SANYO

キンカク

文字の大きさ
17 / 18
一年目

17点 遅い始まり

しおりを挟む
  「うん、まあ良しとしましょうか。数少ない男子部活動として頑張ってくださいね。」
  ようやく最後の証明書となった生徒会長からの承認を受け、本日五月一十五日に水川学園男子バスケ部は発足された。生徒会長と校長、副校長さらには理事長全員の承認を受けとり、とうとう創部することが出来た。助けられたことと言えば理事長と校長が思っていた程厳格な性格な人ではなく、ゆるい感じの人だったのが幸運だった気がする。真っ先に向かった生徒会長からの承認は一度は否認されてしまったが理事長と校長、副校長の承認証を提示すると少し悩んだ末に印を押してもらえた。
  顧問の先生としておんちゃんが務め、副顧問の先生はおんちゃんの先輩である橋田先生が土日は出勤しないという条件で受け持ってくれることとなった。
  今のところの部員は俺と日笠、東堂、真泉の四人となっている。
  おんちゃんが顧問をしてくれることになった日の後、五人目の部員探しをしていた日笠達に話を聞くと二年生の先輩達はほぼ全滅だった、という報告を受けた。あと一人で五人揃うため公式試合に出場する権利を得られるのだが、二年生が全滅となると来年入ってくる新入生に狙いを絞るしかなくなってしまった。しかし一応創部条件は満たしていたため先に部活申請を行うこととなった。
  「あと一人で人数揃うのにな....。」
  昼休みに中庭のベンチで沖田さんと二人で弁当を食べながらもそのことが頭を離れなかった。
  「今日もいい天気だね。栞ちゃんと日笠くんもここで食べれば良かったのにね。」
  「仕方ないよ。日笠は今ごろ五限目の数学の課題に追われてるだろうから。」
  そういえば沖田さんと二人きりで昼食を食べるのは初めてだな。こうしてゆっくりしながら食べる弁当も中々美味しい気がする。
  「あ、先輩!」
  ボーッとしながら空の雲を見上げていると沖田さんが誰かに気づいた様子だった。視線を雲から外し沖田さんの見ている方に目を向けるとニ人の女子生徒がこちらに気づき近づいて来ていた。その中には以前会話をした品川さんがいた。
  「こんにちは!中宮先輩、品川先輩。」
  品川さんはニッコリと笑顔で返した。
  「やっほー、早江ちゃん。今日もいい天気だね。それに菊川君も久しぶりだね。」
  「品川先輩お久しぶりです。」
  帰宅中によく体育館の前を通るため、よく女バスの練習している姿を見ていたが、こうして面と向かって話すのは久しぶりだ。しかしどうしても品川さんの胸に目がいってしまうのが唯一の難点な気がする。
  「早江、この人が菊川君?」
  品川さんの隣にいた中宮さんが指をさして俺を見てきた。
  中宮さんはきれいなショートヘアがよく似合っているが、先程からずっと無表情のままでいるため少し怖い雰囲気がある。
  「そうですよ。彼が菊川三陽くんですよ。」
  沖田さんの言葉を聞き再び俺の方に顔を向けると思わず目ががっつり合った。俺は思わず反射的に目を背けてしまった。それにしてもいざ目が合うとかなりの威圧感を放っていることが分かる。
  「そう。彼がね....。」
  小声でボソボソと何か話しているようだが最後の方が聞き取れなかった。個人的に何を言われたのかものすごく気になってしまう。
  「あっ、そういえば男子バスケ部承認してもらったんだってね。おめでとう!」
  品川さんが両手でパンッパンッと叩きながら祝福してくれた。それにしても先ほどから品川さんと中宮さんとの明と暗のオーラがはっきりしている。現状では中宮さんの笑った顔が全く想像出来ないほど、表情の変化が見受けられなかった。
  「キーンコーンカーンコーン」
  昼休みの終わりのチャイムが中庭内に響き渡った。それを聞き中庭にいた生徒が一斉に校舎内に入っていった。
  「それじゃまた来週の部活でね。」
  品川さんと中宮さんと別れ、俺たちも急ぎ足でクラスに戻った。
  教室に戻ると次の数学の課題に追われた日笠がいた。日笠の焦った表情からまだ全部終わってないことがうかがえた。俺は昨日の夜にある程度まで終わらせていたため、二限目の休み時間中には全ての課題が終わっていた。
  案の定、日笠は数学の授業中に課題の問題を当たられても全く解けずに先生から注意を受けていた。この学校は北海道内でもそれなりの進学校でもあるため文武両道がくっきりとしている。
  今はテスト期間中とあっていつにも増して生徒たちの授業に対するやる気が感じられる。普段は隣や前後の席の人とコソコソ話していたり、うとうとしている人がチラホラいる。
