42 / 54
28話「ダブルデート」後編
しおりを挟む
「それってどういう……」
ああ、ドラマとかでこういうシーンはよく見たことがある。
主人公が女の子に迫られるシーン。 あれ? あの時の主人公はなんで迫られたんだっけ?
その後二人はどうなったっけ?
俺と真柴の間に沈黙が続く。
真柴は俺を見つめたまま中々視線をずらしてくれない。
「…………なんてね」
真柴は俯きそんなことを口にする。
「え?」
「あはは、冗談だよ~。 また淳一くん騙された~」
そう言っていつもの笑顔に戻り、俺の顏の前から立ち去った。
「……またお前はそういうことを……」
「ごめんごめん、小説でこんなシーン書きたくなってね~。 でも淳一くんいい反応だったよ~」
「う、うるせえ!」
そうか。 やっぱり真柴は俺をからかっていただけなのだ。
余計なドキドキ……俺の胸の高鳴りを返せ!
……まあそうだよな俺と真柴だからな。
ありえないんだよ、うん。
それにしても、真柴は演技が上手い。
小説家より女優の方が向いてるんじゃないか?
スタイルも良いし、かなり美人だし。
……胸だってでかいし……
かなりの好物件だろう。
きっとかなりモテるに違いない。
「おっ! そろそろてっぺんだよ!」
真柴の言葉通り外を見るとかなり高いところまで登っていることがわかった。
「おう、そうみたいだな……って!?」
俺が言いかけた瞬間、いきなり真柴が俺に抱きついてきた。
小柄、ではないけれど俺よりも小さい真柴の体は十分に包み込むことができる。
……え、何だこの状況は?
めちゃくちゃいい匂い……柔らかいものも当たって……って! そうじゃなくて!
……また俺をからかってるんだろうな。
からかってるとわかってても今、こうしてドキドキしている自分が情けない。
「お、おい真柴。 からかうのもいい加減に……」
そう言いかけた時、真柴の体が小刻みに震えているのに気づいた。
「おい、どうしたんだ? 大丈夫か?」
「……ごめん淳一くん……私……実は観覧車が苦手で……ジェットコースターは大丈夫なんだけど……観覧車は怖くて……」
「そうだったのか。 言ってくれればよかったのに」
そんな言葉しかかけられない自分が情けない。
こんな時どうしたらいいのだろうか。
「…………から」
「ん? 何だって?」
「ううん……何でもない。 ねえ淳一くん、降りるまでこうしてていいかな」
「お、おう」
まいったな。
心臓がドクドクと高鳴っている。
この心臓の音は俺のものだろう。
……いつもは元気で明るくて、こう言ったら失礼かもしれないが、男並みにたくましい真柴にも苦手なものがあって。
……不謹慎だけど弱々しい真柴を見て、少しだけ抱きしめたいと思った。
気付いたら真柴の背中に手を伸ばし、抱きしめた。
確かに感じる彼女の感触、匂い。
顔が熱くなる。 真柴の体も少し熱い気がする。
同時に俺は唯のことを思い出していた。
*
「お疲れ様でしたー」
係員が観覧車の扉を開け、俺たちは観覧車から外へと出た。
「いやあー、ごめんね淳一くん。 昔から観覧車って苦手でさあ~」
「お、おう。 別に俺はいいけど」
真柴はいつもの調子に戻っていた。
まるでさっきのことはなかったように。
まあ、ただ観覧車が怖くて俺に抱きついただけ……なんだよな。
「お前らお疲れ! 悪いけどこれから先は別行動な!」
石田はそう言うと富田さんとどこかへ行ってしまった。
二人で手を繋いでいた。
「ねえ淳一くん、あれってもしかして……」
「ああ。 どうやら成功したらしいな」
「おーっ! めでたい! こりゃあめでたい! ……けど、私たちもう用ないね……」
「本当だな……」
「帰ろっか」
「おう、一応石田にはメールしとく」
*
「いやあ石田くん凄いね~。 初デートで告白しちゃうなんて」
「だな。 俺も今日はデートするだけだと思ってたし」
帰りの電車中、俺と真柴は隣り合ってそんな話をしている。
懐かしい、11年後にはない遊園地。
もう少し思い出に浸るのかと思っていたが、真柴との一件や石田の一件でそれどころじゃなかった。
それにしても石田は凄いやつだ。
俺にできないことを簡単にやってのける。
俺が唯と出会ってからずっと言えていないことを簡単に……
いつまでたっても素直になれない俺とは大違いだ。
「ねー、淳一くん。 聞いてるのー?」
思わずボーッとしていたらしい。
真柴の言葉で我に返る。
「あ、ああ。 石田は凄いよな」
「うん、私もあれだけ素直になれたらなー」
「真柴は十分に素直じゃないか?」
いつもの真柴なら素直なはずだ。
明るくて元気で素直で。
「うーん、肝心なことは素直になりきれなくて言えないんだー」
「肝心なことって?」
俺が尋ねると真柴は人差し指を口元に当て、
「それはひみつっ」
と口にした。
どうやら真柴には秘密が多いらしい。
ああ、ドラマとかでこういうシーンはよく見たことがある。
主人公が女の子に迫られるシーン。 あれ? あの時の主人公はなんで迫られたんだっけ?
その後二人はどうなったっけ?
