恋する電脳Cybernetics~君の名はMARIA~【若き天才プログラマー×高知能AIアンドロイド美少女】

水沢緋衣名

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第四章 心変わりは人の世の常

第九話

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 綾香がロイと関係を持っていたとすれば、それは一体何時からだったのだろうか。
 真生は別れ話をしてきた日の綾香の姿を頭に思い返す。
 夏服のセーラーを着た綾香は、涙に濡れた目を擦り『ごめんなさい』とだけ口にした。
 降り注ぐ様な蝉時雨と、夏の匂いのするアスファルト。
 胸が押し潰されそうに痛むのに耐えながら、幹彦の言葉に耳を傾けていた。
 
 
「…………わざと急に家に行った時、あのアンドロイドの唇に綾香の口紅が付いてるのに気付いたんだ。
………キス位なら普通にするもんだって言い聞かせてたけど…………。
もう違う。あのアンドロイドとの関係は常軌を逸してる…………」
 
 
 確かに距離が近いとは感じていた。尋常じゃない距離感で接している。
 けれどもし二人が一線を超えていたのであれば、何時超えていたのだろうと真生は思う。
 もしかすると別れを切り出されたその時には、二人の関係は乱れていたのかもしれないのだ。
 アンドロイド相手に出し抜かれていたのかと、真生は情けなさと不甲斐なさで心が重い。
 手に持っていた紙コップの中の珈琲が、次第に冷めてゆくのが手にとる様に解った。
 
 
「…………穂積君、本当ごめんね。俺、穂積君の事探ったし、酷い事云ったから。
俺近々綾香と話し合いすると思う。今度ゆっくり謝罪させて」
 
 
 幹彦はそう告げて、真生に背中を向けて去ってゆく。
 すると幹彦が消えた廊下の反対方向から、誰かが駆けてくる足音が響き渡った。
 
 
「……………真生さんっ!!」
 
 
 聞き慣れた声色に真生は身体を跳ね上げる。声の方を向けば、ハァハァと息を切らせたロイが立っていた。
 ロイの姿を見たとき、真生の頭の中にさっき聞いた事が甦る。
 真生がロイに言い知れぬ不信感を抱いた瞬間、ロイが叫んだ。
 
 
「真生さんっ!!研究室に戻って…………!!橋本さんと美桜さんが…………病院に運ばれて…………!!」
「………………は?!」
 
 
 二人が一緒に病院で運ばれたとは、一体何事なんだろうか。
 真生はロイの後を追い掛け廊下を走り、研究室の方へと向かう。
 研究室には教授と見知らぬスーツの男が立っていた。
 ガッチリとした体格と黒い短髪。柴犬の様な眼差しは何処か親しみを覚える。
 男は真生を一瞥するなりぺこりと深く頭を下げる。そして真生の目の前に警察手帳を差し出した。
 
 
「…………私サイバー科担当の前嶋睦月まえしまむつきといいます。宜しくお願い致します。
幾つかお話の方をお伺いしたいのですが、宜しいでしょうか?」
 
 
 警察の人間が真生に話をしにきたなんて、事態が全く飲み込めない。
 戸惑う真生を横目にした前嶋は、深く溜め息を吐いた。
 
 
「お友達の橋本さんの家のアンドロイドが、橋本さんも山口さんも傷付ける事件が起きました。二人は重傷で、山口さんの意識はまだ戻らない…………。署迄ご同行お願い出来ますか?」
 
 
 そう言われた瞬間に真生の身体から一瞬にして血の気が引く。
 ショックで今にも倒れそうだが必死に足を踏みしめる。真生は懸命に己を保った。
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