  五、六限目の授業を終え放課後になると、テスト期間中の部活は休みとなるためみんな帰る準備をしていた。俺も同様に帰る支度をしていると日笠が駆け足になって近づいてきた。
  「おい菊川!お前に頼みがある。」
  日笠の表情から必死さが非常に伝わってきた。俺はこの後日笠が何を言おうとしているのか容易に想像ができた。
  「俺にテスト勉強を教えてくれないか、だろ?」
  俺が日笠に問いかけると日笠はニヤリと微笑んだ。
  「違うよ、どうせ菊川は家に帰ってもやることないだろ?だから俺が一緒にテスト勉強してやろうかなと思ったんだよ。」
  日笠の発言を聞き俺はすぐさま帰る支度をして教室を後にしようとした。
  「いやいやいや、嘘だよ嘘。お前の言う通りだよ。」
  日笠は俺の手を力いっぱいに握りしめ、助けをこうように両手で手をスリスリしていた。
  「最初からそう言えよ。」
  俺は渋々日笠の言う通りに勉強を教えてあげることになった。
  すると近くで俺たちの会話を聞いていた沖田さんが私も一緒にしたい、とお願いしてきた。もちろん断る理由がなかったため沖田さんと一緒に帰ろうとしていた柳井さんを加えた四人で近くのファミレスで勉強することとなった。
  ファミレスに着くと四人それぞれソフトドリンクを注文してから、日笠の提案で最初に数学をすることになった。
  柳井さんと沖田さんは難なく演習を解いているが、横にいる日笠からは負のオーラしか漂ってこない。一方の俺も今やっている因数分解や二次方程式を解く問題は日笠ほどではないが、少々手こずっている状態である。そのため分からない問題は沖田さんと柳井さんに教えてもらいながら一通り解くことができた。意外にも柳井さんは思ったことをズバッと言うタイプの人らしい。日笠がこれを教えてほしい、と柳井さんに演習の問題を提示すると、こんなのも分からないの?と困った顔をしながらズバッと言い放った。それからも少しイライラした様子を見せながらも丁寧に日笠に解き方や覚え方を教えていた。一方の日笠は最初に比べると基礎の問題を解くことが出来るようになってきていた。
  ファミレスに来てから一時間くらい経ったころには数学を終え英語の勉強に移っていた。しかし学校に英語の教科書と単語帳を置き忘れてしまっていることに気づいた。今日は金曜日のため明日から貴重な休日をノー勉でテストに向かうにはハード過ぎるため取りに帰ることにした。
  「学校に置き忘れてきたから取ってくるわ。もし早く帰るようだったらメールで連絡して。」
  「日笠君の調子だとまだまだここにいることにな流と思いますのでご安心を。」
  柳井さんから日笠にど直球の悪口が突き刺さった。
  まだ十七時過ぎのため空は夕暮れ時だった。夕焼けのオレンジと若干残った青空、白い雲がいい感じにマッチした風景であった。
  自転車を立ち漕ぎしながら学校に向かった。
  昇降口に到着しクラスの下駄箱を見たが誰も学校に残っておらず、すっからかんであった。
  階段を三段飛ばしで駆け上がり自分の教室に向かい四組の教室の前に着くと驚きの光景を目にした。
  「え、中宮さん?」
  そこには昼休みに中庭であった中宮さんが教室の校庭側の席に一人で座っていた。
  俺はすぐにクラスの札をみると二年四組と書かれていることに気づいた。どうやら慌てていたためまだ俺は三階の上がり途中で二階の二年教室に来てしまったようだ。
  まだ中宮さんには気づかれていなかったため、ゆっくりと三階の階段に向かおうとしたときさらに驚きの光景を目にした。
  今日の昼休みでは女子指定のスカートを履いていたはずだが、目の前の中宮さんは男子指定のズボンを履いていたのだ。俺はあまりの光景に頭がパニック状態に陥っていた。
  そのとき校庭を眺めていた中宮さんが俺の存在に気付き目がばったりと合ってしまった。
  「あ、こんにちは。今日昼休みに中庭であった一年四組の菊川三陽です。」
  俺はあまりの動揺になぜだか中宮さんの目の前に行き自己紹介をしていた。
  中宮さんもポカンと口を開けたまま動かないでいた。
  すると前の教室のドアから明るい声をした女子生徒が入ってきた。
  「待たせてごめんね、なっちゃん。思った以上に先生の話が長くてさ。」
  「え、」
  「ん?」
  俺はとうとう幻覚が見えるようになったのかもしれない。
  なんと教室に入ってきたのは隣にいるはずの中宮さんだったのだ。
  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

処理中です...