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六本の糸~研究ドーム編~
61.男女
しおりを挟む月周辺を飛んでいた軍艦が次々と『天』に方向を変え始めた。
それを見てドールに乗っている一人の男は息をついた。
安心したようで、口元には笑みが浮かんでいた。
『・・・・・すごい人気だな。』
冷やかすような、非難するような声が、男に向けられた。
「・・・・お前が来たか・・・・」
男は予想していたことなのか気にしていない様子だった。
『そうだ。ディアには悪いことをしたが、俺にはお前が死に急いでいる限り、目を離せない。』
「そうだろうな。お前はお利口さんの優等生だ。だが、肝心な時に役に立たない力のある無能だ。ニシハラ大尉。」
男は挑発するように笑った。
『お前は牙と本音を隠すことを美学と考え、死にたがっている頭の痛いガキだろ?』
ハクトは相変わらずクロスを責めるような言い方をしていた。
「はは。お互い図星だな。」
『死に急ぐな。』
「役目は果たす。平和になった世界に私は不要だ。」
『役目を果たす前から先のことを考えるな。』
純白のドールとハデスドールは並んで飛んでいた。
「お前こそ、私の心配より自分のことを考えたらどうだ?」
『俺はディアを悲しませることはしない。今はお前の話をしている。』
「きちんとあおった奴らは引っ張っていくさ。」
『焚きつけているだけだろ。早く死ぬために。』
「・・・・いちいち突っかかるな。お前は自分のいるべきところを理解しろ。」
『は・・・・?』
「ニシハラ大尉。お前はフィーネの艦長だ。地球に降下したフィーネを回収し、ゼウスプログラム該当者にプログラムを開かせるという仕事を与えよう。」
クロスは命令を下すように言った。その声色には拒否を赦さない、拒否することを想定しないものがあった。
『・・・・はは。ロッド中佐どの。俺に地球に降りろと?』
「宇宙、月の周りは私が見よう。『天』では合流するが、その先はこれがベストだ。」
クロスの自信満々といえる口調にハクトは笑い
『俺は地球に降りない。』
強く宣言するように言った。
「・・・・は?」
予想していない答えだったのかクロスは間の抜けた声を出した。
『お前は自分の力を過信しすぎている。そして、俺らを信頼していない。』
「過信・・・・実際私はお前らの中・・・・いや、人間の中でほぼ一番強い。」
『メンタルはポンコツだ。独りよがりで他人を信頼することが怖いだけだろ?』
「・・・・・」
クロスは黙った。
『お前が思っている以上にレイラ、ディア、ユイは頼れる。レイラとユイは一度対峙したからわかる。なにより・・・・・コウがいる。』
「・・・・コウ・・・か。私たちの中で一番弱い・・・戦士だ。」
『頼っているくせに何言っているんだ。』
「・・・・」
『死に急ぐな。俺はお前が死に急げないように見張る。』
「・・・・先のことは考えるな。そう言ったのはお前だ。」
『お前には・・・・義務がある。この先の、全てが終わったら後始末に一生を捧げるという』
「捧げるさ。大きな犠牲に対する償いは命だと決まっている。」
『この固定観念ガチガチ野郎!!』
「生贄が必要だ。その役割にふさわしいのは私だ。」
『ロッド中佐としてだろ!!クロス!!お前は・・・・お前としては!!』
「だーかーらー・・・・僕はそんな先を望めないと言っているだろ!!君との話はいつも平行線だ!!」
『それはこっちのセリフだ!!』
「ただ言い争いをしに来たのか!?ドールに乗ってきたということは役割を理解してきたということだろ。ニシハラ大尉。」
『わかっている。中佐。だが、クロス。俺は今クロスと話に来ている。』
