34 / 54
第34話 聖女の企み
しおりを挟む
「わー玉座ってとってもキラキラしてますね」
「もちろんだ。更に言うと様々な魔法陣が展開されているため安全面も驚くべき高さだぞ」
「値段だけじゃないすべてが集結したものだったんですね……」
私が慄いていると、なにやらめでたそうな曲が流れ王様が入場し、玉座の前に立った。続けて王太子のミッシェ、更に聖女であるミズキが並ぶ。
ミズキもミッシェも下を向いているためその表情は見えない。
初めて見る王様は、上に立つものとしての威厳を感じる。ミッシェに似た面立ちの壮年男性だった。
「皆のもの。良く集まってくれた。今日は聖女召喚の成功と聖女を皆に知らしめるため開いた」
王様の声は良く通り、背筋を伸ばさなければいけないという威圧感を感じる。そんなに大きな声を出していないというのに、不思議だ。
周りも固唾をのむように、次の言葉を待っている。
「近年、我が国でも魔物が増え凶暴化している報告が相次いでいる。その為、三百年以来の聖女召喚に踏み切ることになった。コノート魔法師団長には尽力してもらい、見事成功を収めた」
フィスラの名前が出ると、フィスラに対しての拍手が起こった。
フィスラは一礼で返す。
何の動揺もないその姿に、ここに居るだけで動揺している自分との違いを感じた。
当たり前なんだろうけど、貴族で偉い人なんだな。
「聖女ミズキよ。こちらへ」
王様に促され、ミズキは王様の隣に並んだ。白の繊細なレースがふんだんに使われた、肌の露出の少ないドレスを着たミズキは聖女の名に相応しかった。
顔をあげたミズキの美しさに、周りが息をのむのがわかった。
「聖女ミズキは、素晴らしい力を我々に見せてくれるだろう」
「未熟ながら、この世界に光をもたらせるよう努力したいと思います」
隣で眩しそうな顔をして、ミッシェがミズキの事を見つめている。
「聖女ミズキには、王家に代々受け継がれている聖なる書を授与する。ミッシェ」
ミッシェに声をかけると、ミッシェは家臣から受け取った聖なる書を持ち、ミズキの前に立った。ミズキは跪いて当然のようにそれを受け取った。
何度か練習したのだろう。無駄のない動きだ。
ミズキはその書を皆に見えるように掲げた。
古そうな表紙の何の変哲もない本に見えるが、代々伝わるという事は、かなりの年代物なのだろう。
周りからは、割れんばかりの拍手が起きている。
「……やられた」
恍惚としたような雰囲気の中、ひとりフィスラが悔しそうにつぶやいた。
顔は笑みのままだが、私の手に添えた手に力が入っている。
良くわからないけれど、私はフィスラの手を撫でた。
「こちらの書には、魔導師団長しか解けない封印がされている。聖女と魔導師団長の魔力によって、かつての聖女の言葉が蘇るのだ。コノート師団長こちらへ」
ミッシェの言葉にフィスラは頷いて壇上へ上がった。
和やかにすすんでいるが、フィスラに掴まれた腕が痛く気がかりだった。
ミズキがそっとフィスラに聖女の書を差し出すと、フィスラは手で魔法陣を描き何かを呟いた。
魔法陣は空中でキラキラと輝いて、とても綺麗だ。そこにミズキが手を添える。
キラキラした光に、白いふわふわとした魔力が加わった。
光は回りながらそのまま本に吸い込まれていき、消えた。
「読めるか? 聖女ミズキよ」
ミッシェが問うと、ミズキは表紙をそっとめくった。
優雅な手つきだけど、目は真剣に文字を追っているように見える。
しばらく見入っていたが、一息ついてミッシェと王様に頷く。
「読めましたわ。これで間違いなく皆様のお役にたてると思います」
ミズキの一言で、まわりが更に盛り上がった。
「さあ、この後はパーティーを楽しんで行ってくれたまえ」
フィスラも壇上を下りて戻ってくる。
先程のつぶやきはどういう意味だったのか聞きたかったけれど、にこりと笑いかけるフィスラがここで話すなと告げていた。
「甘いものでも食べよう。ツムギ」
「はい。是非頂きましょう」
良くわからないけど、お誘いは大歓迎だ。疲れた時は甘いもの。
間違いない。
「コノート師団長」
手を取り合って移動しようとしたところ、呼び止められる。
振り返るとミッシェとミズキがにこにこと立っていた。
「先ほどはありがとうございました殿下。聖女ミズキ」
フィスラが礼をするのを見て、慌てて私も礼をした。
「コノート師団長のおかげで、聖女としての活躍を後押しされました。私、頑張りますね」
「もちろんだ。更に言うと様々な魔法陣が展開されているため安全面も驚くべき高さだぞ」
「値段だけじゃないすべてが集結したものだったんですね……」
私が慄いていると、なにやらめでたそうな曲が流れ王様が入場し、玉座の前に立った。続けて王太子のミッシェ、更に聖女であるミズキが並ぶ。
ミズキもミッシェも下を向いているためその表情は見えない。
初めて見る王様は、上に立つものとしての威厳を感じる。ミッシェに似た面立ちの壮年男性だった。
「皆のもの。良く集まってくれた。今日は聖女召喚の成功と聖女を皆に知らしめるため開いた」
王様の声は良く通り、背筋を伸ばさなければいけないという威圧感を感じる。そんなに大きな声を出していないというのに、不思議だ。
周りも固唾をのむように、次の言葉を待っている。
「近年、我が国でも魔物が増え凶暴化している報告が相次いでいる。その為、三百年以来の聖女召喚に踏み切ることになった。コノート魔法師団長には尽力してもらい、見事成功を収めた」
フィスラの名前が出ると、フィスラに対しての拍手が起こった。
フィスラは一礼で返す。
何の動揺もないその姿に、ここに居るだけで動揺している自分との違いを感じた。
当たり前なんだろうけど、貴族で偉い人なんだな。
「聖女ミズキよ。こちらへ」
王様に促され、ミズキは王様の隣に並んだ。白の繊細なレースがふんだんに使われた、肌の露出の少ないドレスを着たミズキは聖女の名に相応しかった。
顔をあげたミズキの美しさに、周りが息をのむのがわかった。
「聖女ミズキは、素晴らしい力を我々に見せてくれるだろう」
「未熟ながら、この世界に光をもたらせるよう努力したいと思います」
隣で眩しそうな顔をして、ミッシェがミズキの事を見つめている。
「聖女ミズキには、王家に代々受け継がれている聖なる書を授与する。ミッシェ」
ミッシェに声をかけると、ミッシェは家臣から受け取った聖なる書を持ち、ミズキの前に立った。ミズキは跪いて当然のようにそれを受け取った。
