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第7章
3話 オバちゃんの対決
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コロシアムの中は、静まり返っていた。
「ん? 出し物、もう終わったのか? やけに静かじゃね?」
不思議そうに観客席を見回すリドルに、ガーズが顎をしゃくる。
「あれが理由だ」
「へっ? うっひゃー。こりゃ貴族や神官たちでも引くわー」
リドルとガーズの視線は、中央の競技場に向けられていた。
リコも目を向ける。そして、自分の目を疑った。
(こ、これは? なんなの……これが魔族王と腹心の闘い?)
そこには、グッタリしたウェアウルフを抱きかかえる傷だらけの魔族王。
そして、牙を剥き彼らに飛びかかろうとしている腹心フェンリルの姿が……。
リコはある程度、覚悟していたつもりであった。
傀儡石をつけられた腹心に、魔族王が一方的に痛めつけられてるだろう――と。
だが、この現状は――。
「あの女。魔族王をもっと苦しめる為に、ウェアウルフをダシに使いおったな」
リコの疑問を知ってか知らずか、ケツァルがぼそりと呟いた。
◆◆◆
「ま、魔族王様……私のことは……お捨て置きください」
ウェアウルフが力を振り絞り、魔族王に懇願する。
目を大きく見開く魔族王。
「な、何を言ってるの! 嫌だよ! 絶対、君を死なせたりしない!」
魔族王は、息も絶え絶えのウェアウルフを必死に抱き締めた。
――パチ、パチ、パチ、パチ。
拍手の音が鳴り響く。
女王であった。
彼女は恍惚とした表情で、拍手を送りながら魔族王のもとへと向かう。
魔族王の目前に立つと、女王は残酷な笑みを浮かべた。
「とっても感動するシーンだわ。ワタシ、泣いちゃうかと思った。どう? この趣向は? 腹心のフェンリルに、仲間であるウェアウルフを虐殺させる。そしてアンタは為す術もなく、ただ見ていることしか出来ない……ふふっ。素晴らしいでしょう?」
「……なんで……なんでこんな酷いことをするの? ボクが憎いんでしょう? だったら、ボクだけ苦しめればいい! 彼らを……魔族を苦しめないで!」
魔族王は、腕の中のウェアウルフに顔を埋め肩を震わせた。
「アハッ! アンタのそういう姿が見たいからよ!」
手を叩き、はしゃぐ女王。
魔族王は顔を上げると、憎しみを込めた目で女王を睨みつけた。
女王は目を丸くする。
「なーに? アンタ、そんな顔も出来るの? 生意気ー。あはははは!」
そんな中、女王の高笑いを邪魔する叫び声が上がる。
「そそ、それは誠かっ!」
騎士から盗人の報告を受けた神官であった。
女王は舌打ちして、神官を睨めつける。
「いいところだったのに……一体、何! どうしたのよ!」
神官は、弾かれたようにガタッと客席から立ち上がる。
「じょ、女王陛下のお飼いになられている生き物が……そそそ、その……ぬぬ、盗まれそうになりまして……」
「はぁ?」
「ここにいる不届き者が……」
神官が、リドルとガーズを指さした。
二人に鋭い視線を向ける女王。その視線を、二人を挟むように立つ騎士――リコとカイルに移し、命令する。
「お前たち、ソイツらをこっちに連れてらっしゃい」
リコとカイルは、命令通りリドルとガーズを女王の前に連れて行くと、騎士よろしく跪いた。
女王が、リドルとガーズをまるで値踏みするように眺め、鳥籠を顎でしゃくる。
「アンタたち、それ盗んでどうするつもり?」
リドルは、あっけらかんと答える。
「えーと。オレたち金に困っててー、女王陛下のペットなら高く売れるかなぁと」
「ハッ! バカが考えそうなことね! くっだらない!」
女王が鼻を鳴らし、蔑むように吐き捨てた。
リドルは、気にする素振りも見せずに嘯く。
「いやー、それにしても女王陛下は噂通りの方だー。こんなえげつないこと、よく平気で出来ますよねー。オレみたいなバカには考えられないわー」
ガーズもここぞとばかりに、コクコクと頷きながら参戦する。
「まったくだ! 一体、どういう神経してるんだか。嫌な女だ! 悍ましくて吐き気がする」
「な、なんですって!」
眉を鋭利に吊り上げる女王。
そんな女王にリドルはせせら笑う。
「女王陛下ってー、極悪人? あっ、違ったー! 鬼畜ッスよねー。あはははは!」
女王は顔を醜く歪ませ、ツカツカと前に進み、勢いよく手を振り上げた。
そして、リドルめがけて振り下ろした瞬間、その手を横に控えていた騎士――カイルに掴まれる。
「なっ!」