「雑談か?余裕だな。」
『余裕がないからだろ。俺らは先に心配なんかしないで行きたいんだ。それをお前は・・・・』
「他人のことを考えている余裕があるのか?」
『余裕じゃない!!ずっとお前のことを考えて来たんだ!!今更考えるなというのか!?』
「・・・・・キモ」
ハデスドールは少し純白のドールとの距離を取った。
『は・・・・はあ!?ここまでお前が焚きつけておいて急に何言ってんだ?』
『・・・・素直じゃないんだ。クロスは。』
二つのドールの間に一体のドールが入ってきた。
「・・・・どうしてお前まで・・・・」
クロスは参ったようにため息をついた。
『お前らの言い争いは収まったことがないだろ。俺が来ないと。』
ハクトとクロスの喧嘩の仲裁に入った声は誇らしげに言った。
「・・・・・コウ。」
『・・・・・お前どうして来た?コウ。』
「ハクトの言う通り・・・・レイラもユイもディアも頼れる。強い人たちだ。そして・・・・クロスの言う通り。俺はお前らの中だと一番弱い。」
『・・・・そこ聞いてたのか。』
クロスはやらかしたと小さく呟いた。
『はは・・・・一番弱いといっても、プログラムの適性は高いな。』
ハクトは気付いていなかったクロスの様子を感じ取って笑った。
「途中から早口で聞き取れなかったよ。生贄とかずっとお前を見てきたとか」
『やめろ』
ハクトは感情のない声でコウヤの発言を止めた。
『・・・はははは。敵わないなあ・・・・』
クロスは諦めたように笑った。
「一番強い奴が何言ってんだ。なあ。ハクト。」
コウヤはハクトに同意を求めた。
『全くだ、俺も敵わないな。』
ハクトはコウヤを無視しクロスに同意していた。
三体のドールが空を並んで飛ぶ。
「なあ。ハクト・・・クロス・・・・二人は・・・・地球に降りないのか?」
『そこも聞いていたか。』
『私は降りない。ニシハラ大尉は降りるべきだ。』
クロスは念を押すようにハクトに言った。
「ハクト・・・クロス。二人を信じている。」
コウヤは両脇にいる親友に言った。
『コウ・・・?』
「だから・・・・俺を信じて欲しい。そりゃ俺はハクトやクロスみたく訓練を受けたわけでもないし、シンタロウみたいにすべてを割り切っているわけではない。キースさんみたく冷静に物事を見れるわけではない・・・・けど、ゼウスプログラムは俺にしか開けない。だから、開いてみせる。」
コウヤは懇願するように宣言するように言った。
『お前は自分の価値を下げすぎだ。』
ハクトは呆れたように言った。
『そうだ。コウがいなければ、ハクトもユイも取り戻せなかった。』
クロスも呆れながらも元気づけるように言った。
「俺は・・・・もう弱いせいで失敗したくない。あの時、ロッド中佐を止めれたら事態は変わっていたのかもしれない。俺が偽りの過去に振り回されなければ・・・・」
『それ以上は聞きたくない。義務を語るのなら後悔を連ねるな。』
クロスは突き放すように言った。
『コウ。俺はお前を信じている。それはクロスもだ。』
「ハクト。」
『宇宙は俺らに任せろ。お前はゼウスプログラムを開いて戻って来い。』
『俺ら・・・・・か。ハクトは意地でも宇宙に残るつもりか・・・仕方ない。』
クロスはハクトの押しに負けたのか諦めたようだ。
「わかれる前に『天』でゆっくり話そう。」
『久しぶりだな・・・・コウ発案の集まり・・・・』
『作戦前に名残を作ることはしないが・・・・コウの招集は断れたことないからな・・・』
コウヤの提案にクロスとハクトは笑った。
宇宙を飛ぶ三体のドールの下を電車が走る。
「あれ、ハクト達だな。」
電車の窓からキースがドールを指差した。
「本当だ。仲良くお話しているのかな。」
ユイは笑顔で言った。
