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55.EX1

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 視界が揺れる。
 僕と金子は11年の月日を経て再びダンジョンへ探索へ向かう。

 ……
 …………

 視界が揺れ、一瞬の視界の暗転の直後、僕達二人は忌まわしきダンジョンがある教室に戻ってきた。
 僕と金子はお互いに教室の中をキョロキョロと見回している。

 11年もたったのだ、誰もいるはずがない。
 否――あのゲームマスターが、クラスメイト達を無事に生存させるわけがない。

 僕と金子は別行動で、教室や個室や教室に併設されている施設へ移動した。

 まず、僕の部屋がある個室に向かった。

 11年使っていなかった部屋だが、僕が扉を開けようとすると――
 僕の部屋だった場所は、僕を主人と認め部屋の扉を開いた。

 部屋の中を確認する。

 11年前と何も変わってなかった。
 汚れているわけでもなく、11年前に僕が過ごした状態のまま部屋は維持されていた。
 どうなってるんだ? まぁ、掃除する必要が無くなったのは、ありがたいと思うことにしよう。

 僕は自室を出て、ほかにも空き部屋があるかどうかを確認した。

 空き部屋は4つあった。

 僕の部屋・唯香の部屋・藪の部屋・金子の部屋の4つだ。

 他の部屋にも入れるか試すために、僕は藪の部屋を訪れた。
 誰もいないのは解っているが一応ノックをしておく。

 コン、コンコン と 扉をたたく音が誰もいない廊下に響いている。
 そして、扉のドアノブに手をかけると扉が自動的に開いた。

「お、お邪魔します」

 誰もいない部屋だが、挨拶をして部屋に入った。

 藪さんの部屋だが、この部屋も11年前と変わりはない。
 違いといえば、彼女が座っていた椅子に見知らぬ女医者が座っていた。

「いらっしゃい。 今日は何のようだい?」

 見知らぬ女性が僕に話しかけてきた。

「えっと、ここは藪さんの部屋じゃ?」

「あぁ、元の部屋主の事かな? 私はゲームマスターに皆の治療業務を委託された。
 君に解りやすくいえば、NPCと言えば解るかな?」

「どうして、NPCを置くようなことになったんだ?」

「それは、私にも解らないよ。 私にできることは君達の治療だけだ」

「あぁ、解った。
 怪我した時は利用させてもらうよ」

 そういって、僕は 元ヤブさんの部屋を去った。
 となると、唯香の部屋にもNPCがいるのか?

 僕は彼女の部屋へと向かった。

 彼女の部屋に到着し、すぐさま彼女の部屋をノックする。

 そして、廊下に響くノック音。
 ドアノブに手をかけても、扉が開く様子はなかった。
 ドアノブを回して、扉を開けようとするが鍵がかかっていて、開くことはできなかった。

 となると、だ・・・ 藪さんの部屋が 【医者】だからNPCが必要なので特別扱いということか。

 次に、金子の部屋だが……

 僕が金子の部屋へ向かう道中に金子と再会した。

「キミの自室はどうなってた? 僕の部屋は11年前とほぼ同じだったよ」

「あぁ、こちらも変わりはなかった。
 ただ、鍛冶屋のスキルが変更になっていて、人吉が使ってる盾みたいなオリジナル装備も上級装備として、作れるようになってたよ」

「え?  それはどういう意味だ?」

「人吉の盾は、オレが手を加えたハンドメイド装備だ。
 上級装備にそういう装備があったみたいだ。
 装備の種類もバリエーションが増えて、武器が鎧を兼ねる魔装というものも買えるみたいだ」

「へぇ……魔装か……カッコいいな。
 変身するような感じ?」

「それは作ってみないとわからないかな……。
 あと、爪装備が作れるようになってたよ」

「それじゃ、これで足りるか?」

 と言って、金子に所持金をすべて渡した。

 僕はボスモンスターを撃破したが、その後の清算をしていない。
 11年前の収益は自分がすべて持っているのだ。

「最終日の探索の収益か?」

「あぁ、清算せずに僕は治療するために薮さんの部屋に運ばれただろ。
 これで僕の分の装備と金子の新装備を整えてくれ」

「あぁ、解った」

「それと、新しい装備は爪装備とシールドアローを持たせてくれな。
 僕達は魔法が使えないんだ……遠距離の攻撃手段はいるだろ?」

「了解だ。オレなりに考えて装備を選んでみるよ」

「あぁ、任せた。
 探索開始は明日からにしよう……。
 探索に慣れる為にも、一階から探索しようか?」

「そのあたりの判断は人吉に任せるよ」

「あぁ、解った。
 それじゃ、また明日な」

 僕は金子と別れ再び自室に戻った。

 11年前と同じベッドだ。
 見慣れた天井を見上げながら物思いにふける。

 息子達をピエロ男の魔の手から救うためにダンジョンに戻ったが、この行動は正しかったのだろうか?

