる靴底の音、

 どくっどくっと相対する彼女の心臓音

 予感する。

 次の一手。

 ゆっくりと時間が流れる中で認識する。

 彼女の構えが変わることを。

 僕も魔力を込め、突き刺さるギリギリに備える。

 腹を突こうと差し迫る刃。

 そして今、全力の一つを披露する時が来た


 ───これが「なにをしている!」


 あとわずか。

 ほんの少しで僕に届こうとする直前、彼女の刃はピタリと止まる。

 誰かが叫んだからだ。

 彼女は振り返る。

 僕も彼女の後ろを見る。

 それは見知った人間、アーク騎士団ハクバ・ナイトと王国騎士たちだった。

 騎士団に僕の魔力の波長を覚えられるとも限らない。僕は隠匿モードに移行する。

「っ……クソが………」

 彼女は苦々しく吐き捨て、距離をとり身体に纏う魔力を絞る。

「邪魔が入った───」

 睨みつけるようにハクバを一瞥してからこちらに視線を戻す。

 しかし僕にまで彼女は眼を細めることはなかった。

「───ふふっ、どうやらそっちもお仲間が来たみたいね」

「……申し訳ありません……遅れました……っ…はぁ…はぁ」

 隣に立ってくるミツキ……ゴーストは今の今まで探索していたのか魔力も最小限だ。急いでこちらに向かったのだろう、息を切らしている。

「また、会おうね。『ナンバーズ』さん───」

 彼女は会った時と同じようにヘラヘラと笑っていたが、次には止む。

「───次は殺す」

「おい待て!くっ、君たちは追いかけるんだ!」

 颯爽と立ち去る彼女。

 ハクバは制止を呼びかけるがそう言って待つ人間はいないだろう、去り行く彼女とそれを追いかける何人かの騎士たちを見届ける。

「………──」

「──っ、はいわかりました」

 彼女を追いかけるようにハンドサインっぽくゴーストに指示する。やってみたかったんだこれ。

 ゴーストは飛んで屋根を渡るように駆けていく。

「くそっ、なんなんだ!残った君たちも追うんだ!」

 だが騎士団は地面を走っていく。

 ハクバは1人残り、僕と対峙する。

 騎士団と本気でやりあってもみたいけれど、殺すのはまずいだろう。

 というより30秒もあれば、ゴーストもあるいはさきほどの彼女もここから離れられるだろう。

 なら時間稼ぎぐらいで十分かな。

「……」

 いざ、尋常に。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

【完結】嫌われ公女が継母になった結果

三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。 わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

異世界で至った男は帰還したがファンタジーに巻き込まれていく

竹桜
ファンタジー
 神社のお参り帰りに異世界召喚に巻き込まれた主人公。  巻き込まれただけなのに、狂った姿を見たい為に何も無い真っ白な空間で閉じ込められる。  千年間も。  それなのに主人公は鍛錬をする。  1つのことだけを。  やがて、真っ白な空間から異世界に戻るが、その時に至っていたのだ。  これは異世界で至った男が帰還した現実世界でファンタジーに巻き込まれていく物語だ。  そして、主人公は至った力を存分に振るう。

処理中です...