恋する電脳Cybernetics~君の名はMARIA~【若き天才プログラマー×高知能AIアンドロイド美少女】

水沢緋衣名

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第一章 若き天才と高知能AIアンドロイド

第三話

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 真生も綾香も最初は仲睦まじかった。綾香がアンドロイドが欲しいと言いだした時にも、真生は親身に相談に乗ったりした。綾香の家のアンドロイドを選んだのは真生である。
 二人は上手くいっていた。何事も無く順調に交際をしているように思えた。
 けれど真央と綾香は交際半年で、綾香から別れを切り出される形で別れたのだ。
 
 
 綾香は別れを決めた理由を、真央に話してはくれなかった。
 
 
 綾香ともう関わる事も無いだろう。話す事も目を合わせる事も。心なんて絶対に通わせるのは無理だろう。
 同じ大学を受ける為に通っていた塾で出逢っている為、大学が同じである事は仕方ないとお互いに思っていた。
 けれど二人は大学の研究室で、仲間として関わらざる得なくなったのだ。
 
 
 共通の趣味で出逢った二人だったが、今度は共通の趣味でお互いの首を絞め合う。
 別れてもう四年以上の月日が流れているにも関わらず、二人の関係性は今だにギクシャクした儘だった。
 
 
 そんな綾香の今の恋人は幹彦。幹彦はスポーツ推薦で学校に入った男だった。
 幹彦は綾香の隣にべったりと貼り付き、事あるごとに真生に苦言を言いに来る。真生は幹彦の事が大嫌いだった。
 
 
「…………穂積君、お疲れ様。授賞おめでとう」
「…………ああ」
 
 
 綾香の挨拶に対して、眼鏡を押し上げながら雑な返答を返す。
 幹彦は意気揚々とした様子で真生に笑いかけた。
 
 
「穂積君、結構緊張してたよねぇ!!声とか聴いてて解ったよ!!」
「…………ああ、まぁそりゃね。あんな場だし………」
 
 
 真生は少しだけ苛立ちつつも、適度にその場を流す。
 真生にあしらわれた幹彦は、マリアの方に目を向け、品定めをするかのように視線を巡らせた。
 マリアは不思議そうな表情を浮かべ、首を傾げる。幹彦は真生を揶揄する様に笑った。
 
 
「…………穂積君とこのロボットさぁ、綺麗だよねェ。あれでしょ?このロボットってさ、セックス目的に使ったりとかしてる人いるんでしょ??
…………穂積君もそういう事したりするの?」
 
 
 流石の真生も幹彦の発言に腹が立ち、何かを言い返そうと考える。
 けれど綾香が物凄い剣幕で幹彦を制したのだ。
 
 
「…………幹彦、失礼よ!私は貴方にそんな事言わせる為に、此処に連れてきたんじゃないから」
「ん、ああ。ごめんね穂積君。………授賞おめでとう」
 
 
 綾香は幹彦の腕を引っ張り、引き摺る様に控室から出てゆく。
 急に不機嫌そうになった真生を見て、マリアは露骨に焦った表情を浮かべていた。
 腹立たしい男だと真生は思う。だが自分を気遣うマリアは天使の様に思えたのだ。
 自分の隣で慌てるマリアを見ていると、苛立った気持ちはとても落ち着いてくる。
 愛くるしい小動物を見ている様な優しい気持ちになれた。
 真生はマリアのプラチナブロンドの髪の頭を撫で、小さく微笑んだ。
 
 
 絹の様な触り心地。この後のパーティーの予定が無かったなら、ずっとこの髪を撫でていたに違いない。
 真生は必死で自分を律し、己を奮い立たせたのだ。
 
 
「……………ん、平気だよ。有難うマリア。さぁ、パーティーに行こう」
 
 
 マリアの細い腰に手を回し、静かに控え室を後にする。真生は慣れない煌びやかな空間の中を、震える脚を踏み締めながら闊歩した。
 
 
***
 
 
 適当に立食パーティーを遣り過ごしながらも、真生は仄かに不機嫌なままだ。
 朗らかに話をしながらも、腸が煮えくり返っているのが良く解った。
 その場はなんとかやり過ごせたものの、時間が立つとまた苛立ちが沸き上がる。
 頭の中で延々と繰り返されるのは、さっき吐き捨てられた幹彦の言葉だった。
 
 
『…………穂積君とこのロボットさぁ、綺麗だよねェ。あれでしょ?このロボットってさ、セックス目的に使ったりとかしてる人いるんでしょ??
…………穂積君もそういう事したりするの?』
 
 
 立食パーティーの終わりにマリアを連れ、ホテルの部屋に入る。
 自分の授賞の祝いがてら、立食パーティーを行うホテルに宿泊の予約を入れていた。
 夜の街の繁華街のネオンは美しく、まるで星空が落下してきた様だ。美しい夜景を見下ろしたマリアは邯鄲の息を漏らした。
 
 
「ご主人様……!!窓の外すっごく綺麗です…………!!」
 
 
 ネオンの明かりに照らされ、造り物の空色の光彩がキラキラと輝く。
 視界に拡がる美しい光景より、自分の目の前のマリアがただただ美しい。
 真生はマリアの肩を抱き寄せ眼鏡を外す。そして静かに彼女の虹彩を覗き込んだ。
 
 
「そうだね…………綺麗だ…………」
 
 
 真生はマリアのコーラルピンクの唇に唇を重ねながら、幹彦に対してこう思う。
 こんなに美しい存在に対して、劣情を抱かない訳がないだろうが、と。
 自分がとうに『狂っている』という自覚はある。真生は既に赦されざる禁忌を犯していたのだ。
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