ある島国の軍人は異世界へ

太郎

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第五十話 なんかラスボスぽいのが出ちゃった!??

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─カルド王国─ 


割り当てられた地点に到着した"明星"パーティー。
索敵しハイオーガを見つけ出して討伐するのが、今回の任務となる。
北の大森林からある程度離れた地点ではあるが、大量の魔獣に周囲を包囲されていた。

(はわわわわ・・・ま、まだハイオーガと戦わなくちゃいけないのに・・・大きな狼に囲まれた・・)

黒髪黒目の少年の、モリナは周囲を見回す。
ざっと60匹はいるだろう、白狼の群れに囲まれている。

「よーしお前ら、ハイオーガの前の準備運動といこうぜ!!!」

グラウスが全身にオーラを纏って狼に突撃していく。
他の前衛が分散して狼に突撃していく。

「支援する。火炎魔法ファイアーボール
火炎魔法ファイアーボール

双子姉妹が火球を左右に放つ。
それが狼に直撃し、真っ黒に焦がした。
熱風で怯む白狼達。
そこへ前衛が一斉に切り込んだ。

グラウス達が次々と狼を切り倒していく。

「凄い・・」

周囲の狼達を次々に倒していく。
ていうか僕は双子の姉妹の横で何もしていない・・・。
そもそも何も出来ないし・・・。
なんで僕はこんな所にいるのかな?

火炎魔法ファイアーボール
火炎魔法ファイアーボール

双子の姉妹が次々に魔法を放っていく。

「あちぃっ!?」

あ、ハガードに魔法がかすった。
ちょうど後ろから飛んで来たから見えてなかったんだろうね。
一瞬驚いたハガードは何事も無かったように狼を狩っていく。

「・・・・」

それにしても、なんで狼達は僕達の方に来ないのかな?
特に僕なんて何もできないから襲われたら即死確定なのに。
ああ、魔法使いの双子姉妹がいるから怖くて近づけないのかな。
獣は炎が怖いって言うしね。

「ふう・・・」

それから数分かけて、大体倒し終えた頃にそれはやってきた。

「お・・おいおい・・・!!!!」

「これは夢か・・・?」

「ちょっ・・・ちょっと・・嘘よね・・・やめてよ・・・」

「何故こいつが・・・」

「・・・・やばい」
「・・・これは無理・・」

全員が、その存在に釘付けになっていた。

「・・大きな狼・・・?白銀の・・・」

大森林の方から、ゆっくりと近づいてくる巨大な狼。
全員がその場から動けないでいた。
あ・・なんかやばい。僕でも分かるけどやばい。
目が真っ赤だし、全身からオーラがあふれ出てるよ・・・?
ゲームで言ったら、絶対に出会っちゃいけない隠しボス的なやつ。
ある一定の条件を満たしたら出てきちゃう、ボスよりヤバイやつ。

「あ・・・」

死んだ。これは絶対に死んだ。
足が震えて動けない。
あの真っ赤な瞳を見てから手足が動かない。
声も出ない。

「あ・・・あああ!!!!!!!!」

「あああああぁっっっ!!!!来るな!!!!来るんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

「い、いやっ、来ないで!!!!!」

「ああぁぁぁっっっっ」

前衛の全員が動転したような叫びを上げる。
やばい、やばいよ・・やばすぎるよ・・・!!!
前衛の皆がこんな声出すなんて普通じゃないよ!!???
本当に僕、ここで死んじゃうよ!!?
プルプル震える事もできないで、ただ立ち尽くしていると、双子の姉妹が僕の腕に抱きついてきた。

「モリナ怖い・・・」
「モリナ助けて・・」

二人が震えながら抱きついてくる。
僕も怖いよ・・・死んじゃうよ・・・・。
あ・・・どんどん近づいてくる。
なんか白銀の狼が、僕の事をじっと見つめてる気がするんですけどっ!??
なんでなの!!??なんで僕の方をじっと見てるの!!???

"────────"

なんか変な声が聞こえたような気がする・・・。
ああ死にたくない死にたくない・・・。
誰か助けてよ・・・まだ死にたくないよ・・・。

"──────めよ"

ああ、なんかやっぱり声が聞こえる。
おじいさんのような声が・・・。
あの狼の声だったりして・・・。
今からお前を食うとか言ってるのかな・・・。

「モリナっっっ助けてっっっっ」
「モリナっ怖いよっ、食べられるよっっっっ」

白銀の狼が近づいてくるのを気配で感じるのか、双子の姉妹が腕に更に力強くしがみついてくる。
僕も怖いよっ。
誰か助けてよ!!!!!

ああ・・どんどん近づいてくる・・・。

前衛の隙間を通り過ぎて、何故か僕の方へ歩いてくる!!!!!??????
やめてよ、なんで僕からなのさ!!!!!???
前衛の皆はもう発狂したように叫び声を上げているけど、僕もそれ所じゃない・・・。

あああ・・・・僕も叫びたくなってきた・・・・怖い怖い怖い怖い、誰か助けて!!!!!



"我を求めよ。さすれば与えよう"


さっきから頭の中に響いてくる声が、一際大きく鳴り響いた。


""誰か知らないけど助けて下さい!!!お願いします!!!!!""




次の瞬間、大地が鳴動する。


「gruuuuuuu......」

白銀の狼が歩みを止め、眼前の少年を見つめる。
先ほどまでの歪な存在とは違う。
確たる存在感と刻まれた血の証。
それが何らかのキッカケにより目覚めたのだ。
莫大なオーラを身に纏い、瞳を緑色に輝かせる者。

『魔王の飼い犬か。まさか俺とやり合うつもりかね?』

その声は少年のものだが、圧倒的な存在感を放っていた。
白銀の狼はその存在感を知っている。

「guuu.......」

矮小な肉体には似つかわしくない存在感。

「gruaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!!!!!」

白銀の狼が莫大なオーラで体を包み、魔力を解放させる。
幾重にも魔法陣が展開され、黒い球体がモリナと双子姉妹を飲み込む。

そして────

巨大な爆発が辺りを吹き飛ばした。





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