《完結》《異世界アイオグリーンライト・ストーリー》私も異世界で魔法が使えました！

変わらない日々 (バージル)

私は今朝も日課の鍛錬をこなしている。汗を流し身支度をした後は、騎士団へ行くのだが、その前に隣の部屋の愛するマシェリーに逢いに行くのが、朝の私の楽しみなのだ。

    犬の生活が長く、人間の身体に多少の違和感が拭えないので、落ち着いた日々になってからは身体をもう少し鍛える事にしたんだ。そうすると、自然と身体と精神が馴染んできた。

    マシェリーの部屋へは、決まった人間しか入れない様に厳重に隔離されている。私は騎士団に居る時間以外は、殆どマシェリーの所だ。エマやエドウィンその他の人間とも少しは話せるようになった。

    基本人間は好きでは無いからな。中でも気があうのは、ボイスだ。彼とは不思議と思考回路等が似ている感じがするのだ。

    私は今、王宮で暮らしている。本当は王宮に良い思い出は微塵も無い、殺伐とした日々を過ごして来たからだ。できれば早い所王宮は疎かこの国を出て行きたいくらいだ。

    昔の私を知っている者は、何故かキラキラした目で英雄とか言ってくるが、意味が解らない。その様な高潔な人間では無いからな。ガムシャラに目の前の人間を殺していただけだ。そんな良いものでは無い。

　マシェリーの部屋の前には、フレドリックの密偵が、何時も姿を隠し見張っている。だから私は安心して出掛けられるのだ。愛する人ができた私は、以前の記憶の影響なのだろう……奪われる不安感が抜けないのだ。最初の頃は片時も離れられなかった。

   マシェリーの部屋の 扉を開けると、メアリーが既にきちんと洋服を着替え終え、髪を整えておいてくれている。

    マシェリーは15歳になった。眠っていても成長している様だ。顔立ちが以前よりシャープになり、大人の色気が出てきて綺麗になった。陽に当たらない為か、透き通る白さだ。頬は薔薇色に染まり、唇もぷっくりと誘われる唇をしている。つい、唇を奪ってしまいそうになる時がある程だ。

　我慢しているがな。身体も、女性らしい身体付きになっている。服によっては、私の我慢の限界をメアリーは試しているのでは？　と思う時もある程魅力的なんだ。

　表情も、毎日接していると分かってきたんだ。笑顔の日もあれば、泣いてる日もあるし悩んでいる時もある。マシェリーはとても表情豊かな私の初恋であり、愛すべき人だ。できるのなら、あの綺麗なスカイブルーと銀の瞳で見つめあいたい。


「マシェリー……未だ起きてはくれないのかい？　皆んな待って居るんだよ」


私はいつもの様に、彼女に語りかける。そしてしばらく後、頬にキスをし名残惜しく扉を閉めるんだ。騎士団の詰め所迄、足早に進み廊下を靴音を建てさせない様に、気をつけて歩く。

     その訳は、最近迷惑な人間が居るからだ。ほって置いて欲しいのに、横でベラベラ喋り続け着いてくる。煩くて、何度断ろうとも理解できないみたいだ。あの手の人種は嫌いだ。

     無駄な事を考えている間に、騎士団の詰め所に着いたが、そのまま素通りし奥に広がる鍛錬場に向かう。殆どの人数が集まり、それぞれ鍛錬や練習等をしている。王宮に世話になっている間に、騎士団の者達を少しでも使える様にしてやりたいとは思っている。さぁ！　始めようか。

    鎧を着て、先を潰した練習用の剣で殴り合う実践紛いのバトルだ。練習だからと気を抜くと大怪我をする。何人かの動きを見ながら、個々に教えていくのだ。たまには相手もするが、楽しくやり合えるのは、騎士団長他数人程度か……

     ロングソードの指導をしたり、体術の形を教えたりと、多岐に渡って教えていく。昔と違い此処では楽しくやり合える、昔は命の取り合いが全てだから、一瞬の油断で全てが終わる。そういう事も伝えてやれればと思っている。

　今の私の一番の心からの願いは、マシェリーと、あの花畑でのんびり過ごしたいだけだ……