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天使
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僕は青空の元、広い広い公園の片隅のベンチに座りノートに様々なものを書いていた。
この公園は綺麗で人も沢山来るけれど、僕がいる辺りは何も無いからこのベンチに人が座っていた事等、殆ど見たことが無い。
いつも僕の指定席となっているのに、今日は珍しく人が僕の隣のベンチに座った。
珍しい事だから少し興味あったけど、丁度頭の中に描きたいことが湧き出てきたので、そちらの方を優先した。
「ねえ君。そのノート私に見させて貰えないかな? その間、近くのベーカリーで私のお気に入りのクロワッサンサンドを買ったんだけど、美味しそうでついつい買い過ぎてね。食べ切れないから、食べてくれないかな? どう? 」
僕が描き終えて鉛筆を置いた時、隣から問いかけられた。
僕は人と話すのが余り得意では無い……
人の眼が怖くて見れないからだ。初歩的に必要な視線を合わせるという行為がまず無理なのだから。できるだけ人とは話さない生活を送っている。
無視する訳にもいかないし、お腹もとても空いているので、チラリと胸の辺りに視線を合わせて大きく頷いた。
「ありがとう。ベンチとの間が少しあるから、遠いんだよね。君の隣に座っても良いかな?」
僕は少し躊躇したけど、嫌とは言えなくて頷いた。
隣の人が僕の横に座って、ガサガサ袋を漁って多分さっき言っていたクロワッサンサンドなる物を取り出し、僕の目の前に持って来た。
「はい!どーぞ。スモークサーモンとカマンベールチーズのサンドイッチなんだよ。後、横にミルクティーも置いているから飲んでね」
はじめて見るものだった。サンドイッチはコンビニの三角形の物しか食べたことがない。ノートを僕と彼の間に置いて、恐る恐るサンドイッチに手を掛けた。
「柔らかい……重い」
「そうだね。焼き立てのクロワッサンはふわふわでサクサクで良いよね。中身も沢山入ってるからボリュームたっぷりだしね。ほらほら食べて食べて」
「い、いただきます」
僕は口元へ持ってきて、一口かぶりついた。
大きいのでかなり口を開けないと入りそうになかったから、産まれてきて一番大きな口を開けたと思うんだ。サクって音がした。
次に香ばしいパンの匂いが口を通って、鼻から抜けていった。
はむって噛むと何だろう食べた事のない味がした?
ウィンナーみたいな匂い?でも食感は柔らかくジューシーでチーズの塩味ととても合っている。僕は夢中でハムハム、サクサク食べた。
あんなに食べる前は大きいと思っていたパンなのに食べるとすぐに無くなってしまった。
食べ終えて悲しくなってしまった僕の目の前に、カップに入った飲み物が……
「美味しかったかい?喉が渇いただろう飲みなさい」
僕は頭を下げてお礼をして、カップを受け取った。ストローに口をつけて吸い込むと。濃厚なミルクと香り高い紅茶の味が口の中に入ってきた。
「これが紅茶? いつもとは違う……美味しい……」
「嬉しいよ。ここの紅茶は香り高いよね。私も好きなんだ。未だ入るなら、こちらのローストビーフのサンドイッチも食べてくれるかい? 」
「いいんですか? 」
「私は横で君の絵を見てるから、ゆっくり食べなさい。この袋に後何個かあるから、食べれるだけ良いよ。美味しく食べてくれるなら、私は嬉しいよ」
僕は何故か横の人の顔が見たくなり、視線を向けた。
「あっ………………」
「はじめまして。やっと見てくれたね。私はクリス・リチャード。クリスって呼んでくれたら良いよ」
彼は外人さんだった。キラキラした髪に、グリーンの瞳とても綺麗。ビー玉みたいな瞳だった。
僕は彼が描きたくなり、彼の持っているノートを取ろうとしたんだ。すると彼が手を伸ばしノートを僕の手の届かない場所へ……何故?
「どうしたの? 何か描きたくなったのかな? じゃあねこっちのスケッチブックに書いてくれるかな?後、この色鉛筆使っても良いよ」
彼が綺麗なスケッチブックなるものを僕の手に持たせた。こんなのはじめてだ。いつもノートの両面を使って描いているから、こんな真っ白い厚い紙に描けるなんて……
「良いの?」
「良いよ。思う存分描きなさい。色鉛筆も使うんだよ。鉛筆では、色分けが難しいだろう」
「ありがとう」
僕はぶ厚い紙に色鉛筆を使って描きはじめた。描き始めると周りの音も聴こえないし、見えなくなる………
「凄い集中力だね……この子の絵は鉛筆一色なのに不思議と色が見えてくるな、何故だろう? それだけ描写が凄いのか?
