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東京騒乱
49 土地神と決戦準備
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遼太郎が運転する黒いワゴンは高尾に向かって走る。運転している遼太郎に向かい、冬也が喚きたてた。
「おい親父。てめぇはどこまで知ってる。何を企んでやがるんだ?」
「まさか昨日の説明を理解して無かったのか? 全部だバカ息子。そんで俺は手前等の尻ぬぐいしてやるって言ってんだ」
「パパリン、どういう事?」
「俺の部下達が、異界の神の居場所を確定させた。逃げらんねぇように結界を張ってる。お前らはそこに乗り込んで決着付けて来い」
遼太郎は威丈高にペスカと冬也に言い放つと、神社の前に車を止める。
「おい、ここに何の用が有んだよ」
「冬也、がたがた言わずに黙って着いて来い。お前ら全員だ」
車を止めたのは、土地神が現れた神社である。遼太郎は鳥居を抜けて鷹揚な様子で歩いて行く。ペスカと冬也は興ざめな顔で、さも面倒くさそうにダラダラと歩く。空は怯えた表情で体を強張らせ、翔一は訝し気な表情で黙って後に続いた。
拝殿に辿り着くと、遼太郎は宮司を呼び出し話し始めた。会話が終わったかと思うと、宮司は権宮司や巫女達に指示を出し、神具を車に運び入れる。待つ事に飽きたペスカが冬也達に話しかけた。
「そうだお兄ちゃん。土地神様呼び出して、神気を貰おうよ!」
「何言ってんだペスカ?」
冬也が首を傾げながらペスカに答えると、空と翔一も同様に疑問を頭に浮かべ、ペスカを見つめた。
「いや~、だってさ。お兄ちゃんマナが回復しきって無いでしょ? 私もだよ」
「そうだな。回復して無い上に、雄二を助ける時にだいぶ使っちまった」
「だから土地神の神気を貰うんだよ。あの土地神様、困ったら手を貸すって言ってたし」
ペスカと冬也の会話に、空が怯えながら、翔一は焦りながら間に入る。
「ぺ、ペスカちゃん。土地神様ってあの怖そうな神様だよね。駄目だよ」
「二人共。神様がそんな簡単に、人のお願い聞いてくれの?」
空と翔一の言葉に、ペスカと冬也は鷹揚に答える。
「大丈夫だよ。取り敢えず交渉!」
「そうだな。それで駄目なら、言う事を聞かせりゃあいい」
「神様を脅迫しないで!」
「神様を脅迫するな!」
空と翔一は声を合わせて、冬也を叱りつけた。
ペスカ達四人は、本殿に向かい歩き出す。そしてペスカが本殿に向かい呼びかけた。
「とっち神さ~ん、あ~そ~ぼ~!」
「ペスカちゃん、呑気な掛け声やめて!」
「そうだペスカ、ちゃんと三泊四日しないと!」
「冬也、二礼二拍手一礼だよ。宿泊はしないからね」
四人が呑気なやり取りをしていると、本殿から光が溢れ人の形を成して行く。前回の張り詰める様に荘厳な光では無く、穏やかな光が本殿の周囲に満ちていた。
「其方ら、確かに力になるとは言ったが、礼を弁えよ」
土地神は、呆れた様にペスカ達四人に語りかけた。
「話が早いじゃねぇか。流石神様だな」
「そうそう。よっ、流石神様。ね、お兄ちゃん」
呑気なペスカと冬也に、空と翔一は慌てる。
「ペ、ペスカちゃん。駄目だよ。怒られてるんだよ」
「そうだぞ。ちゃんと礼をしないと」
四人のやり取りに、土地神はため息を付き、胡坐をかいて座り込む。
ペスカと冬也は二人で顔を見合わせた後、土地神に向かい両手を顔の前に組んで、おねだりポーズを決めた。
「神気を下さいな。土地神様!」
「神気をくれよ、土地神様!」
