ウソコク

三五八11

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第4章 日常は、非日常の塊

大樹の勘違い

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文化祭に向けて、大樹は
忙しい毎日をおくっていた。
サッカー部の練習の後
時間が合えば栂の家に行き
時間が合わない時はカラオケに行き
文化祭でとにかく栂達に
迷惑をかけないように
盛り上げれるようにと
なぜなら、昨日クジで
トップバッターに決まってしまったから
プレッシャーを感じていた。

大樹はとりあえず、歌詞を
間違えないように
暇さえあれば
美依が用意してくれた歌詞カードを
みるようにしていた。
美依は優しいな。と
感謝の気持ちもあるので
間違える事は絶対できない
とさらにプレッシャーを
かんじていた。

そして、いよいよ当日を迎えた。

大樹は栂が用意した
他のバンドの人から借りた
昭和のパンク?な服をきて
トップバッターを務めた。

軽音部とクラスメイト
栂達は大忙しだった。
しかし、休憩をはさんみながら
順番に進んでいき
1日目は無事終了。
1年生だが、軽音部の先輩達は
片付けをしなくても良い
その約束もあるので
中盤で先に終わって
打ち上げを始めておきたい。
との事で、2日間とも
トリは栂達のバンドと
決まっていた。
ボーカル兼ギターの栂が
終わり際に
「明日、ちょっと驚かすから」
と謎の言葉を残したのが
気になった

そして2日目
今日は昨日上手くいったので
朝はあまり緊張せずに
朝ごはんも食べ
学校にむかった。
栂が今日は他校からも
いっぱいくるから、バンドを売る
チャンスだから気合いが入る
と言っていた。

学校について愕然とした
他校の生徒、めっちゃ来てる……
思い出した。自分には
少し前までファンクラブがあった事を
そしてその法則から考えると
この内の多くが
大樹が歌を歌うのを見に来ている
その可能性が高いことを
栂はこのことを言っていたのか。
売り込みチャンスとは
まさかこんなところの文化祭に
音楽関係者が来るとは
考えにくいと思っていたが
女子高生なら確かに集まる
しかも運動系とはいえ
他校にファンクラブがある人が
ボーカルなら、客は集まる

大樹は大きな勘違いを1つした
「ヤバ、全員俺のファンクラブだ
 俺、この人達全員の前で
 今日歌うのか…!」
そんな訳ない、友達の誘いできてる
それだけの人もいるのに
なぜか大樹はこの時
全員が自分を見に来た。と
思ってしまった。

直前まで朝ごはんをもどしそうに
何度も苦しくなり
その様子をまた美依が
「大丈夫、大樹。
 そんなんで歌えるの?」
自分が心配されるほどの
緊張をしているとわかると
膝がガクガク震えてきた。
「私の大好き大樹。
 今日も昨日みたいに
 かっこいいとこ見せてね
 イケてたら、チューしてあげる」
と美依が、後ろから耳元に囁いた
大樹は立ち上がり、振り向くと
「大樹、どうしたの?
 ウソに決まってるじゃん
 いつもの仕返し~」
あまりの驚きと何か心の中で
ストンと下に落ちる音が聞こえた
「あれ、俺、さっきより
 なんかなごんでる」
膝もガクガクしていなかった。
緊張はしてる。
でも、さっきほどではない。
そして、気がついた。
「あれって、よく考えたら
 来てる他校の奴らって
 全員俺のファンじゃないや。」
聞こえた美依は大ウケだった。
「自身過剰にも、ほどがある」
「バカ大樹」と何度も同じ事を
繰り返しながら、しばらく
笑い転げていた。
その様子を見ると、さらに落ち着いた。

しかし、いざステージにでると
やはりファンクラブは解散寸前でも
まだ大樹のファンって人は多いのか
視聴覚室は立ち見が出るほど満員だった
栂は「良し、狙い通り!」
と、バンド仲間とハイタッチしていた

演奏が始まった
大樹はまた緊張して
歌詞が思い出せない。
気付いた栂が最初歌ってくれたので
なんとか思い出して
歌う事ができたが
大樹目当できたファン達は
少しガッカリ。そして栂に対して
「なにあいつ?大樹様の出番
 ただえせ少ないのに」
と栂に対してブーイングが
起きていた。
栂はかなりへこんだ
「俺そんなに悪い事した?」
しかし、最後のは力を振り絞るように
「今日も最後は俺のホントのバンド
 TOgaterも、文化祭スペシャルで
 特別ボーカルバージョンでいくから
 是非きてくれ!」
と叫んだ時に、ほとんど客は
席を立っていた。
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