それもあるが、魂に訴えてくるものがあるんだな。このノートは凄い……この子の才能は護らなければならない。
今のままの生活ではこの子はきっと駄目になる。嫌、駄目にさせられる。
私は今日この日迄、色々手廻しをして決心して君に声を掛けたんだ。
君を私の元へ保護する為に……保護と言うと聞こえは良いが、拐うんだ。
君は私を恨みはしないか不安だけど、君をあの家に置いておく訳にはいかないんだよ。
きっと幸せにしてみせるから、私の人生全てで君を護るから、君を拐う事を許してくれ」
the end
この公園は綺麗で人も沢山来るけれど、僕がいる辺りは何も無いからこのベンチに人が座っていた事等、殆ど見たことが無い。
いつも僕の指定席となっているのに、今日は珍しく人が僕の隣のベンチに座った。
珍しい事だから少し興味あったけど、丁度頭の中に描きたいことが湧き出てきたので、そちらの方を優先した。
「ねえ君。そのノート私に見させて貰えないかな? その間、近くのベーカリーで私のお気に入りのクロワッサンサンドを買ったんだけど、美味しそうでついつい買い過ぎてね。食べ切れないから、食べてくれないかな? どう? 」
僕が描き終えて鉛筆を置いた時、隣から問いかけられた。
僕は人と話すのが余り得意では無い……
人の眼が怖くて見れないからだ。初歩的に必要な視線を合わせるという行為がまず無理なのだから。できるだけ人とは話さない生活を送っている。
無視する訳にもいかないし、お腹もとても空いているので、チラリと胸の辺りに視線を合わせて大きく頷いた。
「ありがとう。ベンチとの間が少しあるから、遠いんだよね。君の隣に座っても良いかな?」
僕は少し躊躇したけど、嫌とは言えなくて頷いた。
隣の人が僕の横に座って、ガサガサ袋を漁って多分さっき言っていたクロワッサンサンドなる物を取り出し、僕の目の前に持って来た。
「はい!どーぞ。スモークサーモンとカマンベールチーズのサンドイッチなんだよ。後、横にミルクティーも置いているから飲んでね」
はじめて見るものだった。サンドイッチはコンビニの三角形の物しか食べたことがない。ノートを僕と彼の間に置いて、恐る恐るサンドイッチに手を掛けた。
「柔らかい……重い」
「そうだね。焼き立てのクロワッサンはふわふわでサクサクで良いよね。中身も沢山入ってるからボリュームたっぷりだしね。ほらほら食べて食べて」
「い、いただきます」
僕は口元へ持ってきて、一口かぶりついた。
大きいのでかなり口を開けないと入りそうになかったから、産まれてきて一番大きな口を開けたと思うんだ。サクって音がした。
次に香ばしいパンの匂いが口を通って、鼻から抜けていった。
はむって噛むと何だろう食べた事のない味がした?
ウィンナーみたいな匂い?でも食感は柔らかくジューシーでチーズの塩味ととても合っている。僕は夢中でハムハム、サクサク食べた。
あんなに食べる前は大きいと思っていたパンなのに食べるとすぐに無くなってしまった。
食べ終えて悲しくなってしまった僕の目の前に、カップに入った飲み物が……
「美味しかったかい?喉が渇いただろう飲みなさい」
僕は頭を下げてお礼をして、カップを受け取った。ストローに口をつけて吸い込むと。濃厚なミルクと香り高い紅茶の味が口の中に入ってきた。
「これが紅茶? いつもとは違う……美味しい……」
「嬉しいよ。ここの紅茶は香り高いよね。私も好きなんだ。未だ入るなら、こちらのローストビーフのサンドイッチも食べてくれるかい? 」
「いいんですか? 」
「私は横で君の絵を見てるから、ゆっくり食べなさい。この袋に後何個かあるから、食べれるだけ良いよ。美味しく食べてくれるなら、私は嬉しいよ」
僕は何故か横の人の顔が見たくなり、視線を向けた。
「あっ………………」
「はじめまして。やっと見てくれたね。私はクリス・リチャード。クリスって呼んでくれたら良いよ」
彼は外人さんだった。キラキラした髪に、グリーンの瞳とても綺麗。ビー玉みたいな瞳だった。
僕は彼が描きたくなり、彼の持っているノートを取ろうとしたんだ。すると彼が手を伸ばしノートを僕の手の届かない場所へ……何故?
「どうしたの? 何か描きたくなったのかな? じゃあねこっちのスケッチブックに書いてくれるかな?後、この色鉛筆使っても良いよ」
彼が綺麗なスケッチブックなるものを僕の手に持たせた。こんなのはじめてだ。いつもノートの両面を使って描いているから、こんな真っ白い厚い紙に描けるなんて……
「良いの?」
「良いよ。思う存分描きなさい。色鉛筆も使うんだよ。鉛筆では、色分けが難しいだろう」
「ありがとう」
僕はぶ厚い紙に色鉛筆を使って描きはじめた。描き始めると周りの音も聴こえないし、見えなくなる………
「凄い集中力だね……この子の絵は鉛筆一色なのに不思議と色が見えてくるな、何故だろう? それだけ描写が凄いのか?
それもあるが、魂に訴えてくるものがあるんだな。このノートは凄い……この子の才能は護らなければならない。
今のままの生活ではこの子はきっと駄目になる。嫌、駄目にさせられる。
私は今日この日迄、色々手廻しをして決心して君に声を掛けたんだ。
君を私の元へ保護する為に……保護と言うと聞こえは良いが、拐うんだ。
君は私を恨みはしないか不安だけど、君をあの家に置いておく訳にはいかないんだよ。
きっと幸せにしてみせるから、私の人生全てで君を護るから、君を拐う事を許してくれ」
the end
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