「私を押しのけて行ったのだから、仲良くしてもらわないと困る。」
ディアは恨めし気ながらも少し笑いながら言った。
「でも、ああいうのって、純粋に羨ましいわ。」
レイラが三体のドールをなぞるように指さしながら言った。
「えー私はヤダ。だって、クロス面倒くさい性格じゃん。」
ユイは首を振った。
「!?」
レイラとディアとユイは急に目を窓の外に向けた。
三人とも同じ方向を見た。
「どうしました!?」
カワカミ博士は3人の異常な表情に驚いた。
「・・・・ゼウス共和国側から・・・何かくる・・・・」
レイラはそう言うと窓の外を指差した。
「・・・・でも、ゼウス共和国には何も残って・・・・」
イジーは思い出すように言った。
「・・・いえ、ドールプログラムに必要な施設は星の裏側に集まっているわ。」
ラッシュ博士はそう言うと両手を広げてまいったようなポーズを取った。
「キャメロン・・・・なぜそう余裕でいられる・・・・」
カワカミ博士はラッシュ博士を睨んだ。
「私にはどうしようもないわ。」
ラッシュ博士はそう言うとリード氏を見た。
「・・・・電波は中継所が無いと地球までは届かない。」
タナ・リードはそう断言した。
「・・・・だが、『天』までは届く・・・・」
シンタロウはタナ・リードを横目で見て言った。
「・・・・施設内に溢れていた洗脳電波よ。」
ユイが断言した。
「・・・・・ユイ、レイラ・・・・・コウ達のところに行かないか?」
ディアは何か思いついたように言った。
「!?」
二人は顔を見合わせたがすぐに理解したように頷いた。
「待って!?行くってどこにだ?」
タナ・リードは不安そうな表情をしていた。
「准将・・・・私たちは、ドールプログラム内に接続なしで入れます。また、それと同じ要領で・・・・・自身の意識を他のドールに飛ばせるはずです。」
レイラはリード氏を真っすぐ見て言った。
「まるで、超能力者だ・・・・」
シンタロウは感嘆の声を上げた。
「さっきのドールの呼び出しだってそれに近い。・・・・やるか?」
「・・・・・行ってどうします?」
カワカミ博士は確かめるように訊いた。
「お父さん。・・・来る洗脳電波は、ドールプログラムが関連しているものなの。だから、私たちなら止められる。」
「・・・・・」
「カワカミ博士・・・・私たちにはわかるんです。」
「そして・・・・私たちにはそれの軌道を変えることができる。少なくとも、『天』から遠ざけることはできる。」
ユイ、レイラ、ディアは確信をもって言っていた。
「・・・・ハクト、コウ、クロスの乗っているドールに洗脳電波をすべて受信させる。」
「それがいいわ。あの三人なら対抗できる。」
「私たちの体お願いね。お父さん。」
ディア、レイラ、ユイはそう言うと座り込みそのまま倒れた。
「なあ、ラッシュ博士。」
キースは倒れた3人を見てラッシュ博士に声をかけた。
「なあに?ハンプス少佐。」
「・・・・こいつみたいに機械を埋め込んだ奴は3人みたいな芸当ができるのか?」
キースはジューロクを指差して訊いた。
「できないことはないわ。ただ、負担がかかるわよ。実際それをアリアちゃんの体でやって機械と彼女の体に負担がかかって休息が必要になっているでしょ?それに、意識をプログラムに飛ばしている状態でどうやって体を維持しているのかは不明なのよ。」
ラッシュ博士は講義するように言った。
「・・・・そうか。」
キースは何か考え込んでいた。
「!?」
コウヤは急な寒気に襲われた。
『!?』
『なんだ!?』
ハクトとクロスも同じような感覚のようだ。
「何だ・・・・これは・・・・」
『ムラサメ博士か・・・・ゼウス共和国に行ったのは想像ついたが・・・・』
