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口裂け女
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口裂け女を見た事がありますか?
私は追いかけられた事があります。
1978年、今から50年近く前、岐阜県発祥の都市伝説はあっという間に、全国を席巻して、当時の少年少女の話題に上り、誰も噂をしない人間はおりませんでした。
少年少女は怖がっていたのか?
いや、当時の話題に乗り遅れたくない彼ら(私も含めて)、噂話をしていただけなのです。
今のように、ネットが主流になり、デバイスが氾濫している世の中では考えられないと思いますが、ひまつぶしの話題のひとつに過ぎなかったのです。
「ねぇ、口裂け女、知ってる?」から始まる休み時間のそれは格好の話題で、放課後に有志が募ってやる「コックリさん」と共に、当時の少年少女のアイテムのひとつだったのです。
当時の事を調べたルポライターの方は岐阜県にあるとある心を病んだ人を収容する病院から患者が脱走して、トンネルの辺りをうろついていたのが、事の始まりだと後に結論づけされました。
その時、その患者はくちびるに口紅を塗りたくっていたそうで、それが口にを裂けたように見えたのだろう、と。
口裂け女の騒ぎを黙って見る事が出来なくなった全国の学校側はホームルームで「口裂け女などはいない。君たちも、くれぐれも、この事を信じずに、話題にしないように」と教育委員会を通じて通達を出したそうで。
わが母校は担任ではなく学園主任じきじきに、教室を回り、訓示をたれていきました。
昔話が続きますが、あの頃は「校内暴力」という嵐の最中にあり、「口裂け女」の話は鬱屈した少年少女の意識の代弁をしていた…
と、思うのは、成人してかなり年齢を重ねてから、言えることで、これから話す事は、私の実体験なのです。
あの夜、塾の帰り道、かなり遅くなった私は自転車で家路を急いでいました。
初冬の寒い夜でこの前まで秋だったのにと思っていたのに、やけに底冷えのする日でした。
いつも通る道角を曲がろうとすると、コートに赤いハイヒール、髪は長くて、顔には大きなマスクをした女性が街灯の下に立っていました。
噂話のこともあり、誰かのイタズラだろうと、無視して通り過ぎようとした瞬間、「わたし、きれい?」とその女性はマスクを外しました。
耳元まで裂けた口、くちびるに無造作に塗られた口紅、いたずらにしては手が込んでいます。
私はゾッとして、自転車を走らせると一目散で自宅に帰ろうとしました。
ですが、女性はハイヒールに関わらず、ものすごいスピードで走って追いかけてきます。
うそだ。ありえない。いたずらで、姉のハイヒールで歩こうとしたら、歩けるようなものではりません。あれは女性が自分の足の美しさを見せるものであって、実用向きではない事を知ったのは、後年の事です。
なのに、女性は猛スピードで駆ける私の自転車を追いかけて「わたし、きれい?」を繰り返してきます。
追いつかれそうになった時、私は噂話と一緒に聞いた「ポマード、ポマード、ポマード」を繰り返して言うと、口裂け女は怯むというのを試しました。
それはどうやら、成功したようで、自転車から後ろを見ると、うずくまった彼女の姿が見えました。
それから、しばしば、彼女は私の目の前に現れては、私は撃退用のポマードをいつも懐にしのばせる人生でした。
時は流れて、中国発祥の流行性感冒によりマスク姿の女性は珍しくなくなり、誰が本当の彼女か判らなくなりました。
そんな、ある日、会社の帰り道、コート姿に赤いハイヒール、マスク姿の長髪の女性の集団が目の前に現れました。
まさか、もう、40年以上も前だぞ、と思いながら、上着の中の反撃用のポマードを握りしめました。
そこは人けのない路地の一角で、後ろを見ると、同じ姿女性がかなりな人数が立っていました。
彼女たちはいっせいにマスクを取ると「わたし、きれい?」と訊いて来ました。
虚ろな笑い顔を浮かべた私は彼女たちに取り囲まれると、食まれて行くのが判りました。
私は追いかけられた事があります。
1978年、今から50年近く前、岐阜県発祥の都市伝説はあっという間に、全国を席巻して、当時の少年少女の話題に上り、誰も噂をしない人間はおりませんでした。
少年少女は怖がっていたのか?
