オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水

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第2章

3話 オバちゃんの浅慮

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 黙々と歩くリコ。その肩に乗るケツァルも無言である。
 メグルに「村の案内は明日にしよう」と言われ、リコたちはダンの家へと戻る途中であった。
 淀んだ空気がリコたちを取り巻いている。
 突然、リコは立ち止まり、胸に渦巻くものを吐き出した。

「さっきのは……何? ……一体なんだったの? なんであんな酷いこと――」

 また暫しの沈黙が流れ、やがてケツァルがその重い口を開く。

「あの村人は死ぬ運命じゃった……運命をエルフが曲げてしまったから、その報いを受けのじゃ……」

 リコの脳裏にあの悍(おぞ)ましい光景が甦る――干からびて死んだエルフの姿。
 震える身体を抑えながら、リコは納得いかない胸の内をケツァルにぶつける。

「何それ? なんでそんな報いがあるの! 死にそうな人を助けて何が悪い! 医者だって助けるじゃない。エルフがそれをしても同じことでしょう?」

「違う。医術には限界がある。医者がどんなに手を尽くしても死ぬ者は死ぬ。それがその者の運命だからじゃ。だが魔力は違う。万能なのじゃ。どんな者でも助けてしまえる」

 ケツァルはここで話を一旦区切ると、まるで諭すような目でリコを見つめた。

「リコよ……よく考えてみるのじゃ。もし死ぬ者がいなくなったらどうなる? 世界の均衡が崩れてしまうじゃろう? ……生まれる者がいるから死ぬ者もいる。それが世の理じゃ。それは決して曲げてはならん」

 世の理――言われて見ればその通りである。

 死はとても悲しいし、怖いものだ。出来ればなくなって欲しい。
 けれど、もし本当に死がなくなったら?
 人は永遠に生き、人口を増やし続け、やがて――どうなってしまうのだろう。想像もつかない。理不尽だけど、その方が途轍もなく恐ろしい気がする。
 それに死があるからこそ生に感謝し、命を大切に出来るのだ。
 現実はそう甘くない。リコは一気に夢から覚めた感じがした。

 だがここで、もう一つ疑問が生まれる。

 報いを受けるとわかっているのに、なぜエルフは怪我人を助けたのだろう。それにあの様子……。
 リコがその疑問を口にすると、ケツァルも「うむ」と頷く。

「中には愛する者の為に、自らを犠牲にする者もおるが……アレは違う。アレはまるで人形のようじゃった……どうもあの赤い石が怪しいと思うのじゃが……」

 ケツァルにも、はっきりとした答えが見つからないのか言葉を濁した。
 ここで考えていても一向に埒(らち)が明かない。
 リコとケツァルは、答えを教えてくれそうなダンを家で待つことにした。
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