主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい

発光食品

文字の大きさ
79 / 115
光の国に転生した闇属性の俺!?

78)闇の眷属

しおりを挟む
「ではお父様、魔法を少し使うので離れていてください」

「お願いだから危ないことだけはしないでくれよ」

「もちろんです」

こくりと父の言葉にうなずく。もう一度書庫に戻るとやはりあの謎の声が聞こえてきた。一応光属性の彼らにもこの声が聞こえるか聞いてみたが、父と同じ結果だった。

軽く深呼吸をする。人前ではなかなか魔法を使うことなんてないからだ。

「ー闇よ」

足元の影を部屋中に張り巡らせるイメージで魔法を使う。さっきまで明るかった室内が夜に包まれているような感じで暗くなる。

『わっ、何これ!』

「ずっと僕を呼んでいたのは君?」

『人の子は僕っちの声が聞こえるの?』

「ああ、聞こえるよ。だから姿を見せてくれないかな?」

魔法を使った直後から、音として聞こえていた声が急にはっきりと聞こえるようになってきた。俺の問いに対して答えられるということは謎の声の正体は人語を理解できるものであることがわかった。

『僕っちも君の前に現れたいのは山々なんだけど、色々あってに出れないんだ。見つけてくれない?』

「ナハト?どうかしたのかい?」

父が不安そうな顔で俺の顔を覗き込んでくる。まだ、父や周りの人にはこの声は聞こえていないようだ。魔法を使う前まではこの声がどこから聞こえているのか見当もつかなかったが、今はなんとなくわかる気がする。部屋の中で特に闇属性が濃い部分を見つけた。

僕のずっと聞こえていた声の正体がいる気がします。一応護衛の方は身構えていて欲しいです」

護衛の人に近寄ってもらう。万が一のことがあったらと考えると少し怖いからだ。俺の周りを囲むように護衛の人たちが配置につく。俺は棚の中から迷わずに闇属性を感じる本を手に取る。手に取ってみるとただの本のようにしか見えないが、その本の周りは明らかに闇属性が取りまいている。

どうしたらいいか説明はできないけど、身体はなんとなくどうしたらいいかわかっているようだった。自然と本の中心に手を伸ばす。

「―闇よ。我の前に顕現せよ」

瞬間、手に取った本が禍々しい色を放つ。俺は瞬間的に手を離そうとしたが、その本にどんな力が働いているのかわからないが離れない。それに魔力がどんどんその本に吸われていっている気がする。イヤリングに微量の闇魔法を流して自分の魔力の状態を確認する。

1500、1300、1011、770…

ありえない速さで魔力が減っていくではないか。これはシャドウを召喚する時よりも早い。だんだん体の力が抜けてくる。頭も少しずつクラクラしてくる。

(そろそろやばいぞ。誰か助けてくれ)

「ナハト!!」

父が強引に俺から本を引き剥がす。すると本は独りでに宙に浮かび、その上に魔法陣が浮き上がる。

ポンッ

目の前に現れたのは恐ろしい姿とは程遠い何かだった。兎と同じくらいの大きさに悪魔のようなツノと小さな羽の生えた何か。黒い色のそいつはフヨフヨと宙に浮きながら小さな牙をむき出しにして喋り出す。

「感謝するぞ人間!僕っちは闇の眷属シェイド様だ!!」

(闇の…眷属…?)

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。

零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。 鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。 ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。 「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、 「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。 互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。 他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、 両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。 フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。 丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。 他サイトでも公開しております。

魔王様の執着から逃れたいっ!

クズねこ
BL
「孤独をわかってくれるのは君だけなんだ、死ぬまで一緒にいようね」 魔王様に執着されて俺の普通の生活は終わりを迎えた。いつからこの魔王城にいるかわからない。ずっと外に出させてもらってないんだよね 俺がいれば魔王様は安心して楽しく生活が送れる。俺さえ我慢すれば大丈夫なんだ‥‥‥でも、自由になりたい 魔王様に縛られず、また自由な生活がしたい。 他の人と話すだけでその人は罰を与えられ、生活も制限される。そんな生活は苦しい。心が壊れそう だから、心が壊れてしまう前に逃げ出さなくてはいけないの でも、最近思うんだよね。魔王様のことあんまり考えてなかったって。 あの頃は、魔王様から逃げ出すことしか考えてなかった。 ずっと、執着されて辛かったのは本当だけど、もう少し魔王様のこと考えられたんじゃないかな? はじめは、魔王様の愛を受け入れられず苦しんでいたユキ。自由を求めてある人の家にお世話になります。 魔王様と離れて自由を手に入れたユキは魔王様のことを思い返し、もう少し魔王様の気持ちをわかってあげればよかったかな? と言う気持ちが湧いてきます。 次に魔王様に会った時、ユキは魔王様の愛を受け入れるのでしょうか?  それとも受け入れずに他の人のところへ行ってしまうのでしょうか? 三角関係が繰り広げる執着BLストーリーをぜひ、お楽しみください。 誰と一緒になって欲しい など思ってくださりましたら、感想で待ってますっ 『面白い』『好きっ』と、思われましたら、♡やお気に入り登録をしていただけると嬉しいですっ 第一章 魔王様の執着から逃れたいっ 連載中❗️ 第二章 自由を求めてお世話になりますっ 第三章 魔王様に見つかりますっ 第四章 ハッピーエンドを目指しますっ 週一更新! 日曜日に更新しますっ!

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

処理中です...