クロスはそう言うと『天』向かっている戦艦より火星側に飛んだ。
『コウ・・・・俺らも行こう。』
ハクトもクロスに続き飛んで行った。
「待ってハクト」
コウヤも胸騒ぎを感じながらハクトに続いた。
『やっぱり、三人気付いたね。』
通信に、いや、プログラム接続されている感覚から急に声が聞こえた。
「・・・・ユイ!?」
コウヤは声の主を呼んだ。
『・・・・洗脳電波が発せられている。このままだと『天』の人間は操られる。』
『ディア!?お前どうして・・・・』
ハクトの驚く声が響いた。
『私もいるわよ。』
『レイラ・・・・まさか・・・・接続なしの要領か・・・』
クロスは感心しているようだが、声に不安が現れていた。
『話している暇はない。三人のドールには洗脳電波を受信してもらう。そう私たちが仕向ける。』
ディアは淡々と説明した。
『ゼウス共和国の内部を知っている私が先導して、向こうのシステムを確認して止めるわ。』
レイラが得意げに言った。
『研究施設の内部は私の方が詳しいから、私も先導する。』
ユイが負けじと言った。
「止めるって・・・・」
コウヤは突飛な作戦に戸惑った。
『困っている暇はない。俺らは要は盾だ。』
『その通り。・・・・・もし無理なら迷わず帰って来い。意識だけが向こうに囚われたらどうなるかわからない。』
クロスは作戦を無理強いしないようだった。
『大丈夫。止めるだけよ。』
レイラはクロスを安心させるように言った。
「・・・・じゃあ、『天』で会おう。」
コウヤは押し付けるように言った。
そのコウヤの声を合図にユイ、レイラ、ディアの気配は消えた。
「・・・・必ず・・・」
コウヤの呟きに
『感傷的になっている暇はない。』
『集中力を切らすな。』
ハクトとクロスが叱咤するように言った。
「・・・・わかっている。」
コウヤはそう言うと自分の頬を叩いた。
『・・・・来るぞ。』
クロスが声をかけた。
コウヤは目に前に光が迫ってくるのを見た。
その光は、かつてコウヤがユイを守ったときに見た、砲撃に似ていた。
『ひるむな。』
クロスの声か、ハクトの声かわからなかった。
光はコウヤを包んだ。
いや、包んだように思えた。
「コウヤ・・・・・」
後ろから優しい声が聞こえた。
「・・・・母さん・・・・・」
コウヤは懐かしい声の主を呼んだ。
コウヤの体を、背中を支える何かを感じた。
「本格的に地球に降りる。大気圏を突破するまでは窓をカバーで閉める。モニターとレーダーだけで動く。目を離すな。あと、少し揺れる。」
レスリーが操作盤の前で指示を出す。
「・・・・レスリーさん・・・・火星の方から何か来ます!!」
モーガンが叫んだ。
「え!?レーダーには何もないよ!!」
リリーはモニターを確認しながら言った。
「違う・・・・研究施設にあったものに似ている・・・・」
モーガンは頭を抱えて言った。
「・・・・モーガン。お前・・・・感覚が適合者に近くなっているんだな。」
レスリーはそう言うとマックスを見た。
「マックス。ゼウス共和国の電波はどこまで届く?」
「え・・・と、中継なしだと・・・・・」
マックスが言いかけた
「・・・・止められた・・・・」
モーガンははっとしたような表情をしていた。
「・・・・あの、モーガン君の言っていることがよくわからないのですが・・・」
テイリーが心配そうに質問した。
「総裁。部外者はあまり突っ込まない方がいいですよ。」
とカカはモニターを見ながら言った。
「そうですよ。何もできないのですから、今は地球に降りることを考えましょう。」
とリオは座り込んだ。
「優秀な連れだな。」
レスリーはそう言うと皮肉そうに笑ってテイリーを見た。
「・・・・・嫌な奴ですね。」
テイリーは口を尖らせた。
