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喋喋喃喃
喋喋喃喃 第二話
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水曜日の15時が訪れて、いつも通りにドアを開く。するとドアの向こうには、可愛らしい水色のプレゼントボックスを手にしたオグロが立っている。
オグロはいつもかっちりしたスーツ着て、パティスリーショップにやってくる。今日のオグロは灰色のストライプのスーツを着ていた。
口元は相変わらず、黒いマスクで隠している。
『身体はひたすらにケーキの肉を求めて、そのうちその事しか考えられなくなって、狂ってしまうんだよ。
ケーキの肉を口にしてしまったフォークの未来には、幸せが無い』
浅間先生の言葉を思い出してしまえば、オグロの顔を見るのが辛い。するとオグロは心配に首を傾げて俺の顔を覗き込む。
だから俺は首を左右に振り、オグロに自分から抱き付いた。
慌てたオグロが俺をプレイルームの中に突っ込んで、静かに後ろ手でドアを閉める。
オグロは秘密の話をするかの様に、こっそりと俺の耳元で囁いた。
「………どうしたゼノ?何かあったか?」
俺はオグロの頬を撫でて、指先でマスク越しの傷痕を撫でる。そして首を左右に振ってから、オグロの胸に顔を埋めた。
「怖い夢を見たんだ。それだけだよ………」
オグロの未来に幸せが無いというのであれば、せめて俺と一緒にいるときだけは煌びやかな夢を見せてあげたい。
俺はそう思いながら、オグロの手を取った。
ベッドの方に引っ張ってオグロの身体を引き倒せば、オグロが慌てたようにプレゼントボックスを庇う。
そしてオグロは怒ったような表情を浮かべて、それでも少し嬉しそうにこういった。
「馬鹿………プレゼント滅茶苦茶になるだろ?せめて格好良く渡させてくれ」
ゆっくりとベッドの上で起き上がり、オグロが手にしているプレゼントボックスを手に取る。
そして俺は首を傾げて、オグロに微笑んだ。
「……………これ、俺にくれるの?」
オグロは頬を真っ赤に染めて、こくりと頷く。水色の箱に深い青のリボン。リボンを解いて箱を開けば、箱の中からチョコレートで出来た箱が出てくる。
その箱はリボンも薔薇の花もミルクチョコレートで出来ていた。チョコレート独特の甘い香りが立ち込めて、思わず笑みが零れる。
その箱を手に取り上にあげれば、中から宝石のようなチョコレートが出てきた。
「すげぇ……ありがとう………!!」
はしゃぐ俺を見ながら、オグロがベッドで頬杖をつく。そして笑ってから目を伏せた。
「俺、味は解らねぇから。美味しくなかったら申し訳ないけど」
俺はオグロの目の前でチョコレートを一粒口に入れる。口に広がるココアと紅茶の香り。それに優しい甘さ。
「美味しいよ、ちゃんと……」
俺の言葉にオグロは安心した表情を浮かべ、深く息を吐く。そんなオグロを見ていた時に、俺は良い事を思いついた。
チョコレートを唇に挟んで、反対を軽く舐め上げる。
そして頬杖をついて俺を見ているオグロのマスクを指で下げた。
オグロに顔を近付けて、口元にチョコレートを差し出す。すると状況が飲めないでいるオグロが、頬を真っ赤に染めて目を見開いた。
「え……あ……!!俺は、俺は別に………!!」
拒否をしようとするオグロに、不敵に笑い顎を上にわざとあげて見せる。
オグロは仕方なさそうな表情をわざと浮かべながらも、唇で俺の口元のチョコレートを受け取った。
唇と唇が掠める程度の接触をして、オグロが自分の口元を手で隠す。
そして茹蛸みたいに真っ赤に頬を染め上げながら、目を背けてこう言った。
「………美味しい」
オグロの返事に俺は満面の笑みを浮かべて笑う。
煌びやかな夢を魅せる。甘くて美味しい煌びやかな夢。俺が見せる夢の中で、オグロが幸せになれたらいい。