いや、当時の話題に乗り遅れたくない彼ら(私も含めて)、噂話をしていただけなのです。
今のように、ネットが主流になり、デバイスが氾濫している世の中では考えられないと思いますが、ひまつぶしの話題のひとつに過ぎなかったのです。
「ねぇ、口裂け女、知ってる?」から始まる休み時間のそれは格好の話題で、放課後に有志が募ってやる「コックリさん」と共に、当時の少年少女のアイテムのひとつだったのです。
当時の事を調べたルポライターの方は岐阜県にあるとある心を病んだ人を収容する病院から患者が脱走して、トンネルの辺りをうろついていたのが、事の始まりだと後に結論づけされました。
その時、その患者はくちびるに口紅を塗りたくっていたそうで、それが口にを裂けたように見えたのだろう、と。
口裂け女の騒ぎを黙って見る事が出来なくなった全国の学校側はホームルームで「口裂け女などはいない。君たちも、くれぐれも、この事を信じずに、話題にしないように」と教育委員会を通じて通達を出したそうで。
わが母校は担任ではなく学園主任じきじきに、教室を回り、訓示をたれていきました。
昔話が続きますが、あの頃は「校内暴力」という嵐の最中にあり、「口裂け女」の話は鬱屈した少年少女の意識の代弁をしていた…
と、思うのは、成人してかなり年齢を重ねてから、言えることで、これから話す事は、私の実体験なのです。
あの夜、塾の帰り道、かなり遅くなった私は自転車で家路を急いでいました。
初冬の寒い夜でこの前まで秋だったのにと思っていたのに、やけに底冷えのする日でした。
いつも通る道角を曲がろうとすると、コートに赤いハイヒール、髪は長くて、顔には大きなマスクをした女性が街灯の下に立っていました。
噂話のこともあり、誰かのイタズラだろうと、無視して通り過ぎようとした瞬間、「わたし、きれい?」とその女性はマスクを外しました。
耳元まで裂けた口、くちびるに無造作に塗られた口紅、いたずらにしては手が込んでいます。
私はゾッとして、自転車を走らせると一目散で自宅に帰ろうとしました。
ですが、女性はハイヒールに関わらず、ものすごいスピードで走って追いかけてきます。
うそだ。ありえない。いたずらで、姉のハイヒールで歩こうとしたら、歩けるようなものではりません。あれは女性が自分の足の美しさを見せるものであって、実用向きではない事を知ったのは、後年の事です。
なのに、女性は猛スピードで駆ける私の自転車を追いかけて「わたし、きれい?」を繰り返してきます。
追いつかれそうになった時、私は噂話と一緒に聞いた「ポマード、ポマード、ポマード」を繰り返して言うと、口裂け女は怯むというのを試しました。
それはどうやら、成功したようで、自転車から後ろを見ると、うずくまった彼女の姿が見えました。
それから、しばしば、彼女は私の目の前に現れては、私は撃退用のポマードをいつも懐にしのばせる人生でした。
時は流れて、中国発祥の流行性感冒によりマスク姿の女性は珍しくなくなり、誰が本当の彼女か判らなくなりました。
そんな、ある日、会社の帰り道、コート姿に赤いハイヒール、マスク姿の長髪の女性の集団が目の前に現れました。
まさか、もう、40年以上も前だぞ、と思いながら、上着の中の反撃用のポマードを握りしめました。
そこは人けのない路地の一角で、後ろを見ると、同じ姿女性がかなりな人数が立っていました。
彼女たちはいっせいにマスクを取ると「わたし、きれい?」と訊いて来ました。
虚ろな笑い顔を浮かべた私は彼女たちに取り囲まれると、食まれて行くのが判りました。
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