俺と真柴の間に沈黙が続く。
真柴は俺を見つめたまま中々視線をずらしてくれない。
「…………なんてね」
真柴は俯きそんなことを口にする。
「え?」
「あはは、冗談だよ~。 また淳一くん騙された~」
そう言っていつもの笑顔に戻り、俺の顏の前から立ち去った。
「……またお前はそういうことを……」
「ごめんごめん、小説でこんなシーン書きたくなってね~。 でも淳一くんいい反応だったよ~」
「う、うるせえ!」
そうか。 やっぱり真柴は俺をからかっていただけなのだ。
余計なドキドキ……俺の胸の高鳴りを返せ!
……まあそうだよな俺と真柴だからな。
ありえないんだよ、うん。
それにしても、真柴は演技が上手い。
小説家より女優の方が向いてるんじゃないか?
スタイルも良いし、かなり美人だし。
……胸だってでかいし……
かなりの好物件だろう。
きっとかなりモテるに違いない。
「おっ! そろそろてっぺんだよ!」
真柴の言葉通り外を見るとかなり高いところまで登っていることがわかった。
「おう、そうみたいだな……って!?」
俺が言いかけた瞬間、いきなり真柴が俺に抱きついてきた。
小柄、ではないけれど俺よりも小さい真柴の体は十分に包み込むことができる。
……え、何だこの状況は?
めちゃくちゃいい匂い……柔らかいものも当たって……って! そうじゃなくて!
……また俺をからかってるんだろうな。
からかってるとわかってても今、こうしてドキドキしている自分が情けない。
「お、おい真柴。 からかうのもいい加減に……」
そう言いかけた時、真柴の体が小刻みに震えているのに気づいた。
「おい、どうしたんだ? 大丈夫か?」
「……ごめん淳一くん……私……実は観覧車が苦手で……ジェットコースターは大丈夫なんだけど……観覧車は怖くて……」
「そうだったのか。 言ってくれればよかったのに」
そんな言葉しかかけられない自分が情けない。
こんな時どうしたらいいのだろうか。
「…………から」
「ん? 何だって?」
「ううん……何でもない。 ねえ淳一くん、降りるまでこうしてていいかな」
「お、おう」
まいったな。
心臓がドクドクと高鳴っている。
この心臓の音は俺のものだろう。
……いつもは元気で明るくて、こう言ったら失礼かもしれないが、男並みにたくましい真柴にも苦手なものがあって。
……不謹慎だけど弱々しい真柴を見て、少しだけ抱きしめたいと思った。
気付いたら真柴の背中に手を伸ばし、抱きしめた。
確かに感じる彼女の感触、匂い。
顔が熱くなる。 真柴の体も少し熱い気がする。
同時に俺は唯のことを思い出していた。
*
「お疲れ様でしたー」
係員が観覧車の扉を開け、俺たちは観覧車から外へと出た。
「いやあー、ごめんね淳一くん。 昔から観覧車って苦手でさあ~」
「お、おう。 別に俺はいいけど」
真柴はいつもの調子に戻っていた。
まるでさっきのことはなかったように。
まあ、ただ観覧車が怖くて俺に抱きついただけ……なんだよな。
「お前らお疲れ! 悪いけどこれから先は別行動な!」
石田はそう言うと富田さんとどこかへ行ってしまった。
二人で手を繋いでいた。
「ねえ淳一くん、あれってもしかして……」
「ああ。 どうやら成功したらしいな」
「おーっ! めでたい! こりゃあめでたい! ……けど、私たちもう用ないね……」
「本当だな……」
「帰ろっか」
「おう、一応石田にはメールしとく」
*
「いやあ石田くん凄いね~。 初デートで告白しちゃうなんて」
「だな。 俺も今日はデートするだけだと思ってたし」
帰りの電車中、俺と真柴は隣り合ってそんな話をしている。
懐かしい、11年後にはない遊園地。
もう少し思い出に浸るのかと思っていたが、真柴との一件や石田の一件でそれどころじゃなかった。
それにしても石田は凄いやつだ。
俺にできないことを簡単にやってのける。
俺が唯と出会ってからずっと言えていないことを簡単に……
いつまでたっても素直になれない俺とは大違いだ。
「ねー、淳一くん。 聞いてるのー?」
思わずボーッとしていたらしい。
真柴の言葉で我に返る。
「あ、ああ。 石田は凄いよな」
「うん、私もあれだけ素直になれたらなー」
「真柴は十分に素直じゃないか?」
いつもの真柴なら素直なはずだ。
明るくて元気で素直で。
「うーん、肝心なことは素直になりきれなくて言えないんだー」
「肝心なことって?」
俺が尋ねると真柴は人差し指を口元に当て、
「それはひみつっ」
と口にした。
どうやら真柴には秘密が多いらしい。
0
あなたにおすすめの小説
貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら
普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。
そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ニュクスの眠りに野花を添えて
獅子座文庫
恋愛
過去のトラウマで人前で声が出せなくなった伯爵令嬢ラニエラ・アンシルヴィアは辺境の男爵、オルテガ・ルファンフォーレとの政略結婚が決まってしまった。
「ーーあなたの幸せが此処にない事を、俺は知っています」
初めて会った美しい教会で、自身の為に一番美しく着飾った妻になる女の、真っ白なヴェールを捲る男は言う。
「それでもあなたには此処にいてもらうしかない」
誓いの口づけを拒んだその口で、そんな残酷なことを囁くオルテガ。
そしてラニエラの憂鬱な結婚生活が始まったーーーー。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる