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第4章 光の聖女ルート
19.九死に一生
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再びマテリアドラゴンはこちらに狙いを定め、炎を吐こうとしている。
「ルナ、お前は俺が守る。
俺が相打ちでも、食い止める」
脇腹を押さえたヴィクターが、剣を構えふらつきながら立ち上がる。
「ヴィクター様……」
応急処置しかできなかったので、彼はまだ戦える状態ではない。
でも、愛する女を守るために命を賭ける覚悟のようだ。
「ふふっ、まあルナとここで一緒に死ねるなら、それもいい最期かもね」
銀髪をかき上げながら、諦め切ったようにリロイが肩をすくめる。
「そんな、諦めないでください、リロイ様!
ヴィクター様も、無理しないで」
ルナが、命をかけて相打ちする覚悟のヴィクターと、もう諦めて死ぬ気のリロイを鼓舞する。
「次は私が攻撃します!」
ルナは持っていた杖を構えて、翡翠の魔法石をドラゴンへと向ける。
聖女は、攻撃魔法が専門ではない。
足止めぐらいにしかならないだろうと、2人はルナの足掻きを横目に見るだけだった。
しかし、ルナは強い意志を持って魔獣に立ち向かった。
いつも守ってくれた二人を、今度は私が守りたい。
杖を持った腕に集中する。
真っ直ぐと、目の前に立ちはだかる強大な魔獣から目を逸らさない。
「魔力出力最大……標的は、約20メートル先、マテリアドラゴン……!」
ルナはぶつぶつと呟きながら、翡翠の石の埋め込まれた杖を強く握り締め、前に向ける。
「Release!」
大きな声で呪文を唱えた瞬間、魔石が眩く光った。
魔法陣がドラゴンの目の前の宙に広がり、チカ、チカ、と瞬いた後、
ドゴォぉぉォォォン!!!
耳をつんざくような音が鳴り、ビリビリと地響きと空気振動が響き渡る。
「え……?」
今まさに、ルナのかざした杖から、シュウゥ……と魔術の硝煙が上がっている。
マテリアドラゴンの体の中心には大きな穴が開き、周囲に体液が飛び散って、何百キロもある強大な体が地面に崩れ落ちた。
それだけではない。ルナの放った魔力の球は、深い森を一瞬で燃やし尽くし一本の大きな道が開けてしまっている。
焦げた匂いが鼻腔をくすぐり、突然の爆音で耳鳴りがする。
ルナはゆっくりと、後ろに立つ二人の男を振り返った。
珍しく、ローウェン国ラインハルト騎士団の最強の両翼である、軍神も大魔導士も、口をあんぐりと開けて唖然としていた。
「倒し、ちゃいました」
最強のマテリアドラゴンを倒すほど、毎日の地道なステータス上げが功を奏していたらしい。
死を覚悟していたヴィクターは、木が跡形もなく消えた道の先に倒れているドラゴンを呆然と見つめ、リロイは力が抜けたのか、地面に座り込み、あはは! と笑い声をあげている。
「最強の魔獣倒すなんて凄いじゃん、ルナ」
リロイがおかしそうに腹を抱えて笑っているので、なんだか恥ずかしくなってきた。
ヴィクターは眉を下げ、珍しく情けない顔をしていたが、
「……日頃の特訓の成果だ。さすがだな、光の聖女」
そう言って、緊張感が解けたように彼も笑っていた。
魔獣に殺されるか、大怪我を負ってしまい、共に戦場で心中するか。
メリーバッドエンドばかりのヤンデレ乙女ゲーにて、唯一ヒロインの死亡回避の手段、『世界平和に導く光の聖女ルート』に入った、瞬間だった。
「ルナ、お前は俺が守る。
俺が相打ちでも、食い止める」
脇腹を押さえたヴィクターが、剣を構えふらつきながら立ち上がる。
「ヴィクター様……」
応急処置しかできなかったので、彼はまだ戦える状態ではない。
でも、愛する女を守るために命を賭ける覚悟のようだ。
「ふふっ、まあルナとここで一緒に死ねるなら、それもいい最期かもね」
銀髪をかき上げながら、諦め切ったようにリロイが肩をすくめる。
「そんな、諦めないでください、リロイ様!
ヴィクター様も、無理しないで」
ルナが、命をかけて相打ちする覚悟のヴィクターと、もう諦めて死ぬ気のリロイを鼓舞する。
「次は私が攻撃します!」
ルナは持っていた杖を構えて、翡翠の魔法石をドラゴンへと向ける。
聖女は、攻撃魔法が専門ではない。
足止めぐらいにしかならないだろうと、2人はルナの足掻きを横目に見るだけだった。
しかし、ルナは強い意志を持って魔獣に立ち向かった。
いつも守ってくれた二人を、今度は私が守りたい。
杖を持った腕に集中する。
真っ直ぐと、目の前に立ちはだかる強大な魔獣から目を逸らさない。
「魔力出力最大……標的は、約20メートル先、マテリアドラゴン……!」
ルナはぶつぶつと呟きながら、翡翠の石の埋め込まれた杖を強く握り締め、前に向ける。
「Release!」
大きな声で呪文を唱えた瞬間、魔石が眩く光った。
魔法陣がドラゴンの目の前の宙に広がり、チカ、チカ、と瞬いた後、
ドゴォぉぉォォォン!!!
耳をつんざくような音が鳴り、ビリビリと地響きと空気振動が響き渡る。
「え……?」
今まさに、ルナのかざした杖から、シュウゥ……と魔術の硝煙が上がっている。
マテリアドラゴンの体の中心には大きな穴が開き、周囲に体液が飛び散って、何百キロもある強大な体が地面に崩れ落ちた。
それだけではない。ルナの放った魔力の球は、深い森を一瞬で燃やし尽くし一本の大きな道が開けてしまっている。
焦げた匂いが鼻腔をくすぐり、突然の爆音で耳鳴りがする。
ルナはゆっくりと、後ろに立つ二人の男を振り返った。
珍しく、ローウェン国ラインハルト騎士団の最強の両翼である、軍神も大魔導士も、口をあんぐりと開けて唖然としていた。
「倒し、ちゃいました」
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「最強の魔獣倒すなんて凄いじゃん、ルナ」
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「……日頃の特訓の成果だ。さすがだな、光の聖女」
そう言って、緊張感が解けたように彼も笑っていた。
魔獣に殺されるか、大怪我を負ってしまい、共に戦場で心中するか。
メリーバッドエンドばかりのヤンデレ乙女ゲーにて、唯一ヒロインの死亡回避の手段、『世界平和に導く光の聖女ルート』に入った、瞬間だった。
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