女王は振り解こうとするが逆に引っ張られ、カイルに羽交い締めにされた。
「は、離しなさい! お前! こんなことしてただじゃ――」
「ただじゃおかない……とでも?」
もうひとりの騎士――リコが籠手を外しながら、女王と向かい合う。
リコの目が、女王の顔を真正面から捉えた。
(こいつが諸悪の根源か。やっとお目にかかれたよ。それにしても……ケッ。随分と挑発的なボディをお持ちな美女だこと……)
兜の奥から殺気混じりの視線――若干、嫉妬を含む――を放つリコ。
女王が整った顔を引き攣らせながら、負けじとリコを怒鳴りつける。
「おお、お前! ど、どういうつもりよ!」
そんな女王の顔に、リコは兜を近づける。
「どうもこうもない。ただお前……かなりムカつくんだよ」
「なっ――」
目を血走らせ、口をワナワナと震わせる女王。
リコは彼女の耳元で囁く。
「今のお前、かなり醜いよ。顔は心の鏡なんだ。その醜い顔が素なんだね?」
「ワタシに向かってよくもそんな口を――」
「あーはいはい。うるさいし時間がもったいないね。早速、試させて貰うよ」
そう言うとリコは、女王の胸元にある『ドラゴン・ジュエル』をムンズと掴んだ。
リコの掌の中で『ドラゴン・ジュエル』は眩い閃光を放つ。
次ぎの瞬間。
――パリン。
乾いた音と共に『ドラゴン・ジュエル』は、粉々に砕け散り姿を消した。
すると同時に――地を揺るがす程の咆哮が上がる。
「ウオオオオオォォォォォォッーーーッ!」
咆哮の主は、美しい極彩色のドラゴン。
ターコイズ・ブルーの翼をはためかせ、己の存在をまるで天と地に知らしめるかの如く吠え続ける。
その隣にはもう一匹、赤く鋭い角を二本生やした真っ白なドラゴンが、サソリのような尻尾を悠然と揺らしていた。
女王は、彼らの姿に大きく目を見開いた。
そして『ドラゴン・ジュエル』の消えた胸元を掻き抱き、絶叫を上げる。
「いやああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
女王は、為す術もなくその場に蹲る。
――阿鼻叫喚となるコロシアム。
途轍もない二匹の魔獣の出現に、貴族や神官、騎士たちはまるで蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
誰一人、女王に手を差し伸べることもせずに――。
観客を失ったコロシアムは、その役目を終え沈黙した。
「ん? 出し物、もう終わったのか? やけに静かじゃね?」
不思議そうに観客席を見回すリドルに、ガーズが顎をしゃくる。
「あれが理由だ」
「へっ? うっひゃー。こりゃ貴族や神官たちでも引くわー」
リドルとガーズの視線は、中央の競技場に向けられていた。
リコも目を向ける。そして、自分の目を疑った。
(こ、これは? なんなの……これが魔族王と腹心の闘い?)
そこには、グッタリしたウェアウルフを抱きかかえる傷だらけの魔族王。
そして、牙を剥き彼らに飛びかかろうとしている腹心フェンリルの姿が……。
リコはある程度、覚悟していたつもりであった。
傀儡石をつけられた腹心に、魔族王が一方的に痛めつけられてるだろう――と。
だが、この現状は――。
「あの女。魔族王をもっと苦しめる為に、ウェアウルフをダシに使いおったな」
リコの疑問を知ってか知らずか、ケツァルがぼそりと呟いた。
◆◆◆
「ま、魔族王様……私のことは……お捨て置きください」
ウェアウルフが力を振り絞り、魔族王に懇願する。
目を大きく見開く魔族王。
「な、何を言ってるの! 嫌だよ! 絶対、君を死なせたりしない!」
魔族王は、息も絶え絶えのウェアウルフを必死に抱き締めた。
――パチ、パチ、パチ、パチ。
拍手の音が鳴り響く。
女王であった。
彼女は恍惚とした表情で、拍手を送りながら魔族王のもとへと向かう。
魔族王の目前に立つと、女王は残酷な笑みを浮かべた。
「とっても感動するシーンだわ。ワタシ、泣いちゃうかと思った。どう? この趣向は? 腹心のフェンリルに、仲間であるウェアウルフを虐殺させる。そしてアンタは為す術もなく、ただ見ていることしか出来ない……ふふっ。素晴らしいでしょう?」
「……なんで……なんでこんな酷いことをするの? ボクが憎いんでしょう? だったら、ボクだけ苦しめればいい! 彼らを……魔族を苦しめないで!」
魔族王は、腕の中のウェアウルフに顔を埋め肩を震わせた。
「アハッ! アンタのそういう姿が見たいからよ!」
手を叩き、はしゃぐ女王。
魔族王は顔を上げると、憎しみを込めた目で女王を睨みつけた。
