「夏の日に祠で出会った神様と、永遠に一緒に生きていくことになりました」

ねころび天青

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      「望み」




 ある日、スマートフォンを開いていると不意に影がかかった。



「………何を見ておる?」



 振り返ると蛇神が鋭い目でこちらを睨んでいた。



 その視線に含まれる危険な雰囲気に背筋が凍る思いがした。



「あ……これは私の家族の写真でっ!!!」



 慌てて説明しようとするも遅かった。
 彼の長い爪がスマートフォンに食い込みミシリと音を立てる。



「我以外の男を思い出そうと言うのか?」



 低い声に含まれる怒気が部屋中の空気を凍らせた。



「違うんです!これは単なる思い出で……」



 弁解する間もなく彼の巨大な蛇体が私を包み込んだ。
 鱗の冷たさが肌に直接伝わってくる。



「嘘を言うな!!!お前の魂が揺らいでおるのが分かる!」



 怒りのあまり瞳孔が縦長になり獣のような唸り声を上げ始めるナーガを見て恐怖で動けなくなってしまう。



「離さんぞ……我のだ、お前は我のものだ…我だけのものだ!…誰にもやるものか…っ」



 震える声で蛇神が呟く。



 その巨体で私を締め付けながらも決して傷つけない配慮が感じられた。



「………怖いのですか?」



 思わず尋ねると彼は悔しげに眉をひそめた。



「当たり前だ!お前のような存在が目の前から消えたら我は……我は…どうすれば良い?」



 そう言って涙が一粒落ちてくる。



 それは宝石のように美しく私の頬を滑り落ちた。



「だからお願いだ、コレを全て消してくれ……」



 悲痛な叫びと共に蛇神の口から黒い煙が漏れ出し部屋中を覆っていく。



「出来ぬのならばお前の過去も未来も全て我が糧とするとしよう……」



「大丈夫ですよ……」



 私は蛇神に向かって両手を広げた。



「あなたが望むなら……」



 黒い霧の中に飛び込むと彼の胸板にしっかりと抱きつく。



「私の全てを差し上げます」



 その言葉に蛇神の目には光が戻った。
 恐る恐る触れるように私の髪を撫でる手は震えている。



「本当か?」



「はい。だからどうか泣かないでください」



 涙を拭ってあげると彼は深く息を吸った。



「約束だぞ……」



 その瞬間から彼の執着はより一層激しくなった。



 朝起きると既に朝食の準備ができていた。



「さぁ口を開けよ」



 蛇神は器の中身を匙で掬い私の唇へ運ぶ。
 抵抗せず受け入れるようになった自分に驚く。



「美味しいか?」



「はい……とても」



 嘘ではない。
 どんな食材なのか全くわからないが確かに美味しかった。



「今日は何をしようか?」



 彼の問いかけに微笑んで答える。



「あなたの好きなことをしましょう」
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