何度か練習したのだろう。無駄のない動きだ。
ミズキはその書を皆に見えるように掲げた。
古そうな表紙の何の変哲もない本に見えるが、代々伝わるという事は、かなりの年代物なのだろう。
周りからは、割れんばかりの拍手が起きている。
「……やられた」
恍惚としたような雰囲気の中、ひとりフィスラが悔しそうにつぶやいた。
顔は笑みのままだが、私の手に添えた手に力が入っている。
良くわからないけれど、私はフィスラの手を撫でた。
「こちらの書には、魔導師団長しか解けない封印がされている。聖女と魔導師団長の魔力によって、かつての聖女の言葉が蘇るのだ。コノート師団長こちらへ」
ミッシェの言葉にフィスラは頷いて壇上へ上がった。
和やかにすすんでいるが、フィスラに掴まれた腕が痛く気がかりだった。
ミズキがそっとフィスラに聖女の書を差し出すと、フィスラは手で魔法陣を描き何かを呟いた。
魔法陣は空中でキラキラと輝いて、とても綺麗だ。そこにミズキが手を添える。
キラキラした光に、白いふわふわとした魔力が加わった。
光は回りながらそのまま本に吸い込まれていき、消えた。
「読めるか? 聖女ミズキよ」
ミッシェが問うと、ミズキは表紙をそっとめくった。
優雅な手つきだけど、目は真剣に文字を追っているように見える。
しばらく見入っていたが、一息ついてミッシェと王様に頷く。
「読めましたわ。これで間違いなく皆様のお役にたてると思います」
ミズキの一言で、まわりが更に盛り上がった。
「さあ、この後はパーティーを楽しんで行ってくれたまえ」
フィスラも壇上を下りて戻ってくる。
先程のつぶやきはどういう意味だったのか聞きたかったけれど、にこりと笑いかけるフィスラがここで話すなと告げていた。
「甘いものでも食べよう。ツムギ」
「はい。是非頂きましょう」
良くわからないけど、お誘いは大歓迎だ。疲れた時は甘いもの。
間違いない。
「コノート師団長」
手を取り合って移動しようとしたところ、呼び止められる。
振り返るとミッシェとミズキがにこにこと立っていた。
「先ほどはありがとうございました殿下。聖女ミズキ」
フィスラが礼をするのを見て、慌てて私も礼をした。
「コノート師団長のおかげで、聖女としての活躍を後押しされました。私、頑張りますね」
84
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
破滅フラグから逃げたくて引きこもり聖女になったのに「たぶんこれも破滅ルートですよね?」
氷雨そら
恋愛
「どうしてよりによって、18歳で破滅する悪役令嬢に生まれてしまったのかしら」
こうなったら引きこもってフラグ回避に全力を尽くす!
そう決意したリアナは、聖女候補という肩書きを使って世界樹の塔に引きこもっていた。そしていつしか、聖女と呼ばれるように……。
うまくいっていると思っていたのに、呪いに倒れた聖騎士様を見過ごすことができなくて肩代わりしたのは「18歳までしか生きられない呪い」
これまさか、悪役令嬢の隠し破滅フラグ?!
18歳の破滅ルートに足を踏み入れてしまった悪役令嬢が聖騎士と攻略対象のはずの兄に溺愛されるところから物語は動き出す。
小説家になろうにも掲載しています。
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~
咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】
あらすじ
「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」
聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。
彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。
しかし、エリーナはめげなかった。
実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ!
北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。
すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。
「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」
とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。
以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。
最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?
【完結】異世界から来た聖女ではありません!
五色ひわ
恋愛
ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。
どうすれば良いのかしら?
ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。
このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。
・本編141話
・おまけの短編 ①9話②1話③5話
【完結】甘やかな聖獣たちは、聖女様がとろけるようにキスをする
楠結衣
恋愛
女子大生の花恋は、いつものように大学に向かう途中、季節外れの鯉のぼりと共に異世界に聖女として召喚される。
ところが花恋を召喚した王様や黒ローブの集団に偽聖女と言われて知らない森に放り出されてしまう。
涙がこぼれてしまうと鯉のぼりがなぜか執事の格好をした三人組みの聖獣に変わり、元の世界に戻るために、一日三回のキスが必要だと言いだして……。
女子大生の花恋と甘やかな聖獣たちが、いちゃいちゃほのぼの逆ハーレムをしながら元の世界に戻るためにちょこっと冒険するおはなし。
◇表紙イラスト/知さま
◇鯉のぼりについては諸説あります。
◇小説家になろうさまでも連載しています。
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる