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白の章
白二十三話
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「今日はとびきりの不思議な旅人でしたね」
夕食が終わり、吟遊詩人の話を聞き終えたスターチス王とエーデルは王の部屋に引き取った。
「去年は塔の町の絵を描いた画家が城に訪れました。その者の旅の話も面白かったですよ」
「毎年異界に関わる旅人を受け入れているのですか?」
「私が物心ついた頃にはそういうものになっていましたね。それは歴代のスターチス王への誕生日プレゼントのようになっていますね」
「西大陸の大国の王の誕生日とはそういうものなのですか?」
「いいえ。異界に関わる者達は、アーサ様との縁で城に来るようです。リン・アーデンが異界でも珍しい者なので、その繋がりのあるアーサ様の縁者と縁を結んでおきたいと考えているようです」
「では異界には詳しいのですね?」
「広いということしか分かりません。来年は異界の貴婦人がきっと訪れると思いますので、エーデルも尋ねてみたらいいですよ。親切な方ですから」
「そうですね。楽しみにします」
スターチス王は窓に立ち、夜空を見上げた。星が散らばって輝いていた。エーデルも窓に入り空を眺めた。
「あ、今流れ星が落ちましたね」
エーデルは珍しき流星を見つけて喜んだ。
「宇宙に送られた王が戻られたのかも知れませんね」
「星葬の王は流れ星のように落ちてくるものなのですか?」
エーデルは意外な話にスターチス王に聞いた。王は答えた。
「そうです。棺は焼けてしまい、魂だけが帰還します。そしてその時代の王が星葬される時、一緒に宇宙へ戻ります」
「星送りの王は宇宙にいる間は長いですよね」
「もしかしたら、魂が宇宙を旅しているのかも知れませんね。星葬の王は代々冒険が好きな者ですから」
「スターチス王は私のことを見ていて下さるのでしたよね」
「ええ、ずっと見守っています」
スターチス王は窓を閉めた。そしてエーデルを抱きしめた。
「私が宇宙へ行ったあと、エーデルは自由です。その後エーデルがどんな人生を選ぼうと私は見守っているだけです。それが一緒の長さを生きられない私と生涯を共にしてくれるエーデルへの御礼です」
「そんなことを考えてらしたのですか……」
エーデルはふと寂しさを覚えた。それを振り払ってエーデルは明るく言った。
「では私はあなたが宇宙へ行ったら、星空の日は空を見上げましょう。あなたが私を見つめるように、私もあなたのことを見つめ続けます」
「ありがとう、エーデル。でも無理はしないで下さい」
「あまり寂しいことを言わないで下さい……」
エーデルは本音をぽつりと言った。スターチス王は謝った。
「すみません……」
エーデルは明るさを取り戻して言った。
「意外と私はどんな時でも楽しく生きています。ご存じでしょう? 心配しなくても大丈夫ですよ」
「エーデルの明るさには救われます。いつもありがとう」
スターチス王はエーデルにキスをした。スターチス王は感謝の気持ちを長く伝えた。エーデルは受け止め、身体に力が抜け、王に身を任せた。スターチス王は語りを止めた。そしてエーデルの頭をゆっくり撫でた。
「今日はさんざしの甘い香りがしますね」
エーデルは心地良さに浸った。
「疲れましたか?」
王は優しく聞いた。エーデルは呟いた。
「ご存じでしょう?」
「今日はエーデルとずっといたいと思っていました。大丈夫ですね」
「……ええ、そうかなと思っていましたよ」
二人はベッドに座った。スターチス王はエーデルの好きな所にキスを与えていった。エーデルは恍惚としてそれを愉しんだ。いつものゆっくりしたペースで二人は情けを交わし合った。
夕食が終わり、吟遊詩人の話を聞き終えたスターチス王とエーデルは王の部屋に引き取った。
「去年は塔の町の絵を描いた画家が城に訪れました。その者の旅の話も面白かったですよ」
「毎年異界に関わる旅人を受け入れているのですか?」
「私が物心ついた頃にはそういうものになっていましたね。それは歴代のスターチス王への誕生日プレゼントのようになっていますね」
「西大陸の大国の王の誕生日とはそういうものなのですか?」
「いいえ。異界に関わる者達は、アーサ様との縁で城に来るようです。リン・アーデンが異界でも珍しい者なので、その繋がりのあるアーサ様の縁者と縁を結んでおきたいと考えているようです」
「では異界には詳しいのですね?」
「広いということしか分かりません。来年は異界の貴婦人がきっと訪れると思いますので、エーデルも尋ねてみたらいいですよ。親切な方ですから」
「そうですね。楽しみにします」
スターチス王は窓に立ち、夜空を見上げた。星が散らばって輝いていた。エーデルも窓に入り空を眺めた。
「あ、今流れ星が落ちましたね」
エーデルは珍しき流星を見つけて喜んだ。
「宇宙に送られた王が戻られたのかも知れませんね」
「星葬の王は流れ星のように落ちてくるものなのですか?」
エーデルは意外な話にスターチス王に聞いた。王は答えた。
「そうです。棺は焼けてしまい、魂だけが帰還します。そしてその時代の王が星葬される時、一緒に宇宙へ戻ります」
「星送りの王は宇宙にいる間は長いですよね」
「もしかしたら、魂が宇宙を旅しているのかも知れませんね。星葬の王は代々冒険が好きな者ですから」
「スターチス王は私のことを見ていて下さるのでしたよね」
「ええ、ずっと見守っています」
スターチス王は窓を閉めた。そしてエーデルを抱きしめた。
「私が宇宙へ行ったあと、エーデルは自由です。その後エーデルがどんな人生を選ぼうと私は見守っているだけです。それが一緒の長さを生きられない私と生涯を共にしてくれるエーデルへの御礼です」
「そんなことを考えてらしたのですか……」
エーデルはふと寂しさを覚えた。それを振り払ってエーデルは明るく言った。
「では私はあなたが宇宙へ行ったら、星空の日は空を見上げましょう。あなたが私を見つめるように、私もあなたのことを見つめ続けます」
「ありがとう、エーデル。でも無理はしないで下さい」
「あまり寂しいことを言わないで下さい……」
エーデルは本音をぽつりと言った。スターチス王は謝った。
「すみません……」
エーデルは明るさを取り戻して言った。
「意外と私はどんな時でも楽しく生きています。ご存じでしょう? 心配しなくても大丈夫ですよ」
「エーデルの明るさには救われます。いつもありがとう」
スターチス王はエーデルにキスをした。スターチス王は感謝の気持ちを長く伝えた。エーデルは受け止め、身体に力が抜け、王に身を任せた。スターチス王は語りを止めた。そしてエーデルの頭をゆっくり撫でた。
「今日はさんざしの甘い香りがしますね」
エーデルは心地良さに浸った。
「疲れましたか?」
王は優しく聞いた。エーデルは呟いた。
「ご存じでしょう?」
「今日はエーデルとずっといたいと思っていました。大丈夫ですね」
「……ええ、そうかなと思っていましたよ」
二人はベッドに座った。スターチス王はエーデルの好きな所にキスを与えていった。エーデルは恍惚としてそれを愉しんだ。いつものゆっくりしたペースで二人は情けを交わし合った。
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