余りに揃ったペスカと冬也のおねだりに、空と翔一は吹き出し、土地神は目を丸くしてペスカ達を凝視した。土地神の反応が無い為、ペスカと冬也は、おねだりポーズを維持し続ける。空と翔一は石の様に固まり、土地神は口をポカンと開けて呆けていた。
何分かは経過したであろう。土地神は、なかなか反応を見せない。焦れた冬也が睨み付け、威圧する様に近づいて行った。
「無視すんなよ、土地神様。こっちは今すぐ、糞野郎をぶちのめしてぇんだ。早い所、神気をくれよ」
冬也は威圧し続け土地神に尚も近づく。冬也が近づいて行くと、土地神は怯えた様に立ち上がり後退った。
「良い。わかったから。其方はこれ以上近づくな」
「何言ってんだ、土地神様?」
「お兄ちゃん、止めてあげて。土地神が怯えてる」
ペスカの言葉に土地神は大きく何度も頷き呟いた。
「冬也。気が付いておらんだろうが、其方は神の子だ。元々強い神気を持っておる。それが戦いで強まったのだろう。大神ならいざ知らず、我の様な土地神では、其方の神気にあてられ存在ごと消されかねん。其方が二度とこの神社に、足を踏み入れない事を受け入れるなら、我が神気を与えてやろう」
「やるね~お兄ちゃん。とうとう神の領域に足を突っ込んだか!」
「馬鹿言ってんじゃねぇよペスカ。あんたもだ、土地神様! 人間じゃねぇみたいな言い方すんな!」
ペスカがあっけらかんと答えるが、空と翔一は冬也と土地神のやり取りに圧倒され言葉が出ない様子だった。合点がいかない冬也は、眉をひそめながらも後ろへ下がる。
冬也が下り切った所で、土地神から淡い光が三つ放たれ、ペスカ、空、翔一の三人を包み込んだ。
「おい! 俺には無いのかよ」
「其方にはいらぬだろ! 近寄るで無い! 其方ら全員直ぐに立ち去れ!」
近寄ろうとする冬也を、土地神が声を荒げて遠ざける。そして土地神は、本殿の奥へ吸い込まれる様に消えて行った。
土地神が消えると、ペスカは体内のマナを確認する様に、目を閉じて集中する。空と翔一は未だに呆けていた。
ペスカ達四人は、本殿を離れ拝殿に戻る。憮然としてため息をつく冬也と対照的に、ペスカは笑みを零して歩いていた。空と翔一は言葉が出せず黙って後に続く。
拝殿では神具の積み込みが終わった様で、遼太郎が一人で煙草を吹かしていた。
「おせぇよ。用事は終ったのか?」
「終わったよ、パパリン」
「なら早く車に乗れ。出発するぞ」
遼太郎の問いにペスカが明るく答えると、遼太郎は急かす様に四人に言い放った。
「翔一君は、助手席ね!」
笑顔のペスカが、冬也の手を引き車に向かう。しかし冬也は、ペスカの手を振りほどき助手席に座る。冬也の行動にペスカは舌打ちし、空と翔一は苦笑いを浮かべた。
全員が車に乗り込みスピードを上げ走り出す。車内の中では、三者三葉の表情を浮かべていた。淡々と運転に徹する遼太郎。笑顔のペスカ。闘志を漲らせ険しい顔の冬也。状況が上手く呑み込めいない空と翔一は、押し黙ったままだった。
やがて空が重い口を開く。
「あのさ、ペスカちゃん。土地神様って何をしたの?」
「あ~。それなら少し集中して体を見てごらん」
ペスカが言った様に、空と翔一が集中して眺めると、ぼんやりとした淡い光が自身の身体を包み込んでいた。
「それが神気だよ。神の力だね。神気が馴染めば、二人の能力は上がるよ。到着する迄には、神気が馴染む様にしてね」
「そう言われても。どうすれば良いの?」
「包み込んでる光を、身体中で吸収する様に意識すれば良いよ」
空の問いにペスカが答えると、空と翔一は神気が身体に馴染む様に集中しだした。冬也は黙ったまま、ペスカ達の様子をバックミラー越しに見ていた。
校舎内では慣れていない為、雄二を助け出した所で、集中が途切れてしまった。しかし、落ち着いて確認すれば、体の奥底に力の奔流が渦巻いている。
