ウソコク

三五八11

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第2章 ウソコクな日常

こんなの…………ウソ

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マック5達はお気楽でいいよな
最初はかなり嬉しくて
浮かれていた。と、
今はうっとおしさしか感じない
ファンクラブ

試合でも、ストレスが溜まる
それだけの為に出ている
そう感じる試合が
何度も繰り返された。

もう出たくねえのに
なんでまだ出なくちゃいけない?
心のつぶやきは
本音ではない部分も
多くあるので
口には絶対出さなかった
しかし、他の1年が
「柾って、なんなんだよ
 花咲先輩のエコヒイキじゃね?」
「あの2人同中だし
 実はできてんじゃねえの?」
「監督もあわせて、3人か!」
聞こえてしまった陰口。
おまけに、監督や花咲先輩にも
迷惑をかけている

感じるプレッシャー
イラだちは、プレーにも
はっきりと現れした。
無理矢理なインサイドへの切り込み
パスも今迄はキビシイパスも
ギリギリ届くかどうか
届けば確実に点につながるパスは
今では見る影もなく
大樹には《自滅》と言うしか
言いようのないプレーが続いた

当然、人気は下落
ファンクラブは半分以下の人数
マック5達は健在だが
以前のように休み時間に
話をさえぎるように
現れることはなくなった

せいせいした。反面
屋久杉や、美依に
イラだちがバレないように
会話から離れたい
と思うときには
来てくれ!と心の中で
祈るような状況だった。

そんなある日の昼休み
大樹を呼ぶ声が聞こえた
その方向にいたのは
花咲先輩だった
急いで駆け寄ると
「今日は練習休め。
 監督には俺が話してある
 俺も休むんで
 練習が始まってるのをみたら
 部室にこい、絶対に。」
と言うと左手をあげながら
去っていった…

リギュラーからは外されるな。
部にも、これ以上迷惑が
かかるようなら
退部もあるかもな……
授業は全く頭に入ってこなかった。

永遠にこの授業が
続かないかと思ったが
期待は大きく外れ
すぐに授業はあっと言う間に終わった

花咲先輩はすでに
部室の椅子を2つ用意して
真面目な顔で待っていた。
「早いな、近くで様子みててのか?」
「嫌、一応練習の順序考えたら
 この時間なら誰にもあわないかな」
って思ったんで……
「そうか、不調とかは関係なく
 練習に対しては冷静なんだな。」
軽く嫌味をいわれてんだ。
そう感じると返事は
難しかった

「回りくどいの苦手だし
 はっきり言うよ
 最近のお前のプレーは
 最悪だ。チームもそのせいで
 かなり不調だ。わかるよな。」
「花咲先輩、それってそんなに
 はっきり言うの
 かなりキツくないですか。」
精一杯の反抗だった。
「そうだな。
 じゃあ、覚悟してると思うが
 今後お前の後半出場
 我が校のプレースタイルを
 後半から変えていく今の戦術
 …………
ついにきた、もっとキツい言葉
遂にレギュラーから外れる
と思った大樹の耳に入ってきた言葉は
「俺も監督も、変えるつもりはない」
???
なにがなんだかわからなかった
「俺逹が全国に行くには
 この新しい戦術すら研究され
 思い通り進むとは限らない
 今の状態を乗り越えてこそ
 意味があると思っている」
「イヤ、そらでも負けたら
 意味がないんじゃないですか?」
「そうだ、負けたら意味がない
 それは本番の話だ。
 練習試合が全敗でも全く気にしない
 それに俺と高杉は、冬の選手権に
 全国に行ければいいと思っている
 夏を捨てると言う意味ではないが」
頭の中で、いろんな聞きなれた言葉が
初めて聞いた言葉のように感じ
グルグルと何度も繰り返され
意味がわからなかった
「勝つ為のステップ
 それが苦しくて、辛くて
 逃げ出さないとサッカーが
 嫌いになるって言うなら
 それはしょうがない。
 また違う方法を違う選手で考える
 お前が決めろ。
 するか、しないか」
胸の奥がズキッと痛くなった
辛い、負けが自分のせい
苦しい、思い通りのプレーができない
しかし、花咲先輩は
そんなことも全部わかって
おれを使ってくれていた
涙が少し流れてしまった
「泣くなよ、お前
  俺ら出来てると思われてんだぞ
 しらねぇのか。
 ま、泣かしたついでだ
 もう一言だけ
 今のお前の実力では
 一対一では俺を抜けない
 総合的に見て、まだ負けない
 でも、パスセンス。
 あのギリギリのスルーパス
 相手を少しバカにしたような
 あの大樹独特のパスが
 俺は好きなんだよな。
 明日から、またよろしくな。」
「よろしくお願いします
 でも、正直迷ってます
 チームに迷惑かけ続けると
 冬の選手権までに
 チーム、バラバラになると
 取り返しつかないし
 でも今すぐ返事できないし」
「しばらく考えていいよ。
 今日は帰れ。
 返事は明日じゃなくていい
 でも、長くも待てないからな」
そう言うと花咲先輩は
練習に合流していった

部室をそっと出て、家に帰ろうと
考えながら歩いていると
目の前に、美依がいた
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