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0)プロローグ
しおりを挟む「フィオーレ。私は君の事がもう誤魔化しようも無いほど好きなんだ」
「……」
「君が他の有象無象に笑顔を言葉を視線を向ける度に腸が煮えくり返る思いで見つめていた。どうか私のモノになって欲しい」
まず最初に何故僕はこんな所にいるんだろう。
豪華だがゴチャゴチャしていない清廉された部屋のベッドの上に押し倒されている。さっきまで学園の隅でほっそりとやっている農園にいたはずだ。そこで彼に話しかけられいつの間にかここにいた。
彼とは口にするのも烏滸がましい。体格は細身だが決して筋肉がない訳ではなく、僕の身体を押さえつけるには充分の筋肉がある。そして美しい金髪に整った顔面。紅色と深緑色のオッドアイは王族の象徴だ。
そう、僕を押し倒している人物はこの国の王太子クラウン・アレクサンドロスだ。
対して僕は落ちこぼれ子爵家の長男で名前はフィオーレ・アルノート。父と母が善人すぎて色んな人達に手を貸したり騙されたりした結果、没落寸前の貧乏貴族という訳だ。しかし、領民からは愛されているためそこそこ普通の生活はできている。僕はただでさえお金がかかるこの学園に皆から背中を押されて入学した。
僕は土属性のため、領地に特産品を作ろうと学園でタダで使える農園を使わせてもらい、コツコツと作物の研究に励んでいたのだ。
なんて別の事を考えていると察した殿下が口を開く。
「また、私が目の前にいるのに他のことを考えているのか?余裕だな」
「いえ、そんなことは…」
綺麗で整っている顔が少しずつ近づいてくる。
(ん?んん?んんん!?!?!?)
もう少しで口と口がくっ付くという所で思いっ切り顔を逸らす。危ない、もう少しで王族とキスをする所だった。すると…
「いっ!!」
首筋に痛みが走る。思い切り歯を立てられ首を噛まれたのだ。思っていたよりもかなり痛い。
「私といるのに他のことを考えるからだよ?お仕置だ」
「何故こんなことを…」
「何故?さっきも言っただろう。私は君の事が好きなんだ」
いつものような貼り付けた完璧な笑みではなく少し惚けたような甘い笑顔を僕に向ける。優しいほほ笑みを向ける割に決して離さないぞと言わんばかりの力で僕を押さえつける。それがまた怖かった。
「答えを聞かせてくれるかい?」
はいかyesか喜んでしか許さないような声色で言われても困る。僕は落ちこぼれの貴族でどう考えても殿下と釣り合わない。それに学園を卒業したら領地に帰りたいと思っている為、ここで頷いてしまうと帰れない確率が高くなってしまう。
「大変烏滸がましいのですが、拒否権って…」
「ん?」
「ひぃっ!!!」
美人の無言の圧力ってやつだ。めちゃくちゃ怖い。望んだ答え以外は聞きたくないという意思がヒシヒシと伝わってくる。
僕はもうビビりすぎて一言も発せなくなっていた。周りがしんっと静まり返る。この無音の空気が本当に辛い。
先に沈黙を破ったのは殿下の方だった。
「私はね、フィオーレ自らの意思で私のことを求めて、選んで欲しいんだ」
「……」
「でも、そのままずっと君の返事を待ち続けていたらお互い年老いてしまうと思うんだ」
殿下の言う通りだ。もし決定権を先延ばしにできるのであればそうなるだろう。流石僕のことをよく分かってるな。あはは…
「だからまずは私がどれくらいフィオーレのこと好きか身体にわかってもらおうと思って♡」
「え?」
しゅるしゅると服のネクタイに手をかけていく。これは本当に僕の貞操の危機なのでは!?いや、それよりも王族との既成事実の方が大問題だ。
「最終的には心も身体も手に入れるつもりだから今更どちらが先でも構わないよね?」
「だだだだダメです!!!」
「何で?」
「殿下には婚約者様がいるのでは無いのですか??不貞になってしまうのではと…」
「ああ、サテラの事か」
「そうです!サテラ様の気持ちを考えると胸が張り裂けてしまいま…」
殿下は言い切る前に衝撃の事実を明かす。
「彼女の恋愛対象は〝女性〟なんだ。私もその時は恋愛になんぞ興味無かったから仮初の契約結婚と言うやつだ」
「そ、そんな…」
「気にするなら今すぐにでも真実を皆に伝えてこよう。さて、これで君の決断を鈍らせるものは無くなったかな?」
やばい。本当に貞操の危機だ。もしここでヤられてしまえば確実に逃げ道はなくなる。
僕は自分で作った防犯用の小さい泥人形を握り込む。これは最近開発した危険な状況から逃げるために作った転移魔法を付与してある泥人形だ。転移する場所に予めもう1つの泥人形を置いておくだけで簡単に転移できる代物だ。見た目が少し気持ち悪いのが難点なのだが…
まだ試作品の為本当に上手くいくか分からない。しかし、今にも全ての服を脱がされそうになっているのだ
(まてまてまて、いつの間に上を脱がした!?黙々とズボンに手をかけないでくれ!!)
「君は何か考え事をすると周りが見えなくなってしまうところがあるよね。ほら、もうあと1枚」
いつの間にか僕の身体を守っているものはパンツ1枚になってしまっていた。ニヤッと妖艶で怪しい笑みを浮かべる殿下の顔は王子様とは到底言えないような顔をしている。
僕は不敬も覚悟で殿下の身体を少し押しのける。本当は突き飛ばす気持ちで押したのだが少し後ろに体制を崩す程度しか動かせなかった。
「すみません!!殿下!!」
泥人形に魔力を込める。次の瞬間、僕の視界は煌びやかな部屋から質素なこじんまりとした部屋に変わっていた。無事転移は成功したみたいだ。
(王太子殿下に告白され、押し倒された挙句、ひん剥かれかけた!?!)
「僕は一体どうしたらいいんだああああ!!!」
何も無い部屋で僕は大きな声で叫んだ。
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