「ペスカ。神気って言ったよな。少し理解した気がするぞ」
冬也が零す様に呟くと、力強い光が冬也の体内から車内に溢れ、車内全員を強烈に威圧した。遼太郎とペスカは苦悶の表情を浮かべ、空と翔一は気を失いかける。
遼太郎は苦痛を堪える様に蛇行する車を操作し、慌ててペスカは冬也に声をかけた。
「お兄ちゃん、抑えて」
「すまん。みんな大丈夫か?」
冬也は溢れた力を、体内に取り込む様に抑えて謝罪する。車を安定走行させた遼太郎は、左の拳で冬也を殴りつける。
「馬鹿野郎! こんな所で、慣れない神気を操ろうとすんな! あぶねぇだろが! てめぇの神気は、馬鹿みてぇに強くなってんだ! 簡単な威圧程度で、人を殺せるんだぞ! 時と場所を考えて使え!」
「そうだよ。ちゃんとコントロール出来る様になってからにしてよね」
冬也は申し訳無さそうに肩を竦めるが、表情は険しいままだった。しかし冬也の闘志は、車内に伝染していく。ペスカを始め、空と冬也も顔つきが真剣なものに変わる。だんだんと車内の緊張は高まっていった。
そして冬也の一言で、皆が更なる闘志を燃やしていく。
「今度こそ、あの糞野郎をぶっ飛ばすぞ!」
車内の闘志が最高潮に高まった所で、目的地である高尾山の麓へたどり着く。
高尾山口の周辺道路は既に警察により封鎖されている。到着するや否や、遼太郎は同僚達と共に車から神具を運び出し、結界の準備を整える。
遼太郎達の組織が結界を整えている間、待機中のペスカは仲間を見渡す。冬也は言わずもがな。空と翔一も神気が馴染み、引き締まった表情をしていた。
気合十分な仲間たちを見て、ペスカは少し綻んだ顔を引き締め直す。
結界の準備が整い、遼太郎が祝詞を唱えだす。遼太郎の祝詞が終わると、高尾山を囲む様に光の輪が台地に描かれる。
「準備は良い? みんな行くよ!」
ペスカの掛け声で、ペスカを含む四人が、ロメリアとの決戦に向け走り出した。
「おい親父。てめぇはどこまで知ってる。何を企んでやがるんだ?」
「まさか昨日の説明を理解して無かったのか? 全部だバカ息子。そんで俺は手前等の尻ぬぐいしてやるって言ってんだ」
「パパリン、どういう事?」
「俺の部下達が、異界の神の居場所を確定させた。逃げらんねぇように結界を張ってる。お前らはそこに乗り込んで決着付けて来い」
遼太郎は威丈高にペスカと冬也に言い放つと、神社の前に車を止める。
「おい、ここに何の用が有んだよ」
「冬也、がたがた言わずに黙って着いて来い。お前ら全員だ」
車を止めたのは、土地神が現れた神社である。遼太郎は鳥居を抜けて鷹揚な様子で歩いて行く。ペスカと冬也は興ざめな顔で、さも面倒くさそうにダラダラと歩く。空は怯えた表情で体を強張らせ、翔一は訝し気な表情で黙って後に続いた。
拝殿に辿り着くと、遼太郎は宮司を呼び出し話し始めた。会話が終わったかと思うと、宮司は権宮司や巫女達に指示を出し、神具を車に運び入れる。待つ事に飽きたペスカが冬也達に話しかけた。
「そうだお兄ちゃん。土地神様呼び出して、神気を貰おうよ!」
「何言ってんだペスカ?」
冬也が首を傾げながらペスカに答えると、空と翔一も同様に疑問を頭に浮かべ、ペスカを見つめた。
「いや~、だってさ。お兄ちゃんマナが回復しきって無いでしょ? 私もだよ」
「そうだな。回復して無い上に、雄二を助ける時にだいぶ使っちまった」
「だから土地神の神気を貰うんだよ。あの土地神様、困ったら手を貸すって言ってたし」
ペスカと冬也の会話に、空が怯えながら、翔一は焦りながら間に入る。
「ぺ、ペスカちゃん。土地神様ってあの怖そうな神様だよね。駄目だよ」
