出会った頃からずっと

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再会

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「萩原さん、もし時間あれば別件の企画の打ち合わせもいいですか?」
「もちろんです。」
「すみません。ちょっと別室で萩原さんと打ち合わせを。相沢さんはお茶とお菓子をお召し上がりください。」
「はい、ありがとうございます。」
「相沢ちょっと行ってくるから待っててくれるか?」
「はい、片付けして待ってます。」
「翔と晴人、迷惑かけないようにな。邪魔しないように!」
「はい。」
「はーい!」

中野さんと萩原さんが退室して3人になった。
「美咲さん!久しぶりだよね!前にも増して可愛い!!」
キラキラした目でニッコリ笑う晴人くん。
「お久しぶり。まさかまた会うなんて思ってなかった!しかも芸能人なんだね!」
「俺はまた会う気がしてたよ!まだそんな知られてないんだ。でもこれからビックスターになるんだ。」
「だからはしゃぐなって。美咲さんお久しぶりです。あの時はありがとうございました。楽しい夏になりました。また再会できるなんて思ってなかった。」
「フフッ。私もです。びっくりしたけど。あの時はまだ学生だったから地元に住んでたの。今はこっちで就職して引っ越してきて。」
「そうなんだ!俺たちも出身は神奈川なんだよー。今はこっちで一人暮らしだけど。」
「そっか、じゃぁ上京組だね!よろしくお願いします。」
「こちらこそ!今回の企画担当ってことはこの仕事は美咲さんがいるってことだよね!楽しみだなー。」
「すみません。晴人あれからよく美咲さんなこと話してて。懐いてるみたいです。」
「フフッ。ありがとう。私はサブでメインがさっきの萩原さんなの。よろしくお願いします。」
「本当はお茶したりごはん行ったりしたいんだけどこの通り事務所が厳しくて。」
「デビュー前だから余計にな。てか晴人。お前ナンパしてるみたいだな。」
「失礼だな翔は。懐いてるだけだよ。」
「犬みたいだな。」
「フフッ。」
和気藹々とした2人の会話を聞きながら片付けをした。

萩原さん達も打ち合わせが終わったらしく、挨拶をして帰ることになった。
「ではお時間いただきありがとうございます。」
「こちらこそです。また後日よろしくお願いします。」
「美咲さんまたねー!」
手を振る晴人くんとお辞儀する翔くん。
「失礼します。」
私も挨拶をした。
「相沢!」
帰り道に先輩から話しかけてきた。
「知り合いだったのか、大丈夫か?」
「あっ、はい。知り合いと言っても学生時代にたまたま、花火見ただけですよ。」
「そうか。ならいい。」
きっとタレントと問題を起こさないかの心配だろう。
「まぁ、相沢の場合は心配いらねぇか。仕事人間みたいな日々だしな。」
「いや、そんなことはありませんよ、私も休日には趣味とか。」
「なんだよ、趣味は。」
「んー。読書とか?ショッピングとか?」
「ふーん。」
2人でワイワイ言いながら帰社した。

戻ると結衣ちゃんたちが業務をこなしてくれていた。
「ただいまー、ありがとう2人ともー。」
「おかえりなさい!いいんですよ!」
「おかえりなさい!先輩!」
2人ともお願いしていた業務をしてくれて助かった。
今度お礼しなくては。
そのあと今日することをこなして退社時刻を過ぎて少し残業。
まぁ仕方ない。黙々と作業をする。
「相沢。俺そろそろ帰るけど。」
「あっ、はい!私も後少ししたら帰ります!」
「あんま働きすぎるなよ、帰り気をつけてな。」
「はい!お疲れ様です!」
「おつかれー。」

しばらくして仕事を終えて帰ることにした。
地下鉄に乗って駅で降りて、通り道のテイクアウト店でフルーツティーを買って自宅前のベンチに少し座って夜風にあたりながら飲んだ。
さっぱりしていて美味しい。
たまにこうやって自分へのご褒美。
目の前には川があって少し行ったところに橋があって橋と周りの建物の明かりがついていてなかなか綺麗な景色だ。

今日も疲れたなぁ。
夜ごはんは残業しながらおにぎりを食べたのであとは帰ってゆっくりするだけ。
今日はあの日の2人に会えて、懐かしかったな。
今度凛にも話さないと。

ふと見ると川沿いの手すりに手をついて景色を見ている人がいた。
この辺は人も少ないし夜景が綺麗だから穴場なんだよね。
少し見ているとその人が振り向いた。
黒いキャップを被っていて全身黒い服装だった。
「あれ?もしかして美咲さん?」
「え?」
こちらまで来た。
「やっぱり。俺、翔だよ!」
帽子をとってニッと笑った。
「あっ!翔くん!なんで?また会った!」
「びっくり。仕事終わってからちょっとぼうっとしてた。」
「私も。帰り道にここで夜風に当たりながら飲み物飲んでたの。」
「帰り遅いんですね。お疲れ様です!ここ帰り道なんですか?何飲んでるんですか?」
「うん、残業してたので。翔くんもお疲れ様です。うん、すぐそこが家なの。これはフルーツティーだよ。」
「えっ、マジか。実は俺んちはその隣のマンション。俺はお茶があるから一緒に飲もうかな。」
そう言って隣に座って飲み始めた。
「え?隣のマンション?」
見てみると私の住んでいるマンションの横の大きなマンション。
芸能人なのに家教えていいのだろうか。
「俺たまにここでこうやって景色眺めてるんだけど会ったことないですよね。」
「確かに。私もたまに来ますけど。」
「美咲さん、俺年下だから敬語使わなくていいです。」
「いや、でもつい癖なの。翔くんいくつなの?」
「俺は22歳。美咲さんは確かあの時大学3年て言ってたから今は25ですよね?」
「3つ違いなんだね。そうです、なんか話してると大人びてる感じ。」
「いや、大人ではないよ。今日は再会してまた夜にも会って、偶然が重なるな。また会えて嬉しいです。」
「私も。あの花火の日すごく楽しかったです!」
「俺も。あの時思い立って3人でドライブで行ってさ。何しようかとか話してたら花火大会の日で。あの浜辺に行ってよかったよ。楽しかったし。湊くんと凛さんは元気ですか?」
「そうなんだ。なんかいいね!そういうの。元気にしてるよ。たまに電話で話すんだけど、湊も大きくなったよ。」
「へぇ。また会いたいな。」

2人でたまに話が途切れながら景色を見る。
でもなんだかこの沈黙も心地よかった。
「なんかこの景色みてるとさ、癒されるんだよね。だから仕事終わりにたまにここで考え事したり、なんも考えないでぼぉっとしたり。」
「私もそう。たまにここでビール飲んでから帰ったりもする。」
「ハハッ。なんかいいね、それ。」
「あっ、お仕事よろしくね!私が担当だからやりにくくない?」
「全然!むしろやりやすい。楽しみだし。晴人なんて大喜びしてメンバーに話してた。こちらこそよろしくお願いします。」

少し話して明日も仕事だし、肌寒くなってきたで帰ろうということになった。
「あのさ、美咲さん。」
「ん?」
「またここで会ったとき話さない?せっかくのご近所さんだし。」
「もちろん!よろしくお願いします!」
「お願いします。」
2人で笑い合って、翔くんはすぐそこなのにマンションの入り口前まで送ってくれた。
挨拶をして見えなくなるまでいてくれた。
優しい気遣いだ。

明日も頑張れそうだ。
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