恋する電脳Cybernetics~君の名はMARIA~【若き天才プログラマー×高知能AIアンドロイド美少女】

水沢緋衣名

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第五章 冷たい鉄の塊

第九話

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「おはよう」
 
 
 真生が挨拶をするよりも先に、綾香が真生に声を掛ける。
 博嗣がエナに襲われた日から一週間、真生は綾香に挨拶を繰り返していた。
 その甲斐もあってか、綾香は付き合う前と迄はいかないが、真生と少し会話をしてくれる様になっていた。
 
 
「………おはよう!!」
 
 
 真生は綾香に挨拶をして優しく微笑みかける。綾香の隣に立っているロイにも小さく手を振った。
 ロイは何時も通りに真生に笑い返し、パタパタと手を振り返す。
 あとは研究室のメンバーが元気に戻って来てくれたらいいと思う。
 パソコンに向かって腰かけた真生は、何時も通りの作業を始めようとキーボードに触れる。
 すると綾香が真生の方に向き、真生の背中を指で突いた。
 
 
「…………ねぇ聞いて!!美桜が昨日の夜に連絡をくれたの!!もう二人とも面会出来るって!!」
 
 
 真生は綾香の方に振り返り目を丸くする。真生はこの時に二重の意味で喜んでいた。
 まずは美桜が意識を取り戻した事。そしてもう一つは綾香が友達の様に接してくれる事だ。
 
 
「…………良かった………!!!凄く安心したよ…………!!」
「穂積君、心配だったでしょ?貴方何処のアンドロイドにも気を掛けてるから、二重に辛かったんじゃないかしらって。
安心したんだったなら、本当に良かった」
 
 
 真生と綾香は和やかな会話で士気を上げ、作業に真剣に取り掛かる。
 博嗣と美桜が戻って来たら、直ぐに作業に取りかかれる様に、自分達で出来る作業は進めてゆく。
 ふと振り返ると綾香とロイがいる。仲睦まじく笑い合う二人。真生は二人の姿を見て安堵した。
 
 
***
 
 
 何もかもが真っ白で気が狂いそうになる病室。真っ暗よりも真っ白な方が狂気を感じる。
 その中で唯一、彩りがあるものは窓の外の景色。
 大きな窓を横目にした真生は、それが額縁の様だと感じていた。
 ベッドサイドの椅子に腰掛け、博嗣と対峙する。
 顔中にガーゼを張り巡らせ、真生の持ってきた飲み物を口に運ぶ。博嗣は露骨に落胆している様子だった。
 
 
「……………大丈夫?」
「おぅ」
 
 
 何時もなら進む筈の会話が全くうまく進まない。今日の博嗣からは、会話のキャッチボールをする気が感じられないのだ。
 まるで拒否をされている様だと真生は思い、少しだけ焦る。
 そんな真生の様子を横目に見ていた博嗣が、深い溜め息を吐いて俯いた。
 
 
「……………………俺、エナの事壊しちゃった」
 
 
 博嗣はまるで『人を殺した』様な雰囲気だ。
 博嗣は真生に詳細に、自分の身に起きた事を吐き出してゆく。
 真生はそれを否定も肯定もせずに聞き入れ、ただ心の深い場所で受け止めた。
 
 
「………少し気になることはさ、エナが最期に云った言葉が『貴方も私を裏切るの?』だったんだ。
あれ、なんだったんだろう。バグなのかな………。エナを裏切ったのは俺だけなのにな………」
 
 
 ある程度博嗣が話を終えた頃には、窓の外はもう夕闇だ。帰り支度をする真生に、作り笑いの博嗣がこう言った。
 
 
「……………今度さ、美桜に会いに行ってあげてよ。アイツ凄い寂しがってて、同じ病院なのに連絡凄いから」
「そうなんだ…………まぁ、この状態は心細いよな」
「うん。でも、病室にアンドロイド絶対にいれるなって。
うちの彼女、今アンドロイド怖いらしい。…………まぁ、仕方ないよな」
 
 
 博嗣が美桜を『うちの彼女』と称したのを聞きながら、真生は悲しい感情を噛み締める。
 真生は静かに相槌をうち、博嗣のいる病室を後にした。
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