「・・・・・モーガン。止めったって・・・・どういうことだ?」
マックスはモーガンを見つめていた。
「・・・・わからない。けど、嫌なのが、止まったんだ。いや、吸い込まれた。」
モーガンはそう言うと、閉め切られて見えない窓の外を見た。
「・・・・もし、発せられた電波だとしたら・・・・何かが全て受信した可能性がある・・・そんな芸当できるのは・・・・」
マックスはそう言うと指を6本立てた。
「・・・・大尉たちね。」
リリーは目を輝かせた。
「総裁・・・・」
テイリーは呟いた。
「総裁はあなたですよ。」
「元総裁ですね。」
訂正するようにカカとリオは言った。
「クロス・・・・」
レスリーはそう言うと頼もしそうに外を見た。
「・・・・・」
マックスは何か言いたげな顔をしていた。
『ゼウス共和国の内部を分かっても、あまり関係なかった。』
『そう言うなレイラ。だが、便利だな。この力は・・・・』
『レイラ、ディア・・・・・何かいる・・・・・』
『・・・・誰・・・・?』
『・・・・・君は・・・・』
ディアは目の前に現れた人物に驚いた。
『・・・・・嫌だよ・・・・もう、私・・・・自分がわからない。』
その人物は泣いていた。
『憎くて憎くて仕方ないのに・・・・むなしくて仕方ない・・・・私・・・・どうして・・・』
『・・・・・』
レイラはその人物を見て言葉を失った。
『・・・・わかるの。私ってすごくバカだった。でも、二人しかいなかった。だから憎しみに囚われていいじゃない・・・・たとえ、間違ったことでも。』
彼女はそう言うとディアに縋りついた。
『ディアさん・・・・私・・・・二人の元に逝くって言ったけど・・・・逝けない。憎くて憎くて・・・・私、私じゃなくなった。』
『・・・・・・アリアちゃん・・・・』
ディアはその少女の名前を呼んだ。
『嫌だ・・・・嫌だ・・・・私、さっきからコウヤとシンタロウとの思い出があやふやなの。ずっと楽しかったことを考えていたのに・・・・違う・・・・嫌だ。』
レイラとユイはその様子を黙って見ていた。
『アリアちゃん・・・落ち着いて聞いて欲しい。』
『・・・・ディアさん・・・・・私、死んだの?』
『死んでいない・・・・君は生きている。』
『私の体・・・・自分で動かせないの。頭の声はどうにかなったのに・・・・もう、自分が自分じゃなくなったら、復讐も存在しなくなる。』
『・・・・コウヤを殺した罰かな・・・・・私のせいでコウヤ死んじゃった。シンタロウは私が止めていたら軍に行かなかったかな・・・?ずっとフィーネにいてくれたかな?』
『アリアちゃん。二人は生きて・・・』
『・・・・ディアさん。聞きたくない。・・・・それ聞いたら私、自分のやったこと認めれなくなる。私、復讐のために汚れたし、研究って殺し合いもするんだ。』
アリアは諦めたように言った。
『二人に会って!!』
レイラがアリアに言った。
『あんたが憎かった・・・・あんたも・・・』
アリアはユイとレイラを見た。
『でも・・・・・私はもう憎めない・・・たとえ、二人が本当に死んでいても、自分を見失った私は、もう復讐が無い・・・・思い出を裏切った。』
『アリアちゃん。助ける。君を助ける。だから、まだ諦めないで。』
ディアは元気づけるように言った。
『・・・・私、あなた嫌い。』
ユイはアリアに言った。
『ユイ!!』
ディアはユイに怒るように言った。
『でも、あなた助ける。そして、生身で話したい。』
ユイは言った。
『・・・・私も、あなたに話したいことがある。そして・・・お前は私を責めていい人間だ。責められるべき人間が生きて、責める人間が死ぬのは道理が違う。』
レイラもディアに賛同した。
『・・・・・私も・・・・。ごめんね。正直嫌いよ。』
