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第4章 光の聖女ルート

17.警報レベルA

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(乙女ゲーにありがちの、2人のキャラのどちらと行動するか選ぶシーン!)


メリバエンド回避のために恋愛イベントをスキップしまくっていたルナに、回避不可のイベントが降りかかってきたということか。


(えーっとえーっと、硬派なヴィクター様がカフェでスイーツなんて、きっと調べてくれた気遣いも嬉しいし、おしゃれなリロイ様にアクセサリーを選んでもらえるのも素敵。選べるわけがない!)


それに、どちらか選んだ時に、選ばれなかった方がヤンデレモードになって、自分の身に危険が及ぶのも、避けたい。


天気の良い心地よい休日、街のど真ん中で、ガタイのいい騎士と銀髪の高貴な魔導士が、禍々しい空気を発しながら聖女に迫っている様子は、街中に緊張感が走っていた。

何か言わなければ。
最適な選択肢を模索するルナ。



「ええと、その、3人でランチでもしませんか」



ルナのセリフが、張り詰めた空気をさらに悪化させた。



「はあ? 本気で言ってんならセンスないね」


「同感だ。飯が不味くなる」



男2人がそれは無い、と否定してきた。


そういうところは気が合うのか、とルナが冷や汗をかいていると、



ビーーー、ビーーー、ビーーー!



耳をつんざく警報音が街中に流れた。

3人ともハッとして耳を澄ます。


『東の森にて魔獣発生。
 繰り返します、東の森にて魔獣発生。
 警報レベル暫定A。速やかに避難してください』



国境を見張っている魔術師が、音の魔法で街の全員に届くように警報音を鳴らしている。


途端、穏やかな休日の街の商店街に、人々の悲鳴が上がった。


「は、早く逃げなきゃ!」

「ローウェン城の丘の方に避難だ! 
 急げ、魔獣に殺されちまう!」


国は城壁で囲われ、常に見張りもおり、街の中に被害がないよう騎士と魔術師で防衛しているのだが、稀に強大な魔獣はその城壁を乗り越えて街を襲うこともある。


市民たちはそのための避難訓練を受けており、皆一斉に走り出す。

青果店の売り物のフルーツが地面に転がり、我先にと走る者が転んだりと、途端に街は騒然とした。


「警報レベルA……!?」


ヴィクターは顔を引き攣らせる。

魔獣の強さによりレベルAからEまで簡単に分類されるのだが、Aは一国や一兵団を殲滅してしまうほどの脅威なのである。


「……デートは今度にお預けだね」


リロイは肩をすくめて、ふうとため息をつく。

ルナは急な窮地に、自分の心臓の音が激しくなるのを感じていた。


市民たちが叫びながら城の方へ避難する中、ヴィクターは渦中の森の方へとすぐに走り出した。



「宿舎に戻ってる時間はない。
 俺はそのまま向かう!」


騎士団の宿舎は城の方だ。

戻って、防具を着て剣を持ち、馬に乗って向かう暇はないと判断したのか、ヴィクターは店主が避難し不在な防具店から、店先に置いてあった大剣を握り、走り出した。


一瞬で騎士の顔に戻ったヴィクターの背中が、みるみる遠ざかっていく。


「……軍の三分の一は今遠征中で不在、そして休日で非番の騎士も多い、か。
 召集までに15分はかかる。
 レベルA相手ではそれまで街は持たないだろうな、やれやれ」


瞬時に体が動くヴィクターとは裏腹に、リロイはぶつぶつとその聡明な頭脳で状況を分析している。


「たまたま近くに居合わせた非番の軍神と大魔術師が、食い止めるしかないか」


リロイはそう呟くと、剣を持ったヴィクターの背中に手のひらをかざし、魔法陣を放った。



「ワープするよヴィクター。僕も行く」



魔術師は基本は後方支援のため、先陣には行かない。

そのためヴィクターも1人で行こうと走り出したのだが、この緊急事態ではリロイも手を貸すつもりらしい。



「ああ、助かる」



足を止め素直に礼を言い、ヴィクターは青い光の魔法陣の中に止まった。

東の森まで一気にヴィクターとリロイでワープするらしい。


「君は戻って避難してな、ルナ」


じゃあね、とリロイが手を振り、魔法陣の光に照らされて、消える瞬間。

2人を見捨てて自分だけ避難することなんて、できない。


私が彼らを守りたい。



そう強く思ったルナは、考えるよりも体が動いてしまっていた。


ワープで消える瞬間、ルナはリロイの魔法陣の中へと飛び込んだ。
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