「二人共。神様がそんな簡単に、人のお願い聞いてくれの?」
空と翔一の言葉に、ペスカと冬也は鷹揚に答える。
「大丈夫だよ。取り敢えず交渉!」
「そうだな。それで駄目なら、言う事を聞かせりゃあいい」
「神様を脅迫しないで!」
「神様を脅迫するな!」
空と翔一は声を合わせて、冬也を叱りつけた。
ペスカ達四人は、本殿に向かい歩き出す。そしてペスカが本殿に向かい呼びかけた。
「とっち神さ~ん、あ~そ~ぼ~!」
「ペスカちゃん、呑気な掛け声やめて!」
「そうだペスカ、ちゃんと三泊四日しないと!」
「冬也、二礼二拍手一礼だよ。宿泊はしないからね」
四人が呑気なやり取りをしていると、本殿から光が溢れ人の形を成して行く。前回の張り詰める様に荘厳な光では無く、穏やかな光が本殿の周囲に満ちていた。
「其方ら、確かに力になるとは言ったが、礼を弁えよ」
土地神は、呆れた様にペスカ達四人に語りかけた。
「話が早いじゃねぇか。流石神様だな」
「そうそう。よっ、流石神様。ね、お兄ちゃん」
呑気なペスカと冬也に、空と翔一は慌てる。
「ペ、ペスカちゃん。駄目だよ。怒られてるんだよ」
「そうだぞ。ちゃんと礼をしないと」
四人のやり取りに、土地神はため息を付き、胡坐をかいて座り込む。
ペスカと冬也は二人で顔を見合わせた後、土地神に向かい両手を顔の前に組んで、おねだりポーズを決めた。
「神気を下さいな。土地神様!」
「神気をくれよ、土地神様!」
余りに揃ったペスカと冬也のおねだりに、空と翔一は吹き出し、土地神は目を丸くしてペスカ達を凝視した。土地神の反応が無い為、ペスカと冬也は、おねだりポーズを維持し続ける。空と翔一は石の様に固まり、土地神は口をポカンと開けて呆けていた。
何分かは経過したであろう。土地神は、なかなか反応を見せない。焦れた冬也が睨み付け、威圧する様に近づいて行った。
「無視すんなよ、土地神様。こっちは今すぐ、糞野郎をぶちのめしてぇんだ。早い所、神気をくれよ」
冬也は威圧し続け土地神に尚も近づく。冬也が近づいて行くと、土地神は怯えた様に立ち上がり後退った。
「良い。わかったから。其方はこれ以上近づくな」
「何言ってんだ、土地神様?」
「お兄ちゃん、止めてあげて。土地神が怯えてる」
ペスカの言葉に土地神は大きく何度も頷き呟いた。
「冬也。気が付いておらんだろうが、其方は神の子だ。元々強い神気を持っておる。それが戦いで強まったのだろう。大神ならいざ知らず、我の様な土地神では、其方の神気にあてられ存在ごと消されかねん。其方が二度とこの神社に、足を踏み入れない事を受け入れるなら、我が神気を与えてやろう」
「やるね~お兄ちゃん。とうとう神の領域に足を突っ込んだか!」
「馬鹿言ってんじゃねぇよペスカ。あんたもだ、土地神様! 人間じゃねぇみたいな言い方すんな!」
ペスカがあっけらかんと答えるが、空と翔一は冬也と土地神のやり取りに圧倒され言葉が出ない様子だった。合点がいかない冬也は、眉をひそめながらも後ろへ下がる。
冬也が下り切った所で、土地神から淡い光が三つ放たれ、ペスカ、空、翔一の三人を包み込んだ。
「おい! 俺には無いのかよ」
「其方にはいらぬだろ! 近寄るで無い! 其方ら全員直ぐに立ち去れ!」
近寄ろうとする冬也を、土地神が声を荒げて遠ざける。そして土地神は、本殿の奥へ吸い込まれる様に消えて行った。
土地神が消えると、ペスカは体内のマナを確認する様に、目を閉じて集中する。空と翔一は未だに呆けていた。
ペスカ達四人は、本殿を離れ拝殿に戻る。憮然としてため息をつく冬也と対照的に、ペスカは笑みを零して歩いていた。空と翔一は言葉が出せず黙って後に続く。