アリアは笑った。
そして
『・・・・あんたらに助けられたら恩を作るってことよね。』
『そんなこと・・・・』
レイラが言いかけた時
『そんなのごめんよ。』
アリアは発言を切り捨てるように言った。
『だから、先にあなた方に私が恩を売るわ。』
アリアはそう言うと3人を見て不敵に笑った。
『・・・・私の体は私のもの。そして・・・・憑りついている奴に盛大に抵抗してあげる。』
アリアはそう言うと両手を広げた。
『助けに来るまで抵抗してあげる。』
その言葉を聞いた直後
『アリアちゃ・・・』
アリアが強く光り、ディア、ユイ、レイラは飛ばされる感覚に陥った。
『ゆっくりしていてもいいのよ。その分借りを作っていることなんだから。』
『・・・・電波が止まった。』
ハクトが息切れしながら言った。
『・・・・なかなかつらかったが・・・レイラ達がやってたのか・・・・』
クロスも息切れしていた。
「・・・・わからない・・・ハクト、クロス・・・・俺『天』に着いたらカワカミ博士含めて言わないといけないことがある・・・・」
コウヤは気付かれないように涙を拭っていた。
『・・・・どうした?コウ』
何かに気付いたクロスが不思議そうな声を出した。
「いや・・・電波が止まったみたいだから、早く戻ろう。」
コウヤは急いで会話を切り上げた。
『そうだな・・・・あたりの戦艦もだいたい『天』に入ったことだろう。』
3体のドールは『天』に向かって飛んだ。
「はっ・・・・」
「っ・・・・・」
「待てっ・・・」
ユイ、レイラ、ディアはほぼ同時に起き上がった。
「!!」
3人の勢いに様子を見ていたカワカミ博士が驚き、しりもちをついた。
「だ・・・大丈夫か?」
シンタロウは起き上がった3人の様子の異様さに気付いた。
「・・・・電波は止まった・・・・けど」
ユイはそう言うと言葉を止めた。
「・・・・私たちの力で止めたわけではない・・・・むろん、ハクト達に電波を受信してもらったから『天』は大丈夫だ・・・・」
ディアはそう言うとシンタロウを見た。
「・・・・シンタロウ。私たちは・・・・お前の友人に会った。」
レイラはシンタロウを見て言った。
「・・・・アリアか」
シンタロウの顔から表情が無くなった。
「構えるな。シンタロウ。・・・・電波の発生を止めたのが、アリアちゃんなんだ。」
ディアはシンタロウを宥めるように言った。
「止めた・・・・?」
ラッシュ博士とカワカミ博士が同時に眉を顰めた。どういう形であれ、二人とも同じ研究をしていた研究者だ。
「そう・・・・彼女、正気に戻っていたの。現実を見れるほどに・・・・」
レイラはシンタロウを見つめていた。
「・・・・何か言っていましたか?」
「・・・・自分が止めていたらお前は軍に行かなかったかもしれないとか・・・自分がコウを殺したとか・・・」
シンタロウはレイラの言葉に苦笑いをした。
「・・・アリアに止められて止まるような状況じゃなかった・・・・変な後悔するなよな・・・」
イジーはシンタロウを何も言わず見ていた。
「・・・・そうよね。プログラム上ではムラサメ博士の方が上でも、介しているのがアリアちゃんの体だと・・・・アリアちゃんの意識が影響するわね。」
「彼女はどのくらい持ちそうですか?ムラサメ博士をずっとせき止めて居られるわけではないでしょう・・・・」
カワカミ博士は心配そうに訊いた。
「・・・・わからない。」
「・・・・でも、意地でも止め続けると思う。」
「・・・私もそう思う。」
ディア、レイラ、ユイは最後の彼女の言葉と力強さを思い出していた。
応援ありがとうございます!
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