 解らない……

 わかっている事は、僕らの探索が失敗すれば家族や金子の家族が悲しむと言うことだけだ。
 失敗は出来ないな……

 僕も生きれるよう、金子も生き残れるようにやっていくしかない。
 そんなことを考えながら、僕は眠りについた。

 ……
 …………

 眠りから覚めた。
 装備など持っていないので、着替える事はせず自室から出て教室へ向かった。

 教室への道のりを歩くーーそして、教室へ到着した。
 教室には11年前と同じように、金子が装備を準備して待っていてくれた。

「おはよう、人吉。  11年前と違って早起きじゃないか……」

「あぁ、僕に皮肉を言ってくれる友人が、オマエだけになったな」

「もしかして、人吉……オマエ? 佐々木達の事……」

「あぁ、無いとは言えない。僕達は無事に生き延びれた。
 だからこそ、願いが叶うというのなら……佐々木や、能丸と彩子を救いたい。
 ついでにクラスメイト達やピエロ男の犠牲になった人達もついでにな」

「そうか、それなら絶対に負けられないな。
 よし、新しく仕入れた装備を見てくれ」

 教室に置かれたテーブルの上に、新装備やアイテムがところ狭しと並べられている。

「なぁ、防具がシールドアローしかないんだが?
 他の防具はどうした?」

「ふふふ……いやぁ変身出来るような防具が欲しいなと思ってたら。
 まさか、実現するとはな……」

「ん?  どーいう意味だ?」

「今度の武器は防具でもあり、武器でもある。
 いわゆる魔装と呼ばれるものだ……」

「ナニソレ、カッコいいじゃん」

「だろ? 変身は男のロマンだよな」

 目をキラキラと輝かせるようにして、金子は説明を続けている。

「人吉の装備は、新素材のミスリル製のシールドアローと、ミスリル製の鎧の魔爪だ。
 とりあえず、手にとって装着してみてくれ」

 テーブルに置かれている、爪装備と盾を身につけた。

「それでな。このミスリルって金属が優れものでな。
 まず堅い、そして魔法や、熱や寒さにも強いっていうな。
 今までにない素材なんだよ」

「へぇ、それでヤケに喜んでるのな」

「あはは、やっぱりわかるか?」

「まぁ、そりゃな」

「それで、魔装の展開はどうするんだ?」

「あー、それは簡単だよ。
 装備を身につけた状態で、鎧化アーマードと言うか、それを省略してって言えばいい」

「なにそれ、いちいちカッコいいな」

「ちなみに、オレの趣味で魔装化の展開の合言葉は決めさせてもらった」

「あぁ、不満はないな。
 それじゃ試しに、【魔装解放アムド】」

 僕の全身を魔装が、包んでいく。

 利き手の右手には、手甲付きのミスリル製のカギ爪。
 左手には使い慣れた、シールドアロー。

 爪の魔装は、人体の急所になる場所を局所的に守る仕様になっていて、良くも悪くも軽装備といった感じだ……。

「へぇ……動きやすそうだ。
 金子の装備は、どんな感じなんだ?」

「ふふふ……人吉ばかり、弓と爪の二種類使うのはズルいと思ってたからな。
 オレも今回は負けてないぜ。盾役をやりつつ、支援にも回れる装備がコレだ!!
魔装解放アムド】!!」

 僕の魔装が軽装備というのなら、金子の装備は完全なる重装備だ……

 白、いや、白い輝きを放つ鎧や大盾、そしてツルギを持ち。
 鎧ですべての攻撃を防げるような完全な武装状態だった。

「ふふふ……聖騎士の魔装だ!!
 これを使うことによって、戦闘や盾役、そして……支援魔法も扱えるぜ」

「面白いなソレ」

「だろぉ……。
 少しでも役に立てそうな装備探してたんだ」

「それじゃ、新装備を手に入れたし。
 一階から復習を兼ねて探索して……最終階を目指そう」

「おう!!」

 こうして、僕達二人は再びダンジョンの探索へ向かった。
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