拝殿では神具の積み込みが終わった様で、遼太郎が一人で煙草を吹かしていた。
「おせぇよ。用事は終ったのか?」
「終わったよ、パパリン」
「なら早く車に乗れ。出発するぞ」
遼太郎の問いにペスカが明るく答えると、遼太郎は急かす様に四人に言い放った。
「翔一君は、助手席ね!」
笑顔のペスカが、冬也の手を引き車に向かう。しかし冬也は、ペスカの手を振りほどき助手席に座る。冬也の行動にペスカは舌打ちし、空と翔一は苦笑いを浮かべた。
全員が車に乗り込みスピードを上げ走り出す。車内の中では、三者三葉の表情を浮かべていた。淡々と運転に徹する遼太郎。笑顔のペスカ。闘志を漲らせ険しい顔の冬也。状況が上手く呑み込めいない空と翔一は、押し黙ったままだった。
やがて空が重い口を開く。
「あのさ、ペスカちゃん。土地神様って何をしたの?」
「あ~。それなら少し集中して体を見てごらん」
ペスカが言った様に、空と翔一が集中して眺めると、ぼんやりとした淡い光が自身の身体を包み込んでいた。
「それが神気だよ。神の力だね。神気が馴染めば、二人の能力は上がるよ。到着する迄には、神気が馴染む様にしてね」
「そう言われても。どうすれば良いの?」
「包み込んでる光を、身体中で吸収する様に意識すれば良いよ」
空の問いにペスカが答えると、空と翔一は神気が身体に馴染む様に集中しだした。冬也は黙ったまま、ペスカ達の様子をバックミラー越しに見ていた。
校舎内では慣れていない為、雄二を助け出した所で、集中が途切れてしまった。しかし、落ち着いて確認すれば、体の奥底に力の奔流が渦巻いている。
「ペスカ。神気って言ったよな。少し理解した気がするぞ」
冬也が零す様に呟くと、力強い光が冬也の体内から車内に溢れ、車内全員を強烈に威圧した。遼太郎とペスカは苦悶の表情を浮かべ、空と翔一は気を失いかける。
遼太郎は苦痛を堪える様に蛇行する車を操作し、慌ててペスカは冬也に声をかけた。
「お兄ちゃん、抑えて」
「すまん。みんな大丈夫か?」
冬也は溢れた力を、体内に取り込む様に抑えて謝罪する。車を安定走行させた遼太郎は、左の拳で冬也を殴りつける。
「馬鹿野郎! こんな所で、慣れない神気を操ろうとすんな! あぶねぇだろが! てめぇの神気は、馬鹿みてぇに強くなってんだ! 簡単な威圧程度で、人を殺せるんだぞ! 時と場所を考えて使え!」
「そうだよ。ちゃんとコントロール出来る様になってからにしてよね」
冬也は申し訳無さそうに肩を竦めるが、表情は険しいままだった。しかし冬也の闘志は、車内に伝染していく。ペスカを始め、空と冬也も顔つきが真剣なものに変わる。だんだんと車内の緊張は高まっていった。
そして冬也の一言で、皆が更なる闘志を燃やしていく。
「今度こそ、あの糞野郎をぶっ飛ばすぞ!」
車内の闘志が最高潮に高まった所で、目的地である高尾山の麓へたどり着く。
高尾山口の周辺道路は既に警察により封鎖されている。到着するや否や、遼太郎は同僚達と共に車から神具を運び出し、結界の準備を整える。
遼太郎達の組織が結界を整えている間、待機中のペスカは仲間を見渡す。冬也は言わずもがな。空と翔一も神気が馴染み、引き締まった表情をしていた。
気合十分な仲間たちを見て、ペスカは少し綻んだ顔を引き締め直す。
結界の準備が整い、遼太郎が祝詞を唱えだす。遼太郎の祝詞が終わると、高尾山を囲む様に光の輪が台地に描かれる。
「準備は良い? みんな行くよ!」
ペスカの掛け声で、ペスカを含む四人が、ロメリアとの決戦に向け走り出した。
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