女王は目を丸くする。
「なーに? アンタ、そんな顔も出来るの? 生意気ー。あはははは!」
そんな中、女王の高笑いを邪魔する叫び声が上がる。
「そそ、それは誠かっ!」
騎士から盗人の報告を受けた神官であった。
女王は舌打ちして、神官を睨めつける。
「いいところだったのに……一体、何! どうしたのよ!」
神官は、弾かれたようにガタッと客席から立ち上がる。
「じょ、女王陛下のお飼いになられている生き物が……そそそ、その……ぬぬ、盗まれそうになりまして……」
「はぁ?」
「ここにいる不届き者が……」
神官が、リドルとガーズを指さした。
二人に鋭い視線を向ける女王。その視線を、二人を挟むように立つ騎士――リコとカイルに移し、命令する。
「お前たち、ソイツらをこっちに連れてらっしゃい」
リコとカイルは、命令通りリドルとガーズを女王の前に連れて行くと、騎士よろしく跪いた。
女王が、リドルとガーズをまるで値踏みするように眺め、鳥籠を顎でしゃくる。
「アンタたち、それ盗んでどうするつもり?」
リドルは、あっけらかんと答える。
「えーと。オレたち金に困っててー、女王陛下のペットなら高く売れるかなぁと」
「ハッ! バカが考えそうなことね! くっだらない!」
女王が鼻を鳴らし、蔑むように吐き捨てた。
リドルは、気にする素振りも見せずに嘯く。
「いやー、それにしても女王陛下は噂通りの方だー。こんなえげつないこと、よく平気で出来ますよねー。オレみたいなバカには考えられないわー」
ガーズもここぞとばかりに、コクコクと頷きながら参戦する。
「まったくだ! 一体、どういう神経してるんだか。嫌な女だ! 悍ましくて吐き気がする」
「な、なんですって!」
眉を鋭利に吊り上げる女王。
そんな女王にリドルはせせら笑う。
「女王陛下ってー、極悪人? あっ、違ったー! 鬼畜ッスよねー。あはははは!」
女王は顔を醜く歪ませ、ツカツカと前に進み、勢いよく手を振り上げた。
そして、リドルめがけて振り下ろした瞬間、その手を横に控えていた騎士――カイルに掴まれる。
「なっ!」
女王は振り解こうとするが逆に引っ張られ、カイルに羽交い締めにされた。
「は、離しなさい! お前! こんなことしてただじゃ――」
「ただじゃおかない……とでも?」
もうひとりの騎士――リコが籠手を外しながら、女王と向かい合う。
リコの目が、女王の顔を真正面から捉えた。
(こいつが諸悪の根源か。やっとお目にかかれたよ。それにしても……ケッ。随分と挑発的なボディをお持ちな美女だこと……)
兜の奥から殺気混じりの視線――若干、嫉妬を含む――を放つリコ。
女王が整った顔を引き攣らせながら、負けじとリコを怒鳴りつける。
「おお、お前! ど、どういうつもりよ!」
そんな女王の顔に、リコは兜を近づける。
「どうもこうもない。ただお前……かなりムカつくんだよ」
「なっ――」
目を血走らせ、口をワナワナと震わせる女王。
リコは彼女の耳元で囁く。
「今のお前、かなり醜いよ。顔は心の鏡なんだ。その醜い顔が素なんだね?」
「ワタシに向かってよくもそんな口を――」
「あーはいはい。うるさいし時間がもったいないね。早速、試させて貰うよ」
そう言うとリコは、女王の胸元にある『ドラゴン・ジュエル』をムンズと掴んだ。
リコの掌の中で『ドラゴン・ジュエル』は眩い閃光を放つ。
次ぎの瞬間。
――パリン。
乾いた音と共に『ドラゴン・ジュエル』は、粉々に砕け散り姿を消した。
すると同時に――地を揺るがす程の咆哮が上がる。
「ウオオオオオォォォォォォッーーーッ!」
咆哮の主は、美しい極彩色のドラゴン。
ターコイズ・ブルーの翼をはためかせ、己の存在をまるで天と地に知らしめるかの如く吠え続ける。
その隣にはもう一匹、赤く鋭い角を二本生やした真っ白なドラゴンが、サソリのような尻尾を悠然と揺らしていた。
女王は、彼らの姿に大きく目を見開いた。
そして『ドラゴン・ジュエル』の消えた胸元を掻き抱き、絶叫を上げる。
「いやああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
女王は、為す術もなくその場に蹲る。
――阿鼻叫喚となるコロシアム。
途轍もない二匹の魔獣の出現に、貴族や神官、騎士たちはまるで蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
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