俺と彼女とタイムスリップと

淳平

文字の大きさ
54 / 54

32話「文化祭一週間前」後編

しおりを挟む
「話があるんだ」
「ん? どうした真柴」
「ここじゃなんだから……少し歩かない?」
「おう、別に構わないけど」

 そう言うと真柴と俺は外へと歩き出した。
 何気なく空を見上げるとまん丸い月が暗い空に明るく輝いていた。
 真柴の家から歩いて10分ほど経ったがお互い一言も喋っていない。
 なんとなく空を見ながら歩いていたら口を開くこともないとお互い感じているのだろう。
 しばらく歩くと聞き覚えのあるメロディが耳に入ってきた。
 隣を見ると真柴は俺の視線に気付いたようで少し俯き、微笑み今度は歌い出した。
 それにつられて俺も自然と口ずさむ。

「最初の頃と比べたらだいぶ上手くなったよね淳一君」
「そりゃあ毎日のように歌ってるからな。 嫌でも進歩するだろ」
「そりゃそうだけどさ。 やっぱり私淳一君の歌好きだな」
「お、おう。 それはありがと」
「照れちゃってって可愛いなあ淳一君は」
「バーカ、そんなんじゃねえよ。 ただ、もしそう感じるのならそれはお前らのおかげだよ」
「ふふふ、それは言えてるかもね。 淳一君一人じゃ頼りないし」
「ああ、情けないけど事実だな」
「今日の淳一君はやけに素直だね」
「俺はいつだって素直な良い子だぞ」
「ふーん、あの子の前でも?」
「うっせ」

 真柴がニヤリと笑う。

「私も人のこと言えないけど」
「そうか? 真柴は天真爛漫っていうか素直だと思うけどな」
「ふーん、淳一君の中での私はそう映るんだね」
「違うのか?」
「うーん、さあどうでしょう」
「何だよそれ」
「さあ私もわかんないよ。 自分が何なのかさ。 あ、なんかこれ歌詞でも書けそうじゃない?」
「バーカ、そう簡単に歌詞が書けてたまるかよ」
「あ、経験者は語るってやつだね」
「ああ、あと少しで完成すると思う」
「おー、それは楽しみだなあ」
「おう、期待しててくれ」
「いつになく自信満々だね」
「自信はないけど、ある」
「ハハハ、その言い回し淳一君らしいね」
「そうだろそうだろ。 これが俺だ」
「……本当に好きなんだね。 唯ちゃんのこと」
「……何言い出すんだよお前」
「好きなんだよね唯ちゃんのこと」

 そう繰り返す真柴の顔はいつものおちゃらけた要素が見つからない。

「ああ、好きだよ」
「そっか」

 真柴はそう言うと手を後ろに組んで再び空を見上げた。

「ねえ、淳一君」
「ん?」
「私は君が好きだよ」
「……お前なあ。 からかうなよ」
「からかってなんかないよ。 私は君が、淳一君が好き。 以上も以下もなくただそれだけ」
「へ?」
「はい、この話終わり!」
「ちょ、どういうことだよ」
「くどいぞ淳一君。 そんなんじゃモテないぞ~」
「うるせえ!」

 俺がそう言うと真柴はケラケラと笑う。
 やっぱり真柴は笑顔が似合う。

「話ってのはいいのか?」
「うん、もう満足」

 俺の問いに対して真柴はどこか清々しい表情で答えた。

「そっか」
「よーし、あそこのコンビニまで競争だ! よーい、ドン!」
「は、ちょっと待てって」

 そう言って真柴はケラケラと笑いながらコンビニへと走っていった。
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

喪女。
2017.10.13 喪女。

久々の更新待ってました!
この後が楽しみです。気長に待ってます(((^-^)))

解除
toms
2017.06.22 toms

15話の 孫にも衣装 は 馬子にも衣装 です。
では、続きを楽しませていただきます。

解除

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ニュクスの眠りに野花を添えて

獅子座文庫
恋愛
過去のトラウマで人前で声が出せなくなった伯爵令嬢ラニエラ・アンシルヴィアは辺境の男爵、オルテガ・ルファンフォーレとの政略結婚が決まってしまった。 「ーーあなたの幸せが此処にない事を、俺は知っています」 初めて会った美しい教会で、自身の為に一番美しく着飾った妻になる女の、真っ白なヴェールを捲る男は言う。 「それでもあなたには此処にいてもらうしかない」 誓いの口づけを拒んだその口で、そんな残酷なことを囁くオルテガ。 そしてラニエラの憂鬱な結婚生活が始まったーーーー。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。