オグロの身体を俺の方に引き寄せて、オグロが俺に覆い被さるような体勢になる。
その体勢のままで、もう一粒チョコレートを手にして、同じように唇に挟む。
オグロの綺麗な瞳を覗き込みながら、チョコレートを差し出す。するとオグロは恥ずかしそうにしながらも、そのチョコレートを唇で受け取った。
全てが甘い幸せな世界に溺れながら、オグロの身体を抱きしめる。
そしていつも通りに抱き合って、オグロは俺の隣に寝転がる。そして恥ずかしそうに呟いた。
「お前がいると、何だか世界が色付いて見える」
オグロの言葉はとても嬉しい言葉であり、悲しい言葉でもある。
つまりオグロは今の今まで、生きてきた世界が色付いていないということだ。
この綺麗な瞳の中には、今までどんな景色を映してきたというのだろう。
「ふふ、これからももっと綺麗な世界になるよ」
そう囁いてオグロの髪を撫でれば、オグロは幸せそうな表情を浮かべて目を閉じる。
オグロが寝息を立て始めたのを確認しながら、俺も静かに目を閉じる。
夢を見よう。綺麗な夢を。極彩色で幸せな楽園みたいな甘い夢を。
この日幸せな夢を観た。内容は起きたら覚えてなんていなかったけれど。
真っ赤な天井と真っ赤な壁に囲まれながら、ひと時だけの穏やかな時間を過ごす。
俺はこの日にオグロから、それなりに穏やかで幸せな時間をもらっている事に気が付いた。
***
「ゼノちゃんさー、なんか変わった事なかったぁ?」
そう言ってバスローブを着た京條さんが俺の顔を覗き込んでくる。
多分京條さんが俺から聞き出したい変わった事は、オグロの事だろう。
「毎日が変わった事まみれで、飽きないですよ」
俺はそう言いながら京條さんをはぐらかせば、京條さんがふふっと笑う。
多分京條さんには、オグロがパティスリーショップに出入りしているのはバレている。
この様子だと、様子を伺いに来たに違いない。
「いいねぇ、ゼノちゃんのそういうとこ。だから俺、ゼノちゃん好きなんだよな」
そう言いながら、京條さんは俺の唇に唇を重ねた。
今日呼び出されたホテルの壁の色は、ほんの少しだけ青味がかった白だ。このホテルは全体的に少し機械的な色味がしている。
天井に光るシャンデリアの色合いも、銀色で少し冷たい雰囲気だ。
京條さんが俺に舌を差し出すのを見ながら、俺はその舌に舌を絡ませる。口内に突っ込んでまるでしゃぶるように舐め回せば、京條さんが吐息を吐いた。
「ふ………ゼノちゃんやっぱ舌使いうまいね………」
そう囁いてから俺の頭を抑え込んで、京條さんは俺の口の中に舌をねじ込む。
その瞬間京條さんに攻められることに慣れ親しんだ身体は、思わず感じてしまい邯鄲の声を漏らした。
「んあっ…………!!!」
身体を震わせながら見上げれば、京條さんはほんの少しだけ冷ややかな眼差しで囁く。
「オグロはまだ、ゼノちゃんがこんなに淫らな事知らないんだよなぁ………」
そういって悪趣味に笑う京條さんを見ながら、やはり知られていたことを理解する。ほんの少しだけ呆れて見せれば、京條さんがそんな事をお構いなしに俺の身体に舌を這わせた。
京條さんは俺の身体の何処がどんな風に感じるものかを解っている。だからこそ的確に俺も理性を失える。
「ん………!!!あっ……は……!!!」
俺の胸元をまさぐりながら、後ろから淡く噛んでゆく。そして俺の背中の傷痕に舌を這わせて、俺の耳元で囁いた。
「ゼノちゃんが何処まで壊れちゃうのか、俺に沢山見せて………??」
京條さんはそう囁いて俺の入り口に何かを擦り付ける。すると仄かに、俺の入り口が疼いた。
「っ………京條さんこれ……な………に…………?」
思わず京條さんの方に振り返れば、京條さんは悪趣味な笑みを浮かべて笑う。
「中、熱くなってくるでしょ?ムズムズして。淫乱なゼノちゃんが、俺のが欲しいっておねだりしたくなるお薬」
京條さんはそう囁きながら、俺の身体に拘束具を付けてゆく。そして俺は今夜も京條さんに壊される覚悟をした。
オグロはいつもかっちりしたスーツ着て、パティスリーショップにやってくる。今日のオグロは灰色のストライプのスーツを着ていた。
口元は相変わらず、黒いマスクで隠している。
『身体はひたすらにケーキの肉を求めて、そのうちその事しか考えられなくなって、狂ってしまうんだよ。
ケーキの肉を口にしてしまったフォークの未来には、幸せが無い』
浅間先生の言葉を思い出してしまえば、オグロの顔を見るのが辛い。するとオグロは心配に首を傾げて俺の顔を覗き込む。
だから俺は首を左右に振り、オグロに自分から抱き付いた。
慌てたオグロが俺をプレイルームの中に突っ込んで、静かに後ろ手でドアを閉める。
オグロは秘密の話をするかの様に、こっそりと俺の耳元で囁いた。
「………どうしたゼノ?何かあったか?」
俺はオグロの頬を撫でて、指先でマスク越しの傷痕を撫でる。そして首を左右に振ってから、オグロの胸に顔を埋めた。
「怖い夢を見たんだ。それだけだよ………」
オグロの未来に幸せが無いというのであれば、せめて俺と一緒にいるときだけは煌びやかな夢を見せてあげたい。
俺はそう思いながら、オグロの手を取った。
ベッドの方に引っ張ってオグロの身体を引き倒せば、オグロが慌てたようにプレゼントボックスを庇う。
そしてオグロは怒ったような表情を浮かべて、それでも少し嬉しそうにこういった。
「馬鹿………プレゼント滅茶苦茶になるだろ?せめて格好良く渡させてくれ」
ゆっくりとベッドの上で起き上がり、オグロが手にしているプレゼントボックスを手に取る。
そして俺は首を傾げて、オグロに微笑んだ。
「……………これ、俺にくれるの?」
オグロは頬を真っ赤に染めて、こくりと頷く。水色の箱に深い青のリボン。リボンを解いて箱を開けば、箱の中からチョコレートで出来た箱が出てくる。
その箱はリボンも薔薇の花もミルクチョコレートで出来ていた。チョコレート独特の甘い香りが立ち込めて、思わず笑みが零れる。
その箱を手に取り上にあげれば、中から宝石のようなチョコレートが出てきた。
「すげぇ……ありがとう………!!」
はしゃぐ俺を見ながら、オグロがベッドで頬杖をつく。そして笑ってから目を伏せた。
「俺、味は解らねぇから。美味しくなかったら申し訳ないけど」
俺はオグロの目の前でチョコレートを一粒口に入れる。口に広がるココアと紅茶の香り。それに優しい甘さ。
「美味しいよ、ちゃんと……」
俺の言葉にオグロは安心した表情を浮かべ、深く息を吐く。そんなオグロを見ていた時に、俺は良い事を思いついた。
チョコレートを唇に挟んで、反対を軽く舐め上げる。
そして頬杖をついて俺を見ているオグロのマスクを指で下げた。
オグロに顔を近付けて、口元にチョコレートを差し出す。すると状況が飲めないでいるオグロが、頬を真っ赤に染めて目を見開いた。
「え……あ……!!俺は、俺は別に………!!」
拒否をしようとするオグロに、不敵に笑い顎を上にわざとあげて見せる。
オグロは仕方なさそうな表情をわざと浮かべながらも、唇で俺の口元のチョコレートを受け取った。
唇と唇が掠める程度の接触をして、オグロが自分の口元を手で隠す。
そして茹蛸みたいに真っ赤に頬を染め上げながら、目を背けてこう言った。
「………美味しい」
オグロの返事に俺は満面の笑みを浮かべて笑う。
煌びやかな夢を魅せる。甘くて美味しい煌びやかな夢。俺が見せる夢の中で、オグロが幸せになれたらいい。
オグロの身体を俺の方に引き寄せて、オグロが俺に覆い被さるような体勢になる。
その体勢のままで、もう一粒チョコレートを手にして、同じように唇に挟む。
オグロの綺麗な瞳を覗き込みながら、チョコレートを差し出す。するとオグロは恥ずかしそうにしながらも、そのチョコレートを唇で受け取った。
全てが甘い幸せな世界に溺れながら、オグロの身体を抱きしめる。
そしていつも通りに抱き合って、オグロは俺の隣に寝転がる。そして恥ずかしそうに呟いた。
「お前がいると、何だか世界が色付いて見える」
オグロの言葉はとても嬉しい言葉であり、悲しい言葉でもある。
つまりオグロは今の今まで、生きてきた世界が色付いていないということだ。
この綺麗な瞳の中には、今までどんな景色を映してきたというのだろう。
「ふふ、これからももっと綺麗な世界になるよ」
そう囁いてオグロの髪を撫でれば、オグロは幸せそうな表情を浮かべて目を閉じる。
オグロが寝息を立て始めたのを確認しながら、俺も静かに目を閉じる。
夢を見よう。綺麗な夢を。極彩色で幸せな楽園みたいな甘い夢を。
この日幸せな夢を観た。内容は起きたら覚えてなんていなかったけれど。
真っ赤な天井と真っ赤な壁に囲まれながら、ひと時だけの穏やかな時間を過ごす。
俺はこの日にオグロから、それなりに穏やかで幸せな時間をもらっている事に気が付いた。
***
「ゼノちゃんさー、なんか変わった事なかったぁ?」
そう言ってバスローブを着た京條さんが俺の顔を覗き込んでくる。
多分京條さんが俺から聞き出したい変わった事は、オグロの事だろう。
「毎日が変わった事まみれで、飽きないですよ」
俺はそう言いながら京條さんをはぐらかせば、京條さんがふふっと笑う。
多分京條さんには、オグロがパティスリーショップに出入りしているのはバレている。
この様子だと、様子を伺いに来たに違いない。
「いいねぇ、ゼノちゃんのそういうとこ。だから俺、ゼノちゃん好きなんだよな」
そう言いながら、京條さんは俺の唇に唇を重ねた。
今日呼び出されたホテルの壁の色は、ほんの少しだけ青味がかった白だ。このホテルは全体的に少し機械的な色味がしている。
天井に光るシャンデリアの色合いも、銀色で少し冷たい雰囲気だ。
京條さんが俺に舌を差し出すのを見ながら、俺はその舌に舌を絡ませる。口内に突っ込んでまるでしゃぶるように舐め回せば、京條さんが吐息を吐いた。
「ふ………ゼノちゃんやっぱ舌使いうまいね………」
そう囁いてから俺の頭を抑え込んで、京條さんは俺の口の中に舌をねじ込む。
その瞬間京條さんに攻められることに慣れ親しんだ身体は、思わず感じてしまい邯鄲の声を漏らした。
「んあっ…………!!!」
身体を震わせながら見上げれば、京條さんはほんの少しだけ冷ややかな眼差しで囁く。
「オグロはまだ、ゼノちゃんがこんなに淫らな事知らないんだよなぁ………」
そういって悪趣味に笑う京條さんを見ながら、やはり知られていたことを理解する。ほんの少しだけ呆れて見せれば、京條さんがそんな事をお構いなしに俺の身体に舌を這わせた。
京條さんは俺の身体の何処がどんな風に感じるものかを解っている。だからこそ的確に俺も理性を失える。
「ん………!!!あっ……は……!!!」
俺の胸元をまさぐりながら、後ろから淡く噛んでゆく。そして俺の背中の傷痕に舌を這わせて、俺の耳元で囁いた。
「ゼノちゃんが何処まで壊れちゃうのか、俺に沢山見せて………??」
京條さんはそう囁いて俺の入り口に何かを擦り付ける。すると仄かに、俺の入り口が疼いた。
「っ………京條さんこれ……な………に…………?」
思わず京條さんの方に振り返れば、京條さんは悪趣味な笑みを浮かべて笑う。
「中、熱くなってくるでしょ?ムズムズして。淫乱なゼノちゃんが、俺のが欲しいっておねだりしたくなるお薬」
京條さんはそう囁きながら、俺の身体に拘束具を付けてゆく。そして俺は今夜も京條